子どもが眼帯を3日間しただけで一生見えなくなることもある「形態覚遮断弱視」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年2月11日 11時20分
東京都医師会理事で「ささき眼科」院長の佐々木聡氏が2月4日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。ロービジョンと弱視について解説した。
「ロービジョン」とは
飯田浩司アナウンサー)「ロービジョン」と「弱視」について伺います。この2つは同じだろうと思っていたのですが、違うものなのですね。
佐々木)ロービジョンの定義ですが、日本眼科医会や日本ロービジョン学会では、「視覚に障害があるため生活に何らかの支障をきたしている人」とされています。
飯田)原因としては、どういうものが考えられますか?
佐々木)視覚障害の原因は、「緑内障」や「網膜色素変性症」、「糖尿病網膜症」などの病気もありますし、交通事故や怪我などの外傷によるものもあります。
飯田)人によって、程度にかなり差があるのですか?
佐々木)視力だけではなく、「中心視野障害」という真ん中が見えなくなる障害があります。真ん中が見えないと文字が読めないので、仕事に支障をきたします。周辺はある程度見えているので、ものにぶつからず歩くことはできます。でも、「社会生活ができるか」と言われれば難しい。視覚障害の種類はたくさんありますし、程度もいろいろあります。それによって困ることはたくさんあると思います。
「弱視」
飯田)一方で、「弱視」について伺います。「ロービジョン」と「弱視」というと、英語と日本語で違うけれども、言葉のニュアンスが似ている印象なので、「同じものなのかな」と思う人も多いかも知れませんが、違うのですね。
佐々木)「弱視」は、一般的には「視力が出にくい、視力が弱い状態」と言われていると思います。ただ、医学的な「弱視」の定義としては、「視力の発達が障害されて起きた低視力」とされています。人間の目は、生まれたときの視力は0.1ぐらいしかないのです。赤ちゃんは、お父さんやお母さんの顔をはっきりとは見えていないのです。ぼやっとしか見えていない。
飯田)そうなのですね。
佐々木)いろいろなものを見て、刺激を受けることによって、徐々に視力が発達して行きます。3~4歳のときに大人と同じくらいの視力になると言われています。そのような視力の発達が、いろいろな原因で阻害されることにより低視力となってしまうのが、医学的に言う「弱視」です。
眼帯を3日間しただけでなることもある「形態覚遮断弱視」
飯田)視力の発達が阻害されるというのは、どういう原因があるのですか? いま子育てをしている人は、どのようなことに注意すればいいのでしょうか?
佐々木)強い近視や強い遠視がある場合、ぼやけて見えますので、刺激が少なくなるために発症してしまいます。これは「屈折異常弱視」ですね。左右の視力が大きく違うと「不同視弱視」となります。
飯田)不同視弱視。
佐々木)あとは「斜視」、「内斜視」や「外斜視」になることがあります。斜視の方の目は見えていないので、片方の目しか発達が起きない「斜視弱視」になります。注意していただきたいのが、「形態覚遮断弱視」という、目を塞ぐことによって目に刺激が行かずに起きる弱視があります。眼帯を3日間ぐらいしただけで、一生見えなくなることもあるのです。お子さんの片目を塞ぐというのは、非常に危ないことです。
乳幼児期に「きちんと見えているか」を確認すること
飯田)「遠くを見せればよい」というような対処法はあるのですか?
佐々木)刺激を与えることによって、弱視の状態にならないように、視力の発達を促すことができます。視覚の発達に関わる乳幼児期に、きちんと見つけて対応することで、治療が可能な病気です。
飯田)具体的に、どのようなことに気を付けたらいいですか?
佐々木)「見えていないのかな」と気付いてあげることが大事です。
「おかしいな」と思ったら、とりあえず専門医に連れて行く
飯田)定期的に検診を受けて、何かあったら、お医者さんに相談することが大事ですか?
佐々木)「まだ小さくて検査できないから、もう少し様子を見ましょう」という親御さんもいらっしゃるのですが、早ければ早いほど対応も取れます。「とりあえず様子を見る」のではなく、「とりあえず専門医に行ってみる」ということを心がけていただきたいと思います。
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