医師の立場から見る「国民皆保険制度」の難しさ
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年7月1日 11時20分
東京都医師会広報委員で「新田町ビル診療所」院長の坪田淳氏が6月24日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。医師の立場から見る国民皆保険制度とそのあり方について解説した。
設備費用は医師の報酬には入らない ~最新設備の費用は持ち出し
飯田浩司アナウンサー)国民皆保険制度についてですが、同じ治療をすれば保険点数として同じになるということは、お医者さんが受け取る報酬も同じになるということですよね。例えば、最新の医療設備を一生懸命導入しているお医者さんと、いままでのものを大事に使っているお医者さんとを比べても、報酬としては同じになるのですか?
坪田)そうなのです。高い機器をたくさん仕入れても、それを維持するためのお金はそこには入ってきません。「自分たちが受けた診療報酬のなかからうまく出しなさい」ということなのです。最新の設備は、必要な人ならいいのですが、必ずしも必要でなければ、その分、持ち出しになってしまうのです。
同じ診療をしても固定費が高ければ、その分、収入は減る
飯田)一方で、経営として考えると、収入は一定で横並びになるわけです。同じ診療をすれば同じ収入になる。看護師さんを雇えばその分、コストがかかってしまう。
坪田)そうですね。東京都内のビルで診療所を営んでいる先生も多いと思います。私もそうなのですが、ある程度の家賃を払わなければいけないので、そのために患者さんをたくさん診なければならない。患者さんが増えると、そのためにスタッフを増やさなければならず、固定費が増えてしまうのです。
飯田)そうですね。
坪田)結局、自分に入ってくるお金はあまり変わらない、逆に少なくなっているかも知れないのです。状況によっては、固定費は動かないけれども、患者さんが減ることもあります。
医療費は増えているがドクターフィーは変わっていない
飯田)昔は「お医者さんはお金持ち」というイメージでしたが。
坪田)私が研修医のころにいただいた金額をうちの父親が聞いて、「なんだ、お前、俺の時代と同じだな」と言われたのがとてもショックでした。30年経って1円も上がっていないのです。それには驚きました。
飯田)30年間で。
坪田)ただ、皆保険制度で医療費が増えてきているというのが現状です。検査機械が高額になっているということもありますし、薬も高くなっています。その結果、医療費が増えてしまうと思うのですが、ドクターフィーは変わっていないのです。
皆保険制度の考え方
飯田)患者さんの年齢で切り分けると、ご高齢の方の医療費が高くなっている。それは高度な医療が提供されるからですか?
坪田)それもそうでしょうし、ある程度の年齢になると、いろいろな基礎疾患を抱えてしまうのです。健康が第一だと思いますので、「元気なうちはしっかり自分の足で歩きましょう」ということです。
飯田)本当にそうですよね。その話まで「医療費の伸びを抑える」ということになると、社会全体のコンセンサスとして、「命をどう捉えるのか」という問題になってきてしまいます。
坪田)ただ、そのための保険制度だと思うので、それまで一生懸命自分でできることをやってもらえれば「万が一、病気になったときには保険で面倒を見ます」ということだと思います。そのためには保険制度がなければなりません。
飯田)そうですね。
坪田)「講」というものがあるではないですか。「ねずみ講」ではないですよ。みんなからお金を集めて、誰か困った人がいたらそこにお金を使うという。皆保険制度というのは、あれが元になったのではないかと思うのです。
飯田)助け合いの互助会的な姿勢で考えると。
坪田)もともとは、そちらの意味合いの方が強かったのではないかと思うのです。
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