原油価格上昇の背景にあるもの
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年1月30日 11時25分
OPECのロゴと石油ポンプの模型=2020年4月(ロイター=共同)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月28日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。東京商品取引所の中東産原油の先物指標価格が1キロリットル当たり6万240円をつけた状況について解説した。
原油先物価格が上昇
東京商品取引所の中東産原油の先物指標価格が1月27日の夜間取引で一時、およそ7年2ヵ月ぶりに1キロリットル当たり6万円を超え、6万240円をつけた。ニューヨーク原油先物も上昇傾向が続いていることから、国内でも政府によるレギュラーガソリンや灯油価格の高騰抑制策は当面、必要となるかも知れない。
飯田)足元の米国産標準油種(WTI)、アメリカの取引原油は1バレル=87ドル台前半だということです。
エネルギー価格は平時にはマーケットで、有事には政治的に決まる ~生産制限をする産油国
宮家)原油の世界はかなり奥深くて、私はもちろんマーケットの専門家ではありませんが、いつも私が講演などで言っているのは、「エネルギー価格は平時にはマーケットで、有事には政治的に決まる」ということです。
飯田)平時はマーケット、有事は政治的に決まる。
宮家)いまは平時だから、マーケットで決まるわけです。マーケットで決まるとなると、需給で決まりますよね。まず供給についてですが、石油の先物価格が乱高下したと報じられましたが、実は毎日変わっているわけです。つい最近も、少し値段が下がったと大騒ぎしたのだけれど。供給に関しては、去年(2021年)までは過剰で値段は安かったのです。だから産油国は苦労して、生産制限しつつ値段を支えたかったのです。
飯田)「協調減産」などと言われていました。
宮家)ところがコロナ禍の状況が少し変わって、「これは行ける」となり、価格が上がって行きます。「やっと上がって来たか」という感じです。しかし、上がったからといって産油国は直ぐに増産などしません。去年一時価格はマイナスになったのですから、値段を上げなければいけない。
飯田)そうでしたよね。
宮家)せいぜい50~100ドルの間で止まってもらいたいので、黙って生産を増やさずにいる。そうなれば供給は少なくなり、当然、値段は上がります。
需要はコロナ次第
宮家)もう1つは需要の方ですが、需要はコロナ次第ではないでしょうか。以前に一バーレル当たり100ドルを超えたときは、インドや中国などの新興国が買ったという要因がありましたが、いまの状況はまるで違います。
飯田)コロナ禍で。
宮家)今後はコロナ次第、そして産油国の生産意欲、増産意欲などが絡まって来ます。いまのところ、湾岸地域で戦争があるなど、政治的に物事が流されるような動きがあるわけではないので、もう少しマーケットの様子を見るのが基本だろうと思います。
アメリカがロシアのドル決済を封じれば、ロシアのガスは止まる
飯田)問題になっているウクライナ情勢ですが、原油への影響は……。
宮家)原油よりもガスです。
飯田)天然ガスの。
宮家)侵攻でもしようものなら、アメリカはロシアのエネルギーを決済できないように、ドルを使わせなくするかも知れません。そうなったら、ガス取引は止まります。
飯田)取引が止まる。
宮家)この寒い時期にヨーロッパでロシアのガスが来なくなると、値段は必ず暴騰します。ですから、ロシアへの対応については、欧州やNATO諸国の間でも意見が分かれるだろうと思います。
シェールガスの増産に踏み切れないバイデン政権
飯田)バイデン政権はシェールガスの増産はしないのでしょうか?
宮家)本来なら、値段が上がって来ればシェールガスが出て来て、安定するはずなのです。しかし、バイデン政権は環境や温暖化への懸念があって、増産していないでしょう。トランプ政権のときはやりすぎたのだけれど、どっちもどっちだという気がします。
飯田)しばらくこの地合いが続くのかどうか、というところですね。
宮家)上がったり下がったりだと思います。
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