ウクライナの「ナラティブ戦略」に敗北したロシアの「プロバガンダ」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年4月23日 18時0分
青山学院大学客員教授でジャーナリストの峯村健司が4月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシアとウクライナの情報戦について解説した。
ロシアがマリウポリ掌握を宣言
飯田)ウクライナ情勢に関して、4月22日の新聞各紙が1面で「ロシアがマリウポリを掌握」という記事を掲載しています。ウクライナ側は否定していますね。
峯村)これも情報戦だと思います。これだけロシアが「掌握した」ということをプロパガンダを出している背景には、戦況の悪化に対する焦りがあるのだと思います。実際には多分掌握できていない、その裏返しではないでしょうか。
プーチン大統領の発言の裏読みをすれば事実がわかる
飯田)あの製鉄所に関しては、ロシア兵の命を考えると「追撃するな」と、「その代わり封鎖するのだ」という形です。あそこには市民も含めて残っているということですよね。
峯村)製鉄所は地下に何層にもなっている要塞で、「なかなか攻略できない」ことの裏返しです。プーチン大統領のこれまでの戦争は、言っていることと逆のことをやっていますので。最初から「戦争はしない、特別軍事作戦はしない」と言った直後に行動を起こしています。そこは裏読みをした方がいいというのが1つ。
ロシアのプロパガンダとウクライナのナラティブ ~この違いが情報戦での勝敗を分けた
峯村)もう1つは、ロシアのプロパガンダが今回、「一方的に負けているな」ということがよくわかります。
飯田)ロシアのプロパガンダが。
峯村)一方のウクライナは、プロパガンダではなく、相手国や国際社会にどのように共感してもらえる「物語」を意味する「ナラティブ」を重視しています。
飯田)ナラティブ。
峯村)ナラティブとプロパガンダがどう違うかと言うと、プロパガンダは大きな声で「お前たち、話を聞け」と。自分が主体なわけです。ところが、ゼレンスキー大統領をはじめとしたウクライナの高官は、「相手にどう聞こえるか」「どう共感してもらえるか」という点を重視しているのです。
飯田)相手にどう聞こえるか。
峯村)先日の日本での演説もそうです。練りに練って、「相手の国民がどう聞いてくれるのか」というところを考えてつくられています。ウクライナの「ナラティブ」がロシア式の「プロパガンダ」に勝ったというのが今回の戦争の特徴といえます。
細かく演説先の国を徹底的に分析し、国情に合わせた文案を考える
飯田)プーチンさんは自国の国益を主張しましたけれども、ゼレンスキーさんは、さらにその先の「自由と民主主義のために戦っているのだ」と。次元の違う大義を掲げて、世界中も「そうだよね」と同調していった。
峯村)しかも国によって、その国情に合った文案を考える。
飯田)味付けを変えてきていますものね。
峯村)日本で演説する直前に、ウクライナのシンクタンクがつくったゼレンスキー氏向けの内部資料を見たことがあるのです。実に細かく日本のロシアやウクライナ政策をリサーチしています。例えば「日本のA社、B社、C社は未だにロシアと交易を続けている」と。「でもこの会社はやめている」、「この会社は、ウクライナにこれだけの寄付をしてくれている」という徹底的な分析をしているのです。
飯田)なるほど。
峯村)こうした緻密な調査に基づいたうえでの演説なのです。練りに練りつつ、さらに相手にどう聞こえるかというナラティブを考えているのです。日本も学ばなくてはいけないと思います。日本のお隣には、プロパガンダが大好きで声が大きい国がありますから、「彼らのプロパガンダにどのように対抗していくのか」ということを考えていかなければなりません。私も今後は研究していこうと思っている部分です。
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