平和な日本に「不都合な真実」を突き付けた「ウクライナ危機」と「北朝鮮からのミサイル」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年4月13日 11時35分
ロシア政府系テレビのニュース番組で、「戦争反対」のメッセージを掲げる女性スタッフ(ロシア)
地政学・戦略学者の奥山真司が4月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮の金正恩総書記が朝鮮労働党のトップに就任して10年経ったということを受け、日本の今後の安全保障について解説した。
北朝鮮の金正恩総書記、党トップに就任して10年
北朝鮮の金正恩総書記が、朝鮮労働党のトップに就任してから4月11日で10年となった。4月10日、首都平壌では「中央報告大会」が開かれ、「核戦力を完成させた」と金総書記の業績を讃えた。
飯田)4月15日は「金日成主席の生誕110年」ということで、核実験などを行うのではないかと言われております。
奥山)金正恩氏は30代前半にトップに就任して、10年経ったことになります。30代の若者が、北朝鮮のような国を独裁で10年間持たせた。「国家の指導者としての力量は意外にあったのだ」ということを、我々は冷静に見なければならないと思います。
戦後の平和な日本に不都合な真実を突き付けたウクライナ危機
奥山)それとともに、ミサイル開発に邁進し、核戦力の開発も行ってきました。その北朝鮮に関連するのが、今回のロシアによるウクライナ侵攻です。
飯田)ウクライナ侵攻に関連する。
奥山)戦後の平和だったはずの日本にとって、「不都合な真実を突き付けている」ということを感じるのです。
ロシアによるウクライナ侵攻と北朝鮮からのミサイルに対する「Jアラート」発令 ~戦争は起こり得るのだということを教えられた
奥山)1つ目に、今回のウクライナ情勢や北朝鮮を見ていて、「戦争は起こり得るのだ」ということをリアルに感じさせられた事実を、我々は実感しなくてはいけないと思います。
飯田)戦争は起こり得るということを。
奥山)例えば、2017年8月29日に「Jアラート」が発令されたことを覚えていますか? 実際にミサイルが撃たれて、それに対して日本国内でJアラートが鳴りました。うるさいという意見もありましたが、「本当に起こり得るのだ」ということを我々が教えられたのも事実です。
飯田)そうでしたね。
奥山)そして今回のウクライナ危機。軍事侵攻は起こるということです。ユーラシア大陸の方から脅威が来てしまうということの怖さを味わうことになりました。
「頼りにならない」ことが露呈した戦後平和を訴えていた上の世代
奥山)2つ目は、残念なのですけれども、いままで戦後平和を訴えていた上の世代の人たちが、「頼りにならない」ということがわかってしまった。
飯田)上の世代が。
奥山)元外交官の方など、優秀な方はいらっしゃると思うのですけれども、「停戦合意」ということをずっと言っていました。北朝鮮に対しても「ミサイルを撃たないでくれ」とか、「遺憾の意だ」というようなことを言っても、一向に止まらないではないですか。
飯田)「遺憾の意」と言っても。
奥山)今回のロシアによるウクライナ侵攻に関しても、「日本が外交的に停戦を」と言う方がいましたが、「有効性があるのですか?」と思います。「現実的に有効な政策につながるのか」ということを疑わせるに充分な事案として、北朝鮮とウクライナ情勢が出てきた。
飯田)北朝鮮とウクライナ情勢が。
奥山)むしろ、SNSで自分の意見を発信している「これは若者だろうな」という人たちの方が、「リアルに考えているな」と実感しました。
「戦争には、戦わなくてはいけない戦争がある」ということを突き付けられた
奥山)3つ目に、ショッキングな部分でもありますが、「戦争には、戦わなくてはいけない戦争がある」ということを突き付けられた。何も悪くないウクライナが、プーチン大統領の思い込みで勝手に侵略されてしまうという事態が、目の前で起こってしまった。我々日本側からすると、何もしていない若い子が突然拉致される、その上ミサイルも撃ってくる。そういう状況の場合、「戦わなくてはいけないのではないか」ということです。もちろん戦争はいけないですし、仕掛けてもダメですけれども、ウクライナのように戦わなくてはいけない事態が実はあるのではないか、ということを実感させられたのです。
飯田)今回のウクライナ危機によって。
奥山)戦後、我々が「平和だ」と言ってきたものが覆されるような形で、目の前でゼレンスキー大統領が勇敢に戦い、世界各国から称賛されている事態を、どう捉えるべきか。我々はそれを考えなくてはいけない時期に来たのではないでしょうか。
「防衛体制を考えなおすべき」だということを北朝鮮とウクライナが教えてくれた
飯田)目の前で犠牲が生まれてしまうと、「もう喧嘩はやめて」とか、「戦いを止めてしまえ」という議論が日本では起こりがちですけれども、それだと次もまた同じことが起こってしまうではないかと。ある意味、クリアカットな答えがないなかで、何を模索していくかですが、上の世代の人たちは「アメリカが悪い」とか、「どちらも悪い」というような言葉で乗り切ろうとしてしまうところがありますか?
奥山)今回の場合、完全に悪いのはプーチン大統領です。言いづらいのですけれども、日本に対して「戦争にも、戦わなくてはいけない戦争があるのではないか」という事実が突き付けられているのです。
飯田)その矛盾のようなものですよね。抑止論でもありますが、ある意味、非人道的なことをちらつかせて、相手からの非人道的な攻撃を抑止するという。「こちらだって核兵器を使うぞ、お前たちの人民が死ぬのだぞ」と言うことによって、お互いに使わせないように均衡を保つ。このモラルの矛盾のようなものは併せのまないといけないわけですよね。
奥山)我々は「命をかけて戦う」という姿勢を見せなくてはいけないときがあるということを、メディアの報道などにより、目の前で見てしまっているのです。日本は「それをどう処理するのか」ということに、これから悩むのではないでしょうか。
飯田)その上、核を持っていて、常任理事国で、でも権威主義的でという国が。
奥山)隣にいるということです。
飯田)1ヵ国のみならず、ロシア、北朝鮮、中国の3ヵ国がいる。
奥山)囲まれていますよね。「我々は防衛体制を考えなおすべきだ」ということを、北朝鮮とウクライナが教えてくれたのではないかなと思います。
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