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進まない国会改革にモノ申す! 小泉進次郎衆議院議員インタビュー

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年5月5日 17時20分

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「報道部畑中デスクの独り言」(第290回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、衆議院議員・小泉進次郎氏へのインタビューについて—

衆院選2021 投開票 神奈川11区 当選確実となった自民党前職、小泉進次郎氏=2021年10月31日、横須賀市 写真提供:産経新聞社

先日、小泉進次郎衆議院議員に話を聞く機会がありました。小泉氏は菅政権で環境大臣を務めました。現在は衆議院環境委員会の理事、自民党の総務会長代理、そして、一児の父親でもあります。

お子さんについて「最近重くなった。一緒にいると本当にかわいくて、自分のなかの日々の癒し」と話す小泉議員。一方、大臣のときに取った育休=育児休暇については、環境省の若手職員から「大臣が取ってくれたら自分たちが取りやすい」と背中を押されたことも理由だったと語ります。

親しくしている副大臣の1人から育休の相談を受けたことも明かし、批判はあったものの「前例をつくっておいてよかった」と話していました。

こうした育休取得も、いわば「改革」の1つかも知れませんが、小泉氏が一貫して取り組んできたテーマに「国会改革」があります。新型コロナウイルス感染拡大から2年以上が経ち、民間ではリモート会議などが定着しています。一方で、国会の実態はどうか、国会議員の当事者はどう感じているのか、今回のインタビューではこれを知りたかったわけです。

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(畑中)小泉議員はかねてから国会改革に力を入れていて、新型コロナウイルス感染拡大から2年以上が経過しました。改めて国会改革の現状を、どのように感じていますか?

(小泉)進んだところがあるのは間違いないです。ただ、世界がこれだけウクライナのことも含めて激動の時代に突入しているなかで、その動きに対応できている国会になっているかと言うと、なっていません。進んだということからすると、議会の運営費のなかには紙ベースになっていることで相当、億単位の予算が使われていることがたくさんあります。それもペーパーレスを進めて、もうこれだけ「デジタル化」と国を挙げて言っているわけですから、国会のデジタル化、国会のDXですよね。実はこの国会中も、いままでペーパーレスにならなかった「官報」も紙での配布をやめて、インターネットでの閲覧に切り替えるということが全会一致で決まりました。経費の削減には間違いなくつながります。こういったことは一歩進みましたね。

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インタビューに応じた小泉進次郎衆議院議員

一般的に、国会を1日開くと3億円かかると言われています。国会改革、一定の進捗は認めながらも、まだまだ……それは最近の出来事でも感じられたと言います。

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(小泉)この前のゼレンスキー・ウクライナ大統領の国会演説というのも、実は国会議事堂のなかで行われたものではないんです。あれは議員会館のなかで行われているのですね。それを「国会演説」と銘打って、報道も「ゼレンスキー大統領による国会演説が行われました」というニュース報道になるのですけれど、国会演説というのは、国会のなかで行われるのが本当の国会演説だと思いますよね。議員会館での演説にせざるを得なかったというのは、例えば、国会議事堂のなかでウクライナとリモートでつないで、スクリーンを議事堂かどこかの部屋に出して対応することが、通信環境上も多分できないことなどがあったのでしょう。ただ、それも対応できなかったという現実に、正直私は残念だという思いですね。やはり間違いなく国会のデジタル化は、日本の民間の動きと比べて圧倒的に遅れているんです。

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3月23日に開かれたウクライナのゼレンスキー大統領の演説。「国会演説」と私どもメディアも報じましたが、正確には国会の敷地内での演説であり、本会議などが行われる議場ではなく、衆議院第一議員会館にある国際会議室と多目的ホールの2ヵ所を使って実施されました。舞台裏では座席の設置や映像・音響設備の準備など、会場の設営が“突貫作業”で行われていました。

私どもラジオ局を含むメディアも、連日夜遅くまで調整が続いていたわけです。これが本会議場であれば、議席や映像・音響設備などは通常のものが使えます。国会職員は一所懸命でしたが、せめてオンライン国会の設備だけでもあれば……問題意識の1つです。

ちなみに、衆議院によりますと、本会議場をオンライン化すること自体は、工事をすれば、物理的にはできないことではない、むしろ運用の問題であるとしています。その運用、オンライン国会に関しては憲法の問題も立ちはだかります。

憲法56条には「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる」と記されています。

2022年3月23日、ゼレンスキー・ウクライナ大統領による国会演説に出席する岸田総理~出典:首相官邸HP(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202203/23ukraine.html)

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(畑中)オンライン国会の話がありましたが、憲法……憲法審査会もようやく粛々と動いてきました。そのなかで、憲法56条にある「出席」の定義をめぐり、「替え玉が行われるのではないか」など、いろいろな議論があります。そのなかで、オンラインにしたくてもできないといった事情もあるようです。忸怩たる思いはどうなのでしょうか?

