うまく風を味方にする小林陵侑選手 踏切の「5センチ」で飛距離の差が出るスキージャンプ
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年2月6日 22時44分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(1月14日放送)に国際スポーツジャーナリストの岩瀬よしふみが出演。北京五輪で注目する選手について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。1月10日(月)~1月14日(金)のゲストは国際スポーツジャーナリストの岩瀬よしふみ。5日目は、北京五輪で注目する選手について—
黒木)いよいよ北京冬季オリンピックです。日本ではどの選手に期待していらっしゃいますか?
岩瀬)ワールドカップで勝っていて調子の上がっている小林陵侑選手。女子ではもちろん高梨沙羅選手です。高梨選手は小柄ですが、弾丸のように飛び出して行きます。向かい風のいい風が来ると乗って、距離を「グッ」と伸ばします。写真を撮っていても、惚れ惚れしてしまいます。
黒木)追い風ではなくて?
岩瀬)追い風ですと、落とされてしまうのです。向かい風ですと風に乗って、そのまま飛ぶことができます。凧と同じイメージです。
黒木)なるほど、向かい風だと遮断されるというイメージがあるのですけれども、風に乗れるわけですね。
岩瀬)手や、スーツで風を受け入れるのです。ですからスーツに風を入れたがるのですけれども、いまは入らないように、ルールで規制されています。あとは板で受ける。
黒木)板で風を受けて行く。
岩瀬)いまはV字に広げていますが、頭から手まで、そこの面で風を受けて行くのです。
黒木)この板と体の面ですね?
岩瀬)そうです。そこで対流を生み、「グッ」と伸びて行きます。
黒木)強さの秘密、競技への向かい方について、高梨選手は「弾丸のように飛んで行く」ということですが、小林選手は?
岩瀬)小林選手は柔らかく体を使います。体が硬いと斜めから風が来ると流されてしまうのですが、柔らかいので、手や体を少し動かしながら風を自分の味方にしてしまいます。ですから「スッ」と3段階くらい伸びます。着地しそうになっても、そこからさらに10メートルくらい伸びます。
黒木)皆さん個性があるとおっしゃっていましたけれども、飛び方も違いますし、風を味方にするやり方も違うのですね。
岩瀬)重要になるのが踏み切りです。踏み出す瞬間、若干蹴ったりするのですけれども、そこが合うか合わないか。ほんの5センチくらいですが、そこで技術の違いが出ます。
黒木)踏み出すときですよね。
岩瀬)船木選手は蹴らないで、そのまま出て行きます。低く行くのですけれども、原田選手の場合は「ボン」と蹴るのです。蹴って、滞空時間が長い。
黒木)滞空時間が。
岩瀬)写真のレンズを構えるときも、「次は原田さんだな」と思うと、レンズを上げないといけないのです。そうしないとはみ出てしまうのです。いまはスーツの改良がありましたから、大体、同じようなところで出て来ます。
黒木)そういうところにも注目すると、スキージャンプをもっと楽しめると思いすけれども、新型コロナの影響で去年(2021年)も海外の取材は大変だったのではないでしょうか?
岩瀬)2020年までは、2年に1回ある世界選手権に12回連続で行っていたのですけれども、去年の2月にドイツで行われた世界選手権には行けませんでした。
黒木)そうですか。
岩瀬)ドイツのオーベルストドルフというところで行われたのですが、とてもいいジャンプ台とクロスカントリーの会場があります。海を渡って行くことが規制されましたので、取材できた日本の取材陣はイギリス在住の方など5~6人でした。多いときは20~30くらいいるのですが。
黒木)5~6人ですか。
岩瀬)ドイツの人たちは厳格に運営しますので、観客についても無観客でした。選手たちは気の毒でしたね。
岩瀬よしふみ(いわせ・よしふみ)/国際スポーツジャーナリスト
■1959年生まれ。立正大学文学部地理学科卒業。
■スキー月刊誌・編集長を経て、スポーツジャーナリストとして活躍。
■1998年・長野五輪ではフィランドチームの公式プレスコーディネーター、2007年・札幌世界選手権でフォトコーディネーターを務めた。
■冬季五輪や世界選手権で何度も海外取材。スキーにおけるスポーツジャーナリストとして活躍する日本の第一人者。
■また夏場には大学野球と高校野球、ラグビーやアメリカンフットボールなどの取材活動も行っている。
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