尾上右近「『できない人もいるんだ』と思われていたらどうしよう」と歌舞伎の芝居をすることもある
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年6月27日 21時0分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(4月27日放送)に歌舞伎俳優の尾上右近が出演。さまざまなジャンルの仕事での気持ちの切り替え方について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。4月25日(月)~4月29日(金)のゲストは歌舞伎俳優の尾上右近。3日目は、さまざまなジャンルの仕事での気持ちの切り替え方について—
黒木)歌舞伎俳優としても清元としても活躍なさっていますが、『燃えよ剣』で映画に初出演されて、日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞されました。おめでとうございます。
右近)ありがとうございます。
黒木)そして2021年には大河ドラマ「青天を衝け」に出演され、テレビ、映画、ミュージカル、そして歌舞伎俳優で清元もやっていらっしゃる。バラエティに富んだ活躍をされているのですけれども、ご自分ではどのように気持ちを切り替えていらっしゃるのですか?
右近)切り替えるよりも、「地続きでやっていきたい」という願望が強いですね。やはり空気ですかね。
黒木)空気。
右近)自分の持っている空気をどこへ持っていっても美味しくできるようになりたいです。
黒木)それはご自分の個性だったり、オーラだったり華だったり、そういうことですか?
右近)そうですね。
黒木)そういうものを、そのときに出会う方々と共有して1つの作品をつくっていくという感覚でいらっしゃる。
右近)それが好きですね。
黒木)好きですか。
右近)それが好きですし、若いので「認められたい」という気持ちもあります。歌舞伎界から来ているので「歌舞伎に恥をかかせるわけにはいかない」という気持ちもあります。でも「歌舞伎でござい」というわけではないので、まずは私という存在を楽しんでもらえるように、自分自身を楽しく成長させていくことが1つのテーマです。でも、アカデミー賞は嬉しかったですね。新人俳優賞は黒木さんもお獲りになっていますよね。
黒木)はい。「映画の世界に行きたい」と思っていましたので、嬉しかったですね。1歩目というか。
右近)それが初めての映画だったのですか?
黒木)宝塚を辞めて初めての映画です。
右近)私も地続きということを心掛けたいのですが、それぞれのジャンルの技術はやはり違うではないですか。
黒木)そうですね。
右近)他のことを新たになさっていく感覚って「ワクワク」ですか?
黒木)与えられた役が難しければ難しいほど、刺激的ですね。
右近)へえ! かっこいいなぁ!
黒木)いやいや!
右近)私の場合、「できるかな?」と思ってしまうのです。
黒木)私も「できるかな?」と思いますよ。でも、この役を与えてくださった方は、私のなかの何かを引き出そうとしていらっしゃるのだろうと感じるので、自分への挑戦のような形でやらせていただいていますね。尾上さんは歌舞伎をやっていらっしゃるから、普通の芝居もできるではないですか。
右近)いえいえ、そう思われてしまうのですが。
黒木)違うのですか?
右近)人によりますが、私は形から入ってしまうので、「この先輩のこの役どころのこの瞬間が好きだ」というものを、自分のものにしたいという思いがあり、自分の心で歌舞伎をつくるということをあまりやってきませんでした。だから、普通のお芝居が苦手なのですよね。
黒木)でも、普通のお芝居しかしたことのない人が、いきなり歌舞伎のセリフは言えないではないですか。逆に、歌舞伎の芝居ができる方は、普通の芝居ができると私は感じるのですよ。
右近)なるほど。「その期待を裏切らないように」という気持ちがいつも先立っています。
黒木)そうなのですか(笑)。
右近)「歌舞伎の人は何でもできるからね」と言われたら、「そうですね」と返すのですが、「『歌舞伎の人なのにできない人もいるんだ』と思われていたらどうしよう」と思っている部分も最初はあります。
黒木)歌舞伎ではない舞台もおできになるし、清元もやっていらっしゃるから、もちろんミュージカルもおできになるだろうし、舞踊をやっていらっしゃるから、ダンスもおできになるだろうし、テレビも映画もバラエティもやってらっしゃるから、オールマイティに何でもおできになるのだろうなと思って拝見しております(笑)。
右近)嗚咽をあげそうです(笑)
黒木)でも、いろいろと試行錯誤しながら「自分の個性って何だろう」「どんな宝物を持っているのだろう」など、いろいろ考えていらっしゃる時期でもあるのではないですか?
右近)そうですね。いままでの人生のなかで、いまがいちばん楽しいです。これからもどんどん楽しくなっていく予感にワクワクしていますし、何があっても乗り越えようという気持ちは非常に強いです。
黒木)いいですね。「いまがいちばん楽しい」というのは20代のときも30代のときも、40代のときも50代のときもありますからね。
右近)わあ、嬉しいです! しかと心得ました。
尾上右近(おのえ・うこん)/ 歌舞伎俳優
■1992年5月28日生まれ。清元宗家七代目・清元延寿太夫(きよもとえんじゅだゆう)の次男。曾祖父は六代目尾上菊五郎、母方の祖父には俳優 鶴田浩二。
■2000年、7歳のとき、歌舞伎座『舞鶴雪月花』の松虫で・本名の岡村研佑で初舞台。12歳で・新橋演舞場「人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)」の長兵衛の娘・お久役ほかで二代目尾上右近を襲名。2018年1月、清元栄寿太夫を襲名。
■2017年『スーパー歌舞伎IIワンピース』では主役ルフィを演じた。
■俳優と清元の両立が注目を集めるほか、テレビ・映画・バラエティなどでも活躍。大河ドラマ『青天を衝け』などに出演し、初出演映画の『燃えよ剣』では、会津藩藩主・松平容保を演じ、第45回日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。
■5月2日~27日には、歌舞伎座で『團菊祭五月大歌舞伎』。第三部「弁天娘女男白浪」で、弁天小僧菊之助を演じる。
※團菊祭は、近代歌舞伎の確立に貢献した、九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎の功績を称えるために、昭和11年から始まり、近年の歌舞伎座では五月興行の恒例の祭典として上演。
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