岸田政権に求められる「長期的な経済政策」 欧州中央銀行が11年ぶり利上げか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年7月19日 17時30分
![岸田政権に求められる「長期的な経済政策」 欧州中央銀行が11年ぶり利上げか](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_374289_0-small.jpg)
第一生命経済研究所・副主任エコノミストの大柴千智氏が7月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。11年ぶりの利上げに踏み切る欧州中央銀行(ECB)について語った。
![](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2022/07/20220715jvcaRS.jpg)
2022年7月15日、挨拶する岸田総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202207/15jvca.html)
欧州中央銀行が11年ぶりに利上げに踏み切る見通し
欧州中央銀行(ECB)は7月21日に理事会を開き、11年ぶりに利上げに踏み切る見通しだ。ユーロ圏19ヵ国の6月の消費者物価指数は前年同月から8.6%上昇。2%と定めるECBの目標を大きく上回り、過去最高を更新した。ECBは物価高騰対策として、6月の理事会で主要政策金利を7月に0.25%引き上げ、9月にも追加利上げする工程表を示した。
飯田)物価や為替についていろいろ言われていますが、足元の円相場は1ドル=138円10銭付近での取引となっています。この辺りをどうご覧になっていますか?
大柴)やはり円安基調での進行が続いていますが、大きな要因となっているのが、日本と世界各国との金融政策方針の違いです。
金利差だけでは説明できない円安相場
大柴)特にアメリカでは、自国のインフレ抑制のために利上げが急ピッチで進められています。一方、日本では国内のコストプッシュによる物価上昇で景気の回復が遅れていて、金融引き締めを行える経済状況ではないため、今後も日米間での金利差が拡大するという見方が強いです。そうした見方から円が売られやすくなっていて、円安になっている状況です。
飯田)日米間の金利格差が拡大するという見方から。
大柴)ただ、貯金だけを見ると、投機的な要因も大きくなっていると考えられます。米国の長期金利が下がっていても、円安基調が継続している局面もあるので、金利差だけでは説明できなくなってきている。不透明度合いが増しているのが足元の円安相場なのだと思います。
欧州でも金融引き締めが加速 ~南欧への考慮もありアメリカほど急激な利上げはできない
飯田)ドルの独歩高と言われていて、他の通貨に対してもドルは高くなっているという話があります。ヨーロッパの方で利上げが行われるとなると、局面は変わってきますか?
大柴)今週は欧州のECB理事会、来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)と、世界各国の金融政策の舵取りが注目されますが、欧州でも高いインフレが進んでいます。冒頭のニュースにもあった通り、インフレに対応するために今週のECB理事会後から利上げ開始を表明していて、欧州でも金融引き締めが加速する見込みです。
飯田)欧州でも金融引き締めが。
大柴)ただ、欧州連合(EU)はさまざまな国が参加していますので、経済状況もさまざまです。特に財政基盤が弱いような南欧の国々に考慮して、アメリカほど急激な利上げはできないのではないかという観測が高まっています。
米のドル高圧力は今後も高い
大柴)一方で、アメリカに関しては、先週公表されたアメリカの消費者物価指数が前年比でプラス9%超えと、さらに上ぶれたということもあります。来週行われるFOMCでは、さらに利上げ幅を拡大して1%の利上げが実施されるのではないかという見方も一部浮上しているので、アメリカのドル高圧力は今後も高いのではないかと見ています。
アメリカの経済が減速すると懸念される日本の輸出面 ~輸入面でも円安がコストを押し上げ
飯田)日本への影響はどのようなことが考えられますか?
大柴)インフレ抑制が至上命題となっているので、しばらくは急速な金融引き締めが続きそうなのですが、こういう急激な利上げは、需要を抑制して景気を冷やす効果があります。アメリカ経済が今後、景気後退に陥るのではないかという懸念も強まっています。既に住宅ローン金利が急上昇したことで、住宅部門で悪影響が出始めていて、アメリカ国内の経済動向が注目されています。
飯田)住宅部門に悪影響が。
大柴)日本経済への影響となると、当然、アメリカ経済は世界経済全体に大きな影響力を持っていますので、アメリカで景気減速があると、日本にも悪影響が及んでくると考えられます。
飯田)アメリカの景気減速が日本にも。
大柴)特に懸念されるのが輸出面です。日本のこれまでの経済回復を輸出が牽引してきたところがあるので、日本にとっては大きな痛手になると見られます。輸入面についても、アメリカの利上げが継続して円安が一層進むようであれば、輸入コストの押し上げとなりやすいので、そういったところも懸念されます。日本から海外への支払いが大きくなるところで、日本から海外への所得流出の面も懸念されると見ています。
エネルギー政策、食料自給力の底上げのために自国の供給網の構造的な見直しが必要
飯田)そうすると輸入してくるもの、特にエネルギーなどの価格が上がってしまうことになると思いますが、岸田政権として打ち出すべき経済対策はどのようなものが考えられますか?
大柴)資源高の影響で輸入コストの増加が深刻になり、企業にとっては、コスト増加が重大な問題になっています。今後、商品価格に転嫁する動きが継続することで、身の回りの物価上昇はしばらく日本でも続きそうな見通しです。
飯田)日本でも物価上昇が。
大柴)そちらへの対応は引き続き重要になると思います。さらにいま足元で打ち出されているような、補助金といった短期的な政策も必要ではあるのですが、そこに加えて長期的な視点を持った経済政策も必要になると思います。
飯田)長期的な経済政策が必要。
大柴)いまの物価上昇のほとんどは、輸入品の価格上昇によってもたらされているものです。日本はエネルギーや原材料の多くを輸入に依存しているので、世界経済の影響で価格が変動しやすく、自国経済への影響も大きくなります。こうした分野の輸入依存度を下げるため、エネルギー政策の見直しや、食料自給力の底上げといった自国の供給網の構造を見直すことも今後、必要になると見ています。
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