「クラシックカーを電気自動車に」 車を愛するグループ「SCCC」の活動
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年8月24日 17時25分
![「クラシックカーを電気自動車に」 車を愛するグループ「SCCC」の活動](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_381315_0-small.jpg)
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
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エンジン車として整備を終えたビートル(写真提供:SCCC)
この夏、車に乗ってお出かけした方も多いと思いますが、ハイブリッド車が多いなか、電気自動車もよく見かけるようになりました。
たまに昭和生まれの「旧車」が走っていたりします。フロントグリル、バンパー、ヘッドライト、エンブレム……そして轟くようなエンジン音! 「カッコいいなぁ」と思いますよね。
ところが、憧れのクラシックカーを手に入れても、維持が大変なのだそうです。故障したら部品がなく、騒音や環境問題からもいい顔をされません。燃費が悪く、自動車税も重課税されて安くない。
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SCCCのメンバーと(前列の左が村井伸行さん) 写真提供:SCCC
昔の車にはガソリンと空気を混ぜて霧状にする「キャブレター」という装置があります。いまは電子制御ですが、キャブレターの車はしばらく乗らないと故障の原因にもなるそうです。ガソリンは食う、故障はする、お金はかかる……車いじりが好きで、余裕のある人でないと旧車は夢のまた夢です。
「それなら電気自動車にしてしまおう」という車好きのグループがあります。四国・香川県高松市でクラシックカーのEV化に取り組む、「讃岐クラシックコンