スーパーで売っている刺身を「3秒」で美味しくする方法 ~刺身はそのまま食べてはいけない
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年7月31日 17時50分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(5月18日放送)に「株式会社ウエカツ水産」代表取締役の上田勝彦が出演。スーパーの刺身を美味しくする方法について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。5月16日(月)~5月20日(金)のゲストは「株式会社ウエカツ水産」代表取締役の上田勝彦。3日目は、スーパーの刺身を美味しくする方法について—
黒木)スーパーのマグロがもっと美味しくなる方法をぜひ教えてください。
上田)これはスーパーのマグロだけでなく、他の切り身の魚すべてに応用できることですが、先入観として、「魚はその日のうちに食べてしまわなければいけない」ということがありませんか?
黒木)ありますね。
上田)もう1つは、「魚は洗ってはいけない」という先入観です。マグロの柵を買ってきたとしますね。それを1度洗いますか?
黒木)いえ、そのまま食べます。
上田)そこなのです。
黒木)そこなのですか!
上田)魚が丸のままであれば、いくら外側に雑菌がついていても、刃が入らない以上、なかは無菌です。ですので、普通に刺身として食べられるのです。
飯田)切り身でなく、一匹であれば。
上田)ところが、そこから柵として取り出して、あるいは切り身にして刃が入ってしまうと、そこには多少なりとも雑菌が付いてしまいます。また、切ったところは細胞が壊れているので、そこから血や体液などが滲み出ます。それを普通にパックにして売っているのですが、それを家に持ち帰ってそのまま切ると、表面に出てきた体液や血、及びそこに付着した雑菌を刺身と一緒に口のなかに入れることになります。その後味は、確実に生臭いものです。切り身の柵はまず洗うことが大切です。
黒木)どのように洗うのですか?
上田)普通にジャブジャブと洗ってしまうと、浸透圧の関係で、うま味が逃げるということはないのですが、水が切り身の方に入ってしまい、水っぽくなってしまう。結論としては、素早く洗って素早く拭くということです。
黒木)水で洗うのですか?
上田)まずは流水です。
黒木)流水でマグロの切り身などを「シャッ」と洗うのですか?
上田)拭く布を置いておいて、3秒間洗います。「1、2、3」で、すぐ抑え布巾をします。
黒木)そのようにして水分を取るのですね。
上田)タラの切り身など、それでも臭みが取れないものもあります。ブリの切り身も血の気が強いです。そのような水で洗っても匂いが取れない場合は、塩をまぶします。
黒木)刺身にですか?
上田)そうです。まぶしたらまた3秒で洗います。
黒木)塩をまぶす意味は何ですか?
上田)水に溶け込んだ臭みは細胞の表面に入り込んでいるため、洗っただけでは取れないのです。それを塩の強い浸透圧で一瞬にして引き摺り出してしまう。
黒木)刺身自体が塩辛くなりませんか?
上田)なりません。それでも臭ければ、今度は日本酒です。日本酒をまぶしてまた3秒で洗います。そして拭く。これで取れない臭みはほぼありません。つまり、臭みの度合い、魚の品質に応じてこの水使い、塩使い、酒使いを施してあげる。そのようにすれば、どのようなスーパーの刺身でも救済できます。醤油も塩と同じ効果があります。買ってきた刺身の表面には細胞壁がついています。ボウルに刺身を入れたら醤油をかけてすぐにザルで切ってしまう。つまり醤油洗いですね。
黒木)それをまた流水ですか?
上田)いえ、これはもうこれでいいのです。なぜかと言うと、醤油は塩と違って液体ではないですか。臭みや汚れはすべて醤油の方に行きます。
黒木)そうなのですね。はじめて聞きました。それはどのような刺身でもいいということですか?
上田)はい。大丈夫です。
黒木)白身でも?
上田)白身でも青魚でも。
黒木)それが醤油で洗うということなのですね。
上田)「漬け」とは違います。一瞬、洗うだけですから。
上田勝彦(うえだ・かつひこ)/ 株式会社ウエカツ水産 代表取締役
■1964年・島根県出雲市出身。
■幼少のころから魚に興味を持ち、釣りと魚の研究三昧の日々を送る。
■長崎大学水産学部在学中から「シイラ漁船」に乗り込み、漁師として活動。卒業後は漁師の道に進もうと考えるも、1991年水産庁入庁。
■瀬戸内海漁業調整事務所勤務、調査捕鯨業務、マグロ漁場開拓業務などの業務を経て、本庁に復帰し、水産物普及業務に邁進。
■2015年に退職し、「ウエカツ水産」を起業。「生産」「流通」「小売」「飲食」「家庭の食卓」を柱に、魚食文化普及に尽力。
■漁港で活け締め(神経締め)の技術指導、料理店やスーパーの厨房で魚の扱いを指南、YouTubeから家庭に向けて魚料理の仕組みを伝えるなど、さまざまな活動を実施。
■あらゆる現場に足を運び、漁業、水産、魚食に関わるすべての人に向き合い、「魚を食べる意味」を伝え続けている。
■著書に『旬を楽しむ魚の教科書』『ウエカツの目からウロコの魚料理』『ウエカツさん直伝! 子どもが食いつく 魚レシピとヒミツ』
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