なぜバッハは15ヘルツの「聴こえない非可聴の音」を譜面に書いているのか 野口五郎
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年6月30日 18時30分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(5月12日放送)に歌手の野口五郎が出演。音に関する仮説について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。5月9日(月)~5月13日(金)のゲストは歌手の野口五郎。4日目は、聞こえない音「非可聴」の効果について—
黒木)プライベートのお話も伺いたいのですが、「チャッカマン」と呼ばれているのですって? チャッチャカチャッチャカやるから。
野口)そうですね、チャッチャカ考えるのが好きで。「どうすれば音楽で病を治すことができるか」とか。音楽が本当に人にとっていいものだということはわかっているのですけれども、そうではなくて、本当に治したいと思っているのです。
黒木)すごく難しい、非可聴と可聴、音が聴こえるものと聴こえないもの。ヘルツによって違うというようなこととか、いろいろな大学の教授と勉強なさっていると伺ったのですけれども、実証されているのですか?
野口)マサチューセッツ工科大学では、40ヘルツに関しては認知症に関しての論文も出ておりますし、それとまた違う音楽と非可聴、聴こえない音ですね。20ヘルツ以下は聴こえないと言われているのですが、それと一緒にすることで認知症やその予備軍、若い人が聴くと集中力が増すなど、そういうものに効果があることが実証されているわけです。僕は何となくそれを想像していて仮説をたくさん立てていたのですけれども、それが実証されていって、つい最近も新しい論文が出ました。
黒木)でも実際は聴こえていない音なのですよね。
野口)匂いだとわかりやすいと思うのですが、フェロモンって匂わないですよね?
黒木)ああ、確かに。
野口)それと同じだと考えれば、非可聴は聴こえないけれど、人間に影響を与えている。例えば、東京ドームでものすごい爆音で「私鉄沿線」という曲を流したとして、非可聴で聴こえない音で「ヤングマン」という曲を爆音で流していったとしたら、音量をだんだん上げていくと「私鉄沿線」がマスキングされていく。だんだん消えていくのです。わかりますか?
黒木)消えていく。
野口)「聴こえない」と言っているのは人だけですよ。人間だけなのです。だんだんフェーダーを上げていけば聴こえなくなっていく。
黒木)騒音ということですか?
野口)人間は聴こえない音なのだけれども、他の植物や動物には聴こえるかも知れない音です。
黒木)では犬が、ご主人様が帰ってきたときにすごく遠くなのに玄関に行くとか、そういうようなことですか?
野口)それは大いにあるかも知れないです。すると、聴こえない音がどんどん大きくなると、聴こえる音をマスキングしていくということが考えられるのです。聴こえない音が大きくなると、その音がものすごく楽しい音だとしたら、耳には聴こえないけれど細胞レベルでそれを浴びているとしたら、何かわからないけれどすごく楽しい気分になっていくとか。ありえますよね。そういう仮説を立てていくのです。
黒木)はい、何となくわかります。
野口)何となくでも、嬉しいです。だから、「音は聴くだけではないね、音は浴びるのだよね」という感覚です。
黒木)それと歌手というところを結び付けられないかなということ。
野口)もちろん、歌を歌っているからそれを思いつくのです。「この思い届け」というときに昔は「届け~!」と高い声で歌っていたのだけれども、「届けぇ~」と下に届けるようにするではないですか。その下の方に持っていくという、「何なのだろうこの思いは」と。そうすると、お寺の鐘がそうだなと思うのです。お寺の鐘って「カーンカーン」と聴こえるではないですか。でも真下で聞くと「ゴーン」という低い音しか聴こえないですよね。この低い音が高い音を遠くに飛ばしているのかなとか。中世の教会にあるパイプオルガンには、15ヘルツなど、聴こえない音が入っているのです。もしかすると、昔の人たちは低い音は音を遠くに飛ばすということを知っていたのかなとか。そういうことをいろいろと仮説を立てるのです。バッハは15ヘルツの聴こえない非可聴の音を譜面に書いているのです。
黒木)昔からそのように考えてやっていらっしゃったということですか?
野口)そうですね。テクノロジーの進歩によって、MP3などでは聴こえない音を、アンビエンスを切ってしまっているのです。ですからMP3で聴く音は人間にとってストレスのたまる音かも知れない。もしかすると下の方の非可聴の音を揺らすことによってMP3こえてくる音の倍音が変わってくると、人間にとって少しでも心地よい、体によい音に変化していくのではないかなとか。
黒木)心や体癒してくれたらすごいですね。
野口)そうしたら実証実験でエビデンスが取れていったので、僕も驚いています。
野口五郎(のぐち・ごろう) / 歌手
■1956年2月23日生まれ。岐阜県美濃市出身。
■1971年、「博多みれん」でデビュー。次作「青いリンゴ」がヒットを記録。「甘い生活」「私鉄沿線」などヒットを連発し、西城秀樹、郷ひろみとともに「新御三家」と呼ばれ人気を集める。
■1975年から5年連続で『日本(にほん)歌謡大賞』で放送音楽賞を受賞。
■NHK『紅白歌合戦』に11回出場、ギタリストとして高く評価されるほか、俳優として、ドラマ『ケイゾク』、ミュージカル『レ・ミゼラブル』など話題作に出演。
■2021年11月には岩崎宏美さんとのコラボレーション楽曲、『好きだなんて言えなかった』をリリース。2人のコンサートツアーも開催。
■2022年5月13日には、岩崎宏美さんとのコラボレーションアルバム『Eternal Voices』をリリース。また5月14日からは岩崎宏美さんと2人によるコンサートツアーがスタート。7月1日の東京公演「東京国際フォーラム・ホールA」では東京フィルハーモニー交響楽団が参加する「野口五郎・岩崎宏美2022プレミアムオーケストラコンサート〜Eternal Voices〜」として開催される。
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