物事の見方がポジティブになる「心理的ウェルビーイング」 健康社会学者・河合薫
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年4月30日 11時13分
![物事の見方がポジティブになる「心理的ウェルビーイング」 健康社会学者・河合薫](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_358337_0-small.jpg)
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(4月5日放送)に健康社会学者で気象予報士の河合薫が出演。ポジティブに生きることができる「心理的ウェルビーイング」について語った。
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河合薫
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。4月4日(月)~4月8日(金)のゲストは健康社会学者で気象予報士の河合薫。2日目は、心理的ウェルビーイング)について—
黒木)河合さんは2022年3月に『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』という本を出版されました。そのなかで「心理的ウェルビーイング」。また、「SOC(首尾一貫感覚)」という言葉が出てきます。
河合)SOCからまず、お話しさせていただきますと、これは健康社会学の祖でもあるアーロン・アントノフスキーという人が、1960年代にナチスの収容所から生還した人たちの健康度調査を行ったことをきっかけに生まれた理論です。アントノフスキーは当時、その調査をするときに、「その人たちは厳しい状態にいたのだから、生きる力などはなくなっている」と思っていたのです。
黒木)アウシュビッツから生還された方々ですよね。
河合)そうです。社会に適応できずに死を待っているようなメンタルになっているのではないかと思って調査を始めました。すると、実際に7割の人はそのような厳しい状態にあって、なかには死を待っているような人たちもいました。
黒木)7割の方は。
河合)ところが驚いたことに、3割の人たちは生き生きと元気に働いて生きていて、しかも「アウシュビッツでの厳しい経験は自分の人生にとって意味があることだった」と言っているのです。
黒木)そこまでおっしゃったのですね。
河合)そこでアントノフスキーは、「人間には、ストレスを退治して自分で乗り越えていくような不思議な力があるのではないか」と考えるようになって、10年越しにインタビューを繰り返し行って辿り着いたのが「SOC(Sense of coherence)」です。日本語で直訳すると「首尾一貫感覚」という難しい言葉なのですが、私なりの言葉に言い換えると、「最後には世界は私に微笑んでくれると思える確信」だということです。
黒木)最後に世界は微笑んでくれる。
河合)自分のなかで物事の見方を変える必要がある。そのなかには、6つの思考からできている「心理的ウェルビーイング」があります。これは周りとの関わりのなかにもあるのですが、自分自身で自分の人生をどのように生きたいのか、どのように自分自身が生きる人生を意味付けていくのかというような考え方です。
黒木)心理的ウェルビーイングには、6つのカテゴリーがあるということですが。
河合)1つ目は「自己受容」です。これは少しダメな自分を愛おしいと思えるかどうかです。
黒木)ありのままの自分を受け入れるということですね。
河合)そうですね。2つ目の「人格的成長」は、自分の可能性を何歳になっても信じることができるかどうか。3つ目の「自立性」というのは、最後は自分で行動や考え方を決断することができるかどうか。
黒木)自分で行動や考え方を決断する。
河合)4つ目が「人生の目的」で、どのような人生を送りたいかがはっきりとしているということ。5つ目が「環境制御力」と呼ばれるもので、厳しい状況に置かれても「あと1日踏ん張ってみよう」と思えるかどうか。
黒木)5つ目が。
河合)そして6つ目が「積極的他者関係」で、「あなたは人を信頼できますか」と聞かれて、「はい。信頼できます」と答えられるかどうかという考え方です。周りと関わることでこの6つの思考は高まっていきます。
黒木)周りと関わることで。
河合)誰かに尽くして喜ばれると、「自分でもできることはあるのだ」と思えて、自分を受け入れることができます。「人格的成長」というのも自分の可能性を信じることですが、自分がいままで積み上げてきたスキルや人間関係を引き継いでいくと、自分自身も「大人になっているな」という感覚が芽生えてきます。
黒木)大人になっているなと。
河合)いまの世のなかはSNSなどでさまざまな考え方が溢れているので、つい、世のなかの価値観に流されてしまいがちです。しかし、「自分はこれだけは譲れない」ということを信じて完全燃焼していると、世のなかには、「あなたのあれいいよね」とか、「あなた頑張っているね」と言ってくれる人が必ずいます。
黒木)見ていてくれる人が。
河合)そう言われると、「自分のやっていることは間違ってはいなかったのか」と思えるようになる。そのような周りとの関係性のなかで、熟成され、「幸せへの力」が引き出されていくのです。
黒木)だから、「人は幸せになるために生まれてきた」ということなのですね。
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河合薫
河合薫(かわい・かおる)/ 健康社会学者・気象予報士
■小学4年から中学1年まで米国アラバマ州で過ごす。
■千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸入社。
■1994年、気象予報士第1号としてテレビ朝日系 「ニュースステーション」等多数のメディアに出演。
■2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了。2007年に博士課程を修了(Ph.D.)。
■産業ストレスやキャリア発達、健康生成論の視点から調査研究を進め、働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数はおよそ900人にものぼる。
■長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学医学系研究科講師、早稲田大学非常勤講師等を務め、現在は健康社会学者として、執筆・講演活動、テレビ・ラジオ等でも発信を続け、「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究に関わるとともに、活動を行っている。
■2022年3月16日、『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』を発売。
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