自国領土で自国民に向かって空爆する国軍 ~いまミャンマーで起こっていること
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年3月22日 17時30分
13日、ミャンマー・ヤンゴンで、衝突の犠牲者を悼む人々(ゲッティ=共同)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月22日放送)にジャーナリストの有本香が出演。バイデン政権がミャンマー軍のジェノサイドを認定したというニュースについて解説した。
バイデン政権がミャンマー軍のジェノサイドを認定
アメリカのブリンケン国務長官は3月21日、首都ワシントンのホロコースト記念博物館で演説を行い、ミャンマー国軍によるイスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害について、バイデン政権が「ジェノサイド(集団虐殺)」に認定したと発表した。
飯田)認定を通じてミャンマー国軍に対する国際社会の圧力を強め、さらなる迫害の防止を目指すとのことです。新型コロナやウクライナ情勢などがあり、ミャンマー情勢が報じられなくなっていますね。
国軍による自国民への軍事的弾圧が行われているミャンマー ~国軍とその関係者以外の全員が対象
有本)このニュース自体は、ミャンマー軍がロヒンギャと呼ばれる人々を迫害しているということです。ブリンケン国務長官はユダヤ系の方で、このような民族浄化的な動きに対して非常に厳しい。俗に言われるロヒンギャ問題には、いろいろな見方があるので、これについては横に置くのですが、2021年2月に起きたクーデター後、ミャンマーがすごい状態になっているのです。
飯田)クーデター後。
有本)いま起きているのは、ミャンマー国軍による自国民に対する軍事的弾圧です。理由ははっきりしていません。反体制派の人たちが対象なのですが、ミャンマーの人たちに言わせると、「国軍とその関係者以外の全員が対象だ」と言うのです。多くの人が逮捕されるだけでなく、少数民族の地域は空爆もされています。
飯田)空爆まで。
ミャンマーからの難民がタイの国境に押し寄せる ~ミャンマーの国民が国軍に追われ
有本)そして、ものすごい数の難民がタイの国境に押し寄せているわけです。この一部を日本のグループが支援しています。以前からミャンマー和平のために活動されて来た井本勝幸さんが現地にいらっしゃるのですが、これから雨の多い季節に向かうので、難民の人たちのいる地域が雨対策も含めて大変なことになっているそうです。
飯田)雨対策も含めて。
有本)日本の支援地域としてミャンマーでも知られていた、カレン州のレイケイコーという場所があります。日本がかなりお金や人材を投じて農業支援やインフラ支援をして来た地域ですが、その地域が空爆されています。こういうことが日本にはほとんど伝わっていませんよね。
飯田)そうですよね。
有本)ロヒンギャと言われる人たちというより、いまやミャンマー国民が国軍によって国を追われるという状況になっていて、かなりの数の難民がタイの方に逃げています。
少数民族の武装地域に人々が逃げ込む
飯田)そもそもミャンマーは多民族国家と言われていて、少数民族がたくさんいらっしゃる。
有本)そうですね。
飯田)特にタイとの国境地帯だと、山岳に住む少数民族の方がたくさんいるのですが、そういう人たちも含めて無差別に攻撃されているのですか?
有本)そうです。かつては少数民族と、以前の国軍との間で内戦状態にありました。ここで井本さんがご活躍され、停戦、和平の方向に向かっていたのですが、いまや完全に逆戻りですね。ただ、こういう言い方もあります。少数民族の武装地域が完全な武装解除をしていなかったので、今回そこに人々が逃げ込むことができた。その地域の人ではない人も逃げ込んで、武装勢力側が抗戦することができているのです。
自国領土で自国民に向かって空爆する国軍 ~日本は積極的に関与するべき
有本)一方で国軍側は圧倒的な力を持っていますから、空爆に打って出ています。自国領土で自国民に向かって空爆するというのは、異常事態です。ウクライナとは別の意味で、21世紀に見るべきではなかった光景だと思います。これはアジアで出て来ている問題なので、日本はもっと積極的に関与すべきだと思います。
飯田)なるほど。
有本)今回、岸田総理がカンボジアに行かれました。これはカンボジアが2022年のASEAN議長国だからということもあります。ウクライナ情勢一色になってしまった感もありますが、ミャンマー情勢についてもどうするのか。日本が支援して来た地域が空爆され、破壊されているわけですから、日本は口を出す権利があるのです。
ミャンマーの平和な暮らしや経済活動を再開させるのは日本の国益にもなる
飯田)経済的なつながりや国軍系企業とのつながりが取り沙汰されているところもありましたが、草の根の努力をたくさんして来たわけですよね。
有本)確かに企業進出はかなりしていました。スーチー氏側が政権を獲り、完全に民主化されたと考えられる時期から。
飯田)そうですね。
有本)ただ、出て行くにあたっては、国軍系の人たちが力を持っているので、そこと組んで合弁などの形で進出していた。国民の反国軍の感情が強すぎて、もうビジネスが立ち行かなくなっている状態なのです。そういう意味でも、日本は口を出す権利もあるし、今後、どういう形でこれを落ち着かせるのか。平和な暮らしや経済活動を取り戻して行くことは日本の国益でもあるので、もっと積極的に関与しつつ、メディアも国民に対して伝えて欲しいです。
飯田)世論の後押しが大事になって来ますね。
有本)ミャンマーは資源もあり、将来のある国です。このままだと、また中国の影響力だけが強い国になる危険性もあります。
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