米FRB、大幅利上げか それでも日本が利上げしてはいけない「理由」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年7月27日 12時30分
数量政策学者の高橋洋一が7月27日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。米FRBによる利上げについて解説した。
米、FOMCで連続利上げへ
アメリカの中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は、7月26日~27日にかけて開催されている連邦公開市場委員会(FOMC)で物価高騰に対処するため、前回の6月会合で約27年ぶりに実施した0.75%の大幅利上げをもう一度実施するとの見方が多い。
新行)どのようにご覧になりますか?
高橋)FOMCは日本における日銀の政策決定会合と同じような組織なのですが、アメリカもインフレ目標があって、一応は2%という目標です。いまはそれをはるかにオーバーしているから、インフレを抑えなければいけない。
雇用状況がよく、インフレ率だけが高い場合、利上げするのは正当なこと
高橋)日本も同じはずなのですが、アメリカの中央銀行では、雇用とインフレの両方を見るのです。雇用の方は失業率で見るのですが、4%を切っているくらいだから、これは大丈夫である。ただし、「インフレだけが高い」という状況なのです。
新行)失業率は低いけれど、インフレ率だけが高い。
高橋)雇用がいい状態でインフレ率だけが高いときに、利上げするのは正当な話です。
新行)利上げは。
高橋)それはそれで間違いありません。6月のFOMCの資料には、「年内に1.75%くらいは上げる」と書いてあるのです。ということは、今回の7月で0.75%になるのか、もしかしたら1%になるかも知れない。
新行)7月には。
高橋)そうすると1.75%の残りがあるから、それは0.75%の場合も、1%の場合もあるのです。どちらかはわからないけれど、年内に1.75%まで上げることは決まっているから、今回1%上げたら、残りは0.75%くらいでしょう……そういう形で読むだけです。目先のインフレ率だけが予想以上に高いから、もしかすると1%かも知れないなという予測もあります。
新行)勢いは止まらないですよね。
高橋)いや、こういうものは完全に止まります。利上げしていくでしょう。いつか止まって、下手をすると景気が本当に悪くなり、雇用も悪くなるくらいになってしまうわけです。いまFOMCが考えているのは、雇用を維持しつつインフレ率だけを抑えたいという、非常に微妙なところをやっているのです。
雇用を悪くするまでの利上げはしない
高橋)金融政策的には難しいのだけれど、いまの状況だと0.75%上げても、1%上げても、インフレ率が収まって雇用が悪くならないという状況だと思います。そういう意味では、どちらになっても同じような答えなのですけれどね。
新行)0.75%でも1%でも。
高橋)しかし、雇用を悪くするまでは利上げしない。FRBとして、それだけは確実です。この話で「日本も利上げが」と言うけれど、利上げすると日本は雇用が悪くなってしまう状況です。これによってアメリカ経済が「ガタン」と落ちるということはありません。雇用は確保されているので。
先に経済対策を打っているため、アメリカ経済の底抜けにはならない
高橋)もう1つ、2期連続で四半期のGDPが下がると「リセッション」という言い方をします。景気後退ですね。そうなる確率は高いですが、リセッションになっても消費や設備投資はプラスなので、そういう意味ではあまり大したリセッションではありません。
新行)消費や設備投資がプラスだから。
高橋)一部の人は「リセッション」と書いて大騒ぎするかも知れませんが、よく中身を見れば、個人消費と設備投資はプラスですからね。そんなに大したリセッションにはなっていないと読んでいます。利上げがあると金融業界の人は大騒ぎするでしょうが、雇用が悪くなるようなアメリカ経済の底抜けにはなりません。
新行)雇用が悪くなるようなことはない。
高橋)どうしてアメリカがそんなにいいかというと、先に経済対策を打っているからです。GDPギャップが埋まっている。埋まっているなかでインフレ率が高くなりやすいのだけれど、その上でサプライチェーンの話など、いろいろな要因があるから、多少インフレになっているというレベルです。
日本は失業率が上がってしまうので金利の引き上げをしてはいけない
新行)アメリカの利上げの話が出ると、「日本も」というようなことも言われますが。
高橋)常に失業率とインフレ率の両方を見るのです。失業率を悪化させないレベルで「金利を引き締めない」ということは正しいのですが、日本で直ちにやると、日本では失業率が上がります。日本でやってはいけません。
新行)勝手が違うということですよね。
高橋)全然違う。
新行)設備投資が増えると、雇用がよくなるということですね。
高橋)なぜ金融政策をやると雇用に関係するかという話なのだけれど、金利を安くすると設備投資がやりやすくなるのです。それはそうですよね、借りやすくなるから。しかし、設備投資だけではなく、人も必要です。
新行)人が足りないですよね。
高橋)だいたい設備投資の少しあとに雇用がついてくるのです。そういう意味では金融政策が効くので、金利を上げてしまうと設備投資がなくなるし、人も要らなくなるという形になります。
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