香港返還から25年 反故にされた「一国二制度」維持の約束
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年7月5日 11時55分
![香港返還から25年 反故にされた「一国二制度」維持の約束](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_370981_0-small.jpg)
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が7月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。7月1日でイギリスから中国に返還されて25年となる香港について解説した。
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香港返還25年記念式典で、演説する中国の習近平国家主席=2022年7月1日、香港(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社
香港返還から25年
香港がイギリスから中国に返還されて、7月1日で25年となる。1997年の返還の際には「50年間維持する」と約束したはずの一国二制度は、未だ折り返し地点だが、政治や社会の各方面で中国本土との一体化が進んでいる。民主派への強硬姿勢で知られる李家超(ジョン・リー)氏が政府トップの行政長官に就任し、香港の「中国化」はさらに加速する見通しだ。
飯田)警察出身の強面、というところですね。
宮家)やはり中国は約束を守らないのだなと思いますね。少なくとも50年は一国二制度を維持すると約束したではないですか。せめて50年は我慢して欲しかったですが、やっぱり我慢できなかったのでしょうね。なぜ我慢できなかったかと言うと、おそらく北京は、50年維持する前に香港がおかしくなってしまい、政治の自由化が進み、香港の自由化問題が本土に逆流入してしまうことを恐れたのではないでしょうか。
飯田)香港の問題が本土に流入することを。
宮家)「雨傘革命」があったころ、私もよく香港に行きました。激しいデモを見て実は、「こんなことをやっていたら中国の虎の尾を踏むぞ」と思っていたのです。いまも日本人の中国専門家の人と話すと、「あのとき我々も香港を支持、サポートしていろいろやったのだけれど、あれが逆効果になったのかも知れない」と言います。もちろん、香港の民主化を支援してはいけないと言っているわけではありません。ただ、西側の自由化を支援する動きがあったために、逆に中国の危機感が高まって、香港国家安全維持法という法律が真夜中に施行されることになってしまった。
飯田)そうでしたね。
民主派への強硬姿勢で知られる李家超氏が政府トップの行政長官に就任
宮家)そうした危機感から中国は電光石火で対応したわけですけれど、あれを見ていて、やはり中国は信用できないなと、つくづく思いました。勿論、あの前の女性長官は……。
飯田)林鄭月娥(りんてい・げつが)さん。
宮家)彼女にはどこか香港の良心のかけらが残っていたと思うのだけれど、それではやはりダメだった。北京は「もう力でやるしかないのだ」ということで、今回は保安局長だった人が就任しました。
飯田)局長を務めた人ですね。
宮家)あまりにもわかりやすい。やはりそうですよね、でもね、こんなことをしていたら香港は終わりますよね、と。そんな気がします。
2014年の雨傘運動、2019年の「逃亡犯条例」改正案への大規模な反対デモ
飯田)2014年の雨傘革命があって、2019年には中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案に対し、反対運動が起きた。
宮家)そうでしたね。
飯田)当時、宮家さんも夏に香港に行かれましたし、私も12月に行きましたが、あのときは民主の息吹がありました。
宮家)大きいデモがあって、「こんなことをして大丈夫なのか」と思ったら、大丈夫ではなかった。それはショックですね。香港の若い人たちは純粋だったと思いますが。
飯田)そこですよね。純粋ゆえに長老たちがしようとした「政治的な妥協」を許せなかった。そこは政治家がいなかったのだろうと。
宮家)もしあそこに老練な政治家がいたら、あのエネルギーを別の方向で動かすべきだったのです。そうではなく、中国当局へ真っすぐに向かってしまった。中国としては、絶対に力で抑えようとするだろうと思います。
いずれ深圳の経済圏のなかに香港が飲み込まれていくのか
飯田)今回の式典には習近平国家主席が出席しているそうですが、滞在しているのは近隣の深圳(しんせん)だそうです。
宮家)これから香港がどうなるのかということですが、移民ラッシュがまた始まるでしょう。もう大金持ちや目先の鋭い人たちは既に離れてしまった。強い愛着があり、香港を何とかしたいと思っている人たちは残ったのだけれど、その人たちももう出ざるを得なくなっている。
飯田)そうですね。李家超氏がトップになることが1つの区切りで、香港を出るという人も多いそうです。
宮家)もともと香港は政治的自由が完全にあったわけではないし、イギリスも植民地時代に民主主義をやったのかと言えば、全くやっていません。植民地なのだから当然ですよね。でも、これで香港経済が雪崩を打って崩壊し、外国資本が逃げていくわけではありません。香港経済は当分持つだろうとは思います。しかし、政治的には既にそうなのですが、経済的にも、いずれ深圳の経済圏のなかに香港が飲み込まれていくのではないかと危惧しています。
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