「ゆっくり茶番劇」が商標登録されてしまった「文化の細分化」という問題
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年5月18日 21時45分
国内最大級のネット掲示板「2ちゃんねる」の画面。
ジャーナリストの佐々木俊尚が5月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。第三者によって商標登録され、問題になっている「ゆっくり茶番劇」について解説した。
「ゆっくり茶番劇」が第三者によって商標登録
同人ゲームなどで知られる「東方Project」の派生作品として自然発生したキャラクターが、無関係の第三者によって商標登録され、物議を醸している。
飯田)元の元を辿ると、「東方Project」のなかのキャラクターだということです。
佐々木)よく見ますよね、この絵柄。
飯田)そうですね。
商標登録は先願主義で、早い者勝ち
佐々木)何が問題なのかと言うと、基本的に商標登録は先願主義で、早い者勝ちなのです。もちろん何でも認められるわけではなく、例えば有名なものは「みんなが使っているからダメでしょう」と申請を拒否されるのですが、マイナーなものだと「一般的ではないから通してもいいか」となり、通ってしまうケースがあるのです。
申し立てられ、無効審判になる可能性も
佐々木)「ゆっくり茶番劇」のことは知っていましたか?
飯田)私は海外の鉄道チャンネルなどを観ていたので、「こんなものがあるのだな」と思っていました。ただ、ルーツなどは知りませんでした。
佐々木)「その世界では有名」という話で、だから通ってしまったのだろうと思います。おそらく、次の段階は無効審判だと思います。「既に一般的に使われているのでダメです」と申し立てると、審判が行われて無効になるのではないかと言われていますが、わからないですよね。人間が考える審判なので。
ジャンルが細分化され、隣のジャンルで何が流行っているのか全然わからない
佐々木)なぜこんなことが起きるのかと言うと、かつてはメジャーな文化があればみんな知っていた。文化はテレビや雑誌、いわゆるマスコミから流れるものでした。だから受け付ける側も、「それはみんな知っている」ということがわかったのだけれども、これだけインターネットが普及して文化が細分化されると、少し別のジャンルなどをまたいだら、もはや全然わからない。
飯田)インターネットの普及で。
佐々木)音楽がそうですよね。昔であれば、テレビの歌番組がたくさんあって、ヒット曲はみんな知っていたではないですか。でも、いまはヒップホップやソウル、アイドルなど、いろいろな分野で音楽が流行り、隣のジャンルで何が流行っているのか全然わからなくなってしまっている。
飯田)そうですね。
佐々木)いろいろな文化があって、それぞれ、みんなが楽しんでいる。その世界のなかでは「誰でも知っている」という感じなのだけれども、少し外れると「誰も知らない」ということがたくさん起きる。今回のように、メジャーだと思っていたものが先願主義で勝手に登録されてしまうような問題は、今後、増えていくのではないでしょうか。それにどう対応するかは難しいですね。
いまの時代に呼応した新しい仕組みが必要とされている
飯田)番組ツイッターのタイムラインを見ていても、ツイッターを使って番組に参加してくれている人のなかでは、「ゆっくり」はメジャーなのです。「あのチャンネルが見られなくなるではないか」などというツイートがたくさん来ますが、それを社内の人に言ってもまったくわからない。この温度差ですよね。
佐々木)以前は「年齢によって文化が違う」ということがありました。シニアの知っている文化と、若者文化は違うという。いまは同じ若者文化でも、横に分断されているような時代になっています。それに対応できる新しい仕組みが必要とされているのかも知れません。受け付ける側も「私たちだってすべての文化を知っているわけではない」ということになりますよね。
飯田)そうなると「審査のしようがない」ということになってしまいます。あるいは、審査に時間が掛かります。
佐々木)かと言って、商標登録そのものをなくすわけにはいかないので、何か先願主義ではない、いい方法があればと思うのですが、難しいですね。
無効審判のような異議申し立てをすぐにできる、迅速化するという方法も
佐々木)もしくは、先願主義で商標登録をしてもいいけれど、無効審判のような異議申し立てをすぐにできる、迅速化するなどの対応をした方がいいのかも知れません。例えばツイッターでは、誹謗中傷がすぐにはなくせない。けれども、誹謗中傷した人に対して、すぐに誰がやっているのか調べられるなど、そういうことを迅速にした方がいいという話になっています。今回の件もスピードアップしていった方が、結果的にはいいのかも知れないですね。
飯田)商標登録のハードルが上がってしまうと、それはそれでまた問題が出る。
佐々木)スピードが落ちてしまってなかなか通らず、その間に勝手に使われるという問題も逆に起きてしまう。
飯田)やりながら手直しするというような。いままでであれば無謬性を求める、誤りのないことをお役所がやるのだから、と考えられていましたが、そうではないものが求められますよね。
佐々木)社会そのものが、無謬性の原則を扱うのに適さない時代になってきているので、行政もそれに合わせた方がいいのかなという感じがします。
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