(小泉)これは、忸怩たる思いも一部ありますが、いままで取り組んできたことが少しでも生きたとしたらよかったな、という思いと両面あるのです。まだ遠隔投票が実現できない、ということに対しては忸怩たる思いはあります。ただ、今回、衆議院の憲法審査会の方で、憲法56条の「出席」という解釈は、オンラインでも出席とみなせる、少なくとも憲法違反ではないという合意ができた。これは間違いなく前進ですし、その前進を生んだ1つとしては、私を含めて衆議院の国会改革に取り組んできたメンバーがいて、そこで整理したことが生きたというように関係者から言われたのですね。当時、我々が主張していたことは、女性議員の妊娠・出産時などで代理投票ができるようにする、もしくは遠隔投票ができるようにする。これはリアルで議場にいなくても、出席ということは最終的には、憲法の違反ではない、議院の自律権のようなものがあって、議院の自律権というものは最も重い、と事前のさまざまな勉強会などで整理してあったのですよね。あのとき整理しておいてよかったなと。

(畑中)下ごしらえはできていたということですね。

(小泉)ありましたね。ただ、一方でまだまだ深掘りしなくてはいけないのは、参考人の方々が国会に出席する、委員会に出席することは「出頭」と書いてあるのですね。出頭というのは、リアルか、リモートか……今度はここの整理になるわけですよ。変えなければいけないことを1つ1つ変えていく、その積み重ねをやっているところですね。

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わかりやすい例では新型コロナウイルスに関する分科会について、これは私どもも取材していますが、こちらでは専門家のリモート参加はごく当たり前となっています。しかし、その専門家が参考人として国会の委員会で発言することは「出頭」にあたるため、リモート参加は実現していません。

検査続くPCRセンター 「安心」を支える=2021年11月26日、千葉県市川市 写真提供:共同通信社

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(畑中)ハードルを越えたと思ったら、またハードルがあるという感じですけれど。なかなか妙案はないと思いますが、どうしたら国会改革が進むと思いますか?

(小泉)やはり国民の皆さんに、「いまの国会はおかしい」という声を上げていただくことです。コロナ禍のときに、何で国民の皆さんには3密を回避してくれと言っているのに、テレビで国会の姿を見ると、あんなに密なのだと。おかしいではないかと、このように思った方の世論や空気は伝わるものなんですよ。これが1つです。国民の皆さんの力。もう1つは、実は国会改革のカギを握っているのは野党だということです。与党の立場からすると、国会のあり方を変えるということは、野党の皆さんにとって納得のできるものでなければ動かせない。自分たちから提案すると、そのことが取引の材料になって、国会運営上マイナスになるのではないかという頭が働くのが、国会対策という、国対上の一般的な考え方なのですね。

(畑中)戦術のツールが失われてしまうのではないかと。

(小泉)そういうことですね。要は取引できるカードが少なくなったり、そういうことは野党にとってもよくないし、与党にとっても不利益になったらどうしよう、ということで、いまを変えたくないという力学が働きやすい。しかし、それを「このままではおかしいよね」と言って変える。いちばん動きやすいのは野党が提案することだと思いますね。将来的には、自民党が野党になるときがまたいつか必ず来ると思います。そのときは、本当に与党の経験が長い自民党は、野党になったときには、しっかりと国会を持続可能な形に、国民の皆さんに胸を張っていられるだけの国会のあり方に変えなければいけない。その役目をもっと果たさなければいけないし、実は国会改革に関して、野党が動かせるものは多くあります。私自身、野党経験と国会改革に取り組んできた経験からも、すごく思いますね。

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先月(4月)27日の参議院の憲法審査会でも、共産党を除き、限定的な状況でのオンラインの出席はいまの憲法でも容認されるという立場が示されました。

一方、「遠隔投票」はまだ実現していません。また、本来は国会の目玉となるはずである「党首討論」ですが、岸田政権になってからは一度も開かれていません。小泉議員がここまで国会改革にこだわるのは……? その真意を聞きました。

2022年4月26日、記者の質問に答える岸田総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202204/26kaiken.html)

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(畑中)ここまで国会改革に力を入れる、その……。

(小泉)モチベーションですか?

