「日本では、障害を持っているドライバーはレースに参加できなかった」プロレーサー・青木拓磨が海外レースに参加した経緯
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年3月23日 20時53分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」にプロレーサーの青木拓磨が出演。「ル・マン24時間レース」に参加するまでの経緯について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。2月7日(月)~2月11日(金)のゲストはプロレーサーの青木拓磨。3日目は、「ル・マン24時間」参加のきかけについて—
黒木)青木拓磨さんはバイクレースの事故で車椅子生活になったあと、車のレースに転向されて、2021年8月、世界最高峰の「ル・マン24時間レース」に参戦して完走されました。なぜこの「ル・マン24時間」への挑戦ができるようになったのかというお話を伺いたいのですけれども。
青木)怪我をしたときに、日本で4輪のレースをしようとしたのですが、車の運転免許証と同じで、レースをするにもライセンスが必要なのですね。
黒木)レースに参加するためにライセンスですね。
青木)当時、日本では、障害を持っているドライバーに、そのライセンスを発給するのが難しかったのです。なかなか動かなかったのです。しかし、実は私より先に「ル・マン24時間」に車椅子の方で出ている方がいらっしゃったのですよ。
黒木)青木さんより先に。
青木)クレイ・レガツォーニさんというスイス人の方です。その方は元F1ドライバーなのですが、その方が「ル・マン24時間」出られているという情報を知っていたので、「彼が持っているのに、なぜ日本ではライセンスが下りないのだろう」と疑問を持っていました。
黒田)その方が持っていらっしゃるのに。
青木)そこで、「日本でレースができないのだったら海外でレースしよう」と思ったのです。そして、2007年に「アジアクロスカントリーラリー」、パリの「ダカール・ラリー」などの単独でやるタイム競技への参戦を決めました。
黒木)ル・マンにお出になったのも、フランスのフレデリック・ソーセさんからの1通のメールがきっかけでしたよね。
青木)そうですね。彼自身も四肢欠損で手足がない方なのですけれども、手足がないのに車を改造して、ケガから6年後の2016年に「ル・マン24時間」に参加して、完走をしています。そして彼のプロジェクトの第2弾として、今度は全員障害者のチームをつくって「ル・マン24時間」に挑戦するという計画があり、そこに参加しないかというメールが来たのです。
黒木)全員が障害者という。
青木)そのようなプロジェクトのなかにアジアから選ばれまして、私とベルギー人の車椅子のドライバーと、あとフランス人の手首がないドライバーがいたのですが、その3人で「ル・マン24時間」を目指そうということになりました。
黒木)なるほど。
青木)「『ル・マン24時間に』出たい」と思っていたのですが、やはり自分のなかで「思っている」よりも、「行動をする」ことが大切だったと思います。「ル・マン24時間」に出るためには、どんなルートを辿って、どういう作戦が必要なのかというところを練りながら、あとは人に言い続けるということが重要だと思います。
黒木)ソーセさんは青木さんがル・マンに出たいということを知って、メールを送られたのでしょうね。そのソーセさんも素晴らしい方で、モータースポーツなら、健常者と障害があるレーサーが同じ土俵で勝負ができると考えて、その突破口を開きたいと思われたのですよね。
青木)特にフランスは「自由・平等・友愛」の3つを大切にしています。その「平等」というところがフランス人の考え方というか、イマジネーションとして根強いのです。障害を持っている、持っていないに関わらず、みんなが平等に生活できるようにしましょう、という。
黒木)平等ということ。
青木)むしろ言わなければ埋もれてしまうのがフランスでもあるのかなと思います。彼の場合は、障害を負ったあと、たまたまその同じ町に住んでいたレースをやっている人のところの門を叩いて、「レースをしたいんだけど」と言うところから始まったストーリーだったのです。
黒木)そういうしっかりした目標を持っていて、奇跡ではないですね。もう必然ですね。
青木)必然だったのかも知れないですね。核融合したというような形でしたね。
青木拓磨(あおき・たくま)/ プロレーサー
■1974年生まれ。群馬県出身
■8歳の時に初めてポケバイに乗り、1990年にロードレースデビュー。群馬の「青木3兄弟」として全国的に知られていた存在。青木さんは次男。
■1995年・1996年、全日本選手権スーパーバイククラスチャンピオン2連覇を獲得。1996年は世界選手権スーパーバイククラスでも優勝。
■1997年には世界最高峰のロードレース世界選手権500ccに参戦、世界ランキング5位を獲得するも、翌年の1998年、開幕前のテスト中に転倒。このちきに脊髄を損傷し、下半身不随の後遺症を負い、以来 車イスでの生活に。
■その後、HRCチームの助監督に就任し、鈴鹿8時間耐久を3連覇させ、レンタルバイクによる耐久レース「Let’s レン耐!」を主宰するなどバイク業界に貢献。
■2007年にレースに復帰。四輪レースに転向。「ダカール・ラリー」などさまざまな四輪レースに健常者と同じ舞台の上で参戦。去年8月には 世界的なレース「ル・マン24時間」にも参戦した。
■またハンドシフトのバイクでサーキットを走行するなど2輪での活躍も注目される。
■今年4月には熊本県にライダー養成所を開設する予定。
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