髙木姉妹、小林兄弟……北京五輪“きょうだいアスリート”たちの想い
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年2月16日 17時20分
【北京五輪スピードスケート日本代表選手選考競技会 女子1500m】 姉妹で1位、2位となり抱き合う高木美帆と高木菜那=31日、長野市のエムウェーブ
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、北京五輪で活躍する“きょうだいアスリート”にまつわるエピソードを紹介する。
前回・平昌五輪に続き、北京五輪でも「姉妹メダリスト」となった髙木菜那(29)・美帆(27)姉妹。妹・美帆は1500mと500mで2つの銀メダルを獲得。さらに団体追い抜きでも、姉・菜那とともに銀メダルに輝きました。
姉妹でのメダル獲得は、平昌に続き2大会連続。またこの時点で美帆は、五輪でのメダル獲得数が通算6個となり、日本の女子選手では夏冬通じ単独トップとなりました。
快挙達成となった2月15日の団体追い抜き決勝は、本来なら平昌に続いて「2大会連続・姉妹金メダル」の舞台となるはずでした。しかし、オリンピックには魔物が……。一糸乱れぬ隊列を組んだ日本が、カナダをリードして迎えた最終コーナー、ゴールまであと少しのところで菜那が転倒。惜しくも日本は銀メダルとなったのです。
誰もが「ああ……」と思ったあのシーン。レース終了後、美帆は号泣する姉のもとへ何も言わず歩み寄りました。
『かける言葉が見つからなくて、そばに行くことしかできなかった。起きてしまったことはどうすることもできないもどかしさ。それをこれから、背負う必要はないと思っても、多分本人はそうはいかないのも、長く過ごしていると感じる。複雑な気持ちで、寄ることしかできなかった』
~『デイリースポーツonline』2022年2月16日配信記事 より
涙にくれる姉に、そっと寄り添った妹。印象的だったのは試合後、まだ心の整理がつかない姉・菜那に代わり、妹の美帆が気丈に報道陣へ対応していたことです。
髙木姉妹は、チームメイトでもありますが、同時に「ライバル」でもあります。2010年のバンクーバー五輪には、当時中学生だった妹の美帆が出場。姉の菜那は出場できず、先を越された形になりました。逆に、続く2014年のソチ五輪は菜那が出場し、美帆は落選。片方だけが五輪に出場したときは正直、複雑な思いがあったと2人はのちに語っています。
『高木菜はかつて、妹への嫉妬心を原動力にしていた。高校2年の冬。妹・美帆のバンクーバー五輪用の公式グッズが自宅に届いた時は悔しくて「燃やそうと思った」と言う。姉妹で出掛けた街中で「美帆ちゃんのお姉ちゃん?」と話しかけられ、いらついて「菜那です」と答えたことは一度や二度ではない。だが、10年バンクーバー五輪で低迷する妹を見て、競うべき相手は世界だと気付いた』
~『スポニチアネックス』2022年2月16日配信記事 より
初めて姉妹揃って出場したのが、前回・2018年の平昌五輪でした。チームパシュートでは姉妹で金メダルを獲得。個人戦も合わせ、菜那は金2個、美帆は金銀銅3個のメダルを手にしました。ともに同じ舞台で戦ったことで、2人にとっては改めて「姉妹の絆」を感じる大会になりました。
そんな過去があるだけに、金メダルの重み、かかるプレッシャーはお互いによくわかっています。チームパシュート連覇こそなりませんでしたが、それでも銀メダル。2大会連続、姉妹で決勝に進出したのは誇るべきことです。
「北京が最後の五輪になるかも」という菜那は、19日にマススタートに出場。美帆は17日、1000mに挑みます。姉妹揃って有終の美を期待したいところです。
北京五輪では他にも、兄弟・姉妹で奮闘するアスリートの存在が目立ちます。スノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得した平野歩夢(23)は、4歳年下の弟・海祝(19)とともに出場。兄の快挙はもちろんのこと、弟・海祝も誰よりも高い7mのエアを披露して会場を沸かせ、世界9位につけました。
同じく、スノーボード女子ハーフパイプでは、姉・冨田せな(22)と妹・るき(20)が揃って出場。ともに「いちばんのライバル」と互いに刺激し合う2人は、姉のせなが銅メダル。妹・るきも5位入賞と、姉妹で結果を残しました。
また、スキージャンプ・ノーマルヒルで金メダル、ラージヒルで銀メダルを獲得した小林陵侑(25)は、5歳上の兄・潤志郎(30)とともに出場。快進撃を見せたアイスホッケー女子・スマイルジャパンには、床亜矢可(27)・秦留可(24)、志賀葵(22)・紅音(20)、山下光(21)・栞(19)と姉妹ペアが3組もいます。
その他、ショートトラックの菊池悠希(31)・純礼(26)姉妹。ノルディック複合の渡部暁斗(33)・善斗(30)兄弟。カーリング女子「ロコ・ソラーレ」の吉田知那美(30)・夕梨花(28)姉妹……挙げればキリがないほどです。
「きょうだいの絆」を感じた場面で象徴的だったのは、スキージャンプ・ノーマルヒルで、小林陵侑が長野大会以来24年ぶりに日本ジャンプ界へ金メダルをもたらしたシーンです。着地を決めた瞬間、雄叫びをあげ、金メダルを確信した小林陵侑。彼のもとへ誰よりも早く駆け寄ったのは、兄・潤志郎でした。雪の上で熱い抱擁を交わした2人。
『一緒に悔しい思いも、うれしい思いもしてきたので、すごくうれしかったですね』
~『中日スポーツ』2022年2月6日配信記事 より(小林陵侑の言葉)
兄からの祝福について、喜びを語った弟・陵侑。一方、潤志郎は弟の快挙についてこう語りました。
『やってくれると信じていた。スキー界やジャンプ界に新しい歴史をつくってくれた』
~『時事通信』2022年2月6日配信記事 より(小林潤志郎の言葉)
“きょうだい”とは、ともに高め合うライバル関係であり、互いに支え合う存在である……そのことを象徴するような、小林兄弟のコメントでした。
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