(畑中)源泉というのは何ですか?

(小泉)1つは、国会議員にしかできないからです。それと国会のあり方が変わらなければ、日本が失うものが明らかなのがわかるからです。信じられないことだと思うかも知れませんが、明日どういう日程になるかも国会はわからないことがよくあります。実は県会議員や市町村会議員の方が国会議員になられてから驚くことの1つなのですが、地方議会は何月にどういう議会がある、ということが事前にわかります。ですから、国会に来て驚いたと。そういうことに加えて、いまこれだけ国際的な動きが大きいなかで、この前、イギリスのボリス・ジョンソン首相がウクライナのキーウに行き、そして、フランスのマクロン大統領がプーチン大統領と会談をしましたと。こういう安全保障や外交の危機のとき、総理や大統領の仕事は何かと言うと、何よりも外交・安保で国際的な協調をしたり、情報交換をしたり、そういうことですよね。日本の総理は世界でいちばん、議会に出席する時間が長く、日本の外務大臣も世界でいちばん国会に縛られる。絶対に外務大臣でなければいけない質疑でなくても、国会の理解が得られずに外交に行けないときもある。こんなことを続けていて、誰にとってのプラスになるのか。私はそういうことを変えられるのは国会議員しかいないから、国会改革というテーマとして、少しでも変えておかなくてはいけない、それは国会議員の責任だと思って取り組んでいますね。

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2022年4月25日、モスクワでの会議に出席するロシアのプーチン大統領(タス=共同) 写真提供:共同通信社

小泉進次郎議員、最後はウクライナ情勢についても語ります。

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(畑中)いまやりたいこと、これからやりたいこと、何でも結構ですのでお聞かせください。

(小泉)仕事の部分で、ウクライナのことも含めて安全保障の環境がこれだけ変わってきたなかで、改めていままで環境大臣としても取り組んできたカーボンニュートラルが、いまこそ大事だということは声を大にして言いたいですね。まるでロシア、ウクライナのことがあって、このカーボンニュートラル、脱炭素の動きはひと休みのような、そういう空気が一部ありますけれど、全く違って。問われていることは、いかにエネルギーを自前で持っていける国になるか、そしていかに……今回、小麦価格の高騰などが話題になっていますけれど、いかに食料を安定的に、日本人が飢えないように確保し続けられる国家になるか。このエネルギー安全保障と食の安全保障を考えたら、方向性はカーボンニュートラル・脱炭素の政策を加速させることであって、一回手を緩めることでは全くないのです。それとは別で、ウクライナ情勢や外交・安保と関わるのですけれど、今回の戦争を見ても明らかなように、これからの戦争は、ハイブリッド戦争が当たり前の時代になります。しかし、日本はサイバーの分野がものすごく弱い! この致命的な遅れを放置したら、いざというときに、日本が国民の生命と財産を守れない。だから、私はサイバーセキュリティの強化に力を入れていて、私の地元の横須賀というのは、陸海空の自衛隊、米海軍の横須賀基地、防衛大学校、そしてNTTの研究所、そういったことを含めてインフラがあります。ですので、横須賀がサイバーセキュリティの拠点となるような後押しをしていきたい。

(畑中)ウクライナ情勢について、日本はやるべき課題が見えてきたというか、はっきりさせたということも言える……。

(小泉)もともとある宿題の重さを増幅して、浮き上がらせたというのが、コロナ禍とウクライナ情勢だと思います。その両方に対する答えの1つが、カーボンニュートラルだと思います。

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国会改革、カーボンニュートラル、サイバー対策……ハードルはいずれも低くありません。小泉進次郎議員は、いまは政権から距離を置いているように見えますが、その発言の“熱量”は健在でありました。

インタビューのもようはPodcast「ニッポン放送・報道記者レポート2022」のなかでも配信しています。そちらもどうぞお聴きください。(了)

畑中秀哉(はたなか・ひでや)

■ニッポン放送 報道記者・ニュースデスク。
■1967年、岐阜県生まれ。早稲田大学卒業後、1990年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。
■1996年、報道部に異動。警視庁担当、都庁担当、番組ディレクターなどを経て、現在は主に科学技術、自動車、防災、経済・政治の分野を取材・解説。
■Podcast「ニッポン放送報道記者レポート2022」キャスター。
■気象予報士、防災士、くるまマイスター検定1級。

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