時間を意識しないと良いスピーチはできない
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年5月31日 8時10分
Президент Укра?ни Володимир Зеленський п?д час звернення до укра?нського народу, Ки?в, 21 березня 2022 року. (Фото нестандартного розм?ру, надано пресслужбою Оф?су Президента Укра?ни)
フリーアナウンサーの柿崎元子による、メディアとコミュニケーションを中心とするコラム「メディアリテラシー」。今回は、「時間の概念」について—
時間を意識して話していますか?
「お送りしてきました『飯田浩司のOK! Cozy up!』。お相手は、飯田浩司と新行市佳でした。続いては『垣花正 あなたとハッピー!』です」
お馴染みニッポン放送が平日の朝6時から放送している生放送番組のラストの一言です。これは時間にして7~8秒です。秒刻みで話しながらまとめて次の番組に渡す、こうしたエンディングはラジオならではでしょう。
秒単位で物事が進む状態を、皆さんは意識したことがあるでしょうか? ウルトラマンが怪獣をやっつけるのに使った時間は3分。赤く点滅してからピコピコと音が変わるカラータイマーには、「あと何秒あるのか?」とドキドキさせられました。思えば「秒」を最初に意識したのは、あのころだったかも知れません。
「1分で自己紹介してください」「3分で挨拶してもらえませんか?」と言われたことはあると思います。そこで1分、あるいは3分ピッタリで話を終えることができる人は、どれだけいるでしょうか?
そもそも秒単位で話をしようと思わないのが普通です。何を言おうか考えながら話しているうちに、「何秒時間が過ぎたか?」なんて意識しませんよね。聞いている方も、「1分経ちました。終わりです」と言うこともありません。時間オーバーして責められることもあまりないでしょう。意識しているようで意識していないのが時間なのです。
CMは時間枠を買う概念
テレビの世界では、CMの基本的な単位は15秒です。CMを15秒で1本放送する約束で、その時間をテレビ局から買っています。
「もっと長い気がする」という方も多いでしょう。他にも30秒や1分の場合も確かにありますが、莫大な金額が必要になるため、1分を1単位にはしていません。「小分け」にした方がお金を集めやすいとも言えます。
さらにCMは、いつ放送するか、どの局が放送するかでも金額が大きく変わってきます。その目安は視聴率が関係しています。このように、放送では時間とお金が大きく結びついています。
1日24時間という限られた時間のなかで、いつ、どこで、何秒のCMを放送できるか。その枠にいくらお金をかけることができるか。企業のPR度合いが変わってくるというわけです。
一方、インターネットの世界は少し違います。PRしたければ時間に関係なく、かけたいだけかけることが可能です。時間枠を買う概念はないのです。
薄れる時間に関する感覚
インターネットの利用時間が年々増加しています。昨年(2021年)のスマートフォンの利用率は92.7%となりました(総務省情報通信政策研究所「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」より)。
多くの人が無制限にネットを利用する現代では、時間の感覚はどんどん薄れてきている気がします。先日、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会で演説しました。夕方18時から行われたため、ご覧になった方も多かったことでしょう。
大統領の演説はおよそ10分。このとき、日本では演説の前に細田衆議院議長が挨拶しました。私は驚きました。ここにも「時間」が念頭にない人たちが存在すると。
戦争のさなかに、いつ命が狙われるかわからない状況で、一国の大統領をお待たせするとは……信じられない光景でした。時間の観念がない人たちが、体裁や日本独自の儀式を重んじたのだと悲しくなりました。
果たして、ゼレンスキー大統領の演説は大変すばらしいものでした。印象深かった理由はすでに多くの方が分析されていましたが、1つには相手国の歴史に触れたという点がありました。
歴史に触れて想いを伝える
ゼレンスキー大統領が使った方法は、歴史に触れ、想いを伝えるものでした。各紙報道によりますと、例えばアメリカ連邦議会では真珠湾攻撃、ドイツではベルリンの壁、イスラエルではホロコーストなど、各国の誰もが認識している歴史が演説に盛り込まれました。日本においては唯一の被爆国であることを念頭に、核の脅威について話されました。
—–
『世界中の政治家が議論すべき大きな課題が、ロシアが核兵器を使用した場合、どう対応すべきかです。核兵器が使用されれば、世界のいかなる人の信頼も、いかなる国も、完全に破壊されてしまいます』
~ゼレンスキー・ウクライナ大統領演説文(仮訳) 衆議院ホームページより
—–
歴史とは、まさに時間の積み重ねです。国民の心情や経験が時間の経過ごとにまとまり、記憶に残すべく語り継がれていくのだと私は考えています。
価値ある歴史を限られた時間のなかで濃縮させる。ゼレンスキー大統領の演説は、そのようなものだったと認識しています。それぞれの国の大事な出来事を、秒単位で考えられた言葉に込める。何というテクニックでしょうか。
限られた時間が価値を生む
このような手法は、テレビやラジオの世界と似ています。つまり制限された時間のなかで、テーマに基づいた物語を語っているのです。テレビやラジオのコンテンツは、時間の設定に限りがあるために価値が生まれます。「もう終わり?」「もう少し!」「残念」と思うことが大切なのではないでしょうか。
ドラマもニュースも、時間が生む価値の上に存在しています。9回裏2アウトで野球中継が終了したら、文句はあるでしょうが、その試合の価値がワンランク上がったと思いませんか? 話をするときも同様です。限られた時間のなかで何を話すのか、それを最初に考えてみましょう。
話したいことを口に出してから時間内に収めるのではありません。逆の発想です。時間こそが話す内容に価値を生み出してくれるのです。そのことを、ゼレンスキー大統領の演説が思い出させてくれました。(了)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ゼレンスキー氏「1日に100のミサイルや無人機、飛んでくるのを想像してほしい」「それが何百回」
読売新聞 / 2024年6月3日 8時5分
-
ゼレンスキー氏、アジア安保会議で演説 平和サミット支持訴え
ロイター / 2024年6月3日 7時25分
-
【秘史発掘】日中開戦直後の「宋美齢の対米放送」を日本の情報機関は重大視していた
NEWSポストセブン / 2024年5月31日 7時15分
-
【池上彰さん解説】世界の核兵器はその後・・・ G7サミットで首脳と対面した被爆者の思いは
広島テレビ ニュース / 2024年5月19日 16時36分
-
「覇気のない」演説から見えるプーチンの焦り ウクライナは逆に夏の反攻作戦準備に注力へ
東洋経済オンライン / 2024年5月14日 9時30分
ランキング
-
1ユニクロ店員も愛用している「感謝祭でおトクに買っておくべき夏物ボトムス」3選
女子SPA! / 2024年5月29日 15時46分
-
2ひな人形やかぶとはどうやって処分すればいい? メルカリで売れますか?【メルカリのプロが解説】
オールアバウト / 2024年6月3日 21時5分
-
3軽自動車の「勢力変化」10年データで浮き彫りに じわじわ進んだダウンサイジングの変遷の中身
東洋経済オンライン / 2024年6月4日 11時30分
-
4こんな人には要注意! 付き合うと金運が落ちる人の特徴
オールアバウト / 2024年6月3日 21時20分
-
5「普通のクルマなのに」…なぜ洗車機NG? ミニバンは注意!? 車名名指しでNGも! “洗えないクルマ”の条件ってなに?
くるまのニュース / 2024年6月4日 14時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください