慎重に行わなければならない「摂食障害」の治療法
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年8月3日 11時20分
東京都医師会副会長で精神科「ひらかわクリニック」院長の平川博之氏が7月27日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。摂食障害の治療法について解説した。
摂食障害になったら何科に行けばいいのか
飯田浩司アナウンサー)摂食障害の治療法についてなのですが、診療科は何科にかかればいいのですか?
平川)摂食障害の治療を担当する診療科は、主に精神科や心療内科、小児科だと思います。ただし、最初に気付かれるのは校医の先生やかかりつけの内科の先生、あるいは婦人科の先生などさまざまです。問題は気付かれた先生からどうやって専門医につなげるかということです。
飯田)摂食障害にどうアプローチすればいいのか。専門の先生は少ないのですか?
平川)時間のかかる治療ですし、さまざまなスタッフ体制も必要です。かなり大きな治療の仕組みになってしまうので、精神科や心療内科でも十分に対応できない部分は少なくありません。
心理療法や精神療法、薬物療法や栄養療法等を必要に応じて組み合わせ、治療する
飯田)具体的に治療はどのようなことを行うのですか?
平川)摂食障害は痩せてしまう方が多いですから、治療目標が体重の回復や栄養摂取ということになってしまうのですけれども、治療は心と体の両面の問題と向き合うことが肝要になります。
飯田)カウンセリングなども重点的にやることになりますか?
平川)具体的な治療法としては、心理教育や心理療法。あるいは精神療法や薬物療法、栄養療法等が必要に応じて組み合わされます。
認知行動療法や家族療法を行うことも
飯田)心理療法というと、行動を変えることになるわけですか?
平川)心理療法は我々が受け持つのですけれども、認知行動療法といった形で、認知のゆがみを直し、行動に反映していく。あるいは家族間の問題がある場合もありますから、家族療法なども使うことになります。
新行市佳アナウンサー)ご家族に「このような食事を出してください」というような指導をすることもあるのですか?
平川)ご本人は自分の好きなものしか食べませんから、食事のバランスを考え、改善することなども相談します。
危険なほど痩せてしまっている場合は強制入院となる場合も
飯田)基本は外来での通いになるわけですか?
平川)そもそもご本人に「病気だ」という意識が低いですし、「通院したい、治療したい」という動機が低いので、まずは外来でフォローしていくということになります。
新行)体重が著しく減っているような状態であれば、入院も考えられますか?
平川)病気の勢いが強いとき、あるいはうまくいっていないときというのは、体重の回復が難しく、痩せていきます。30キロを切ることもあります。私は20キロ台の人を見たことがありますけれど、見るだけで「危ないな」と、鬼気迫る感じがしました。そのような場合は申し訳ないですけれども、本人の意思は押さえておいて、入院させざるを得ない。命あってのものですから、命を救うための入院が強制的になる場合もあります。非常に残念ですけれども。
患者との信頼関係ができるまで体重などには触れない
飯田)心理面での向き合い方ですけれども、自己肯定感が低い方が多いという話でした。しかも自分が病気だと思っていないことを考えると、「あなたは病気なのだから」というようなことを言えば、逆効果になってしまいますか?
平川)体重減少の危険や、食べていないというポイントをいきなり言うのは、それだけで相手が萎えてしまいます。ですから、ある程度の信頼関係ができるまで、その点にはダイレクトに踏み込んでいかないということですね。
飯田)まずは話し相手に、というアプローチですか?
平川)内科の先生と同じように、まずは「体のことを心配しているのだよ」と、あるいは「体の病気はこういうことも生んでしまうから、体に気を付けよう」などと話します。いきなり心に直接突っ込んでしまうと、引かれてしまいますから。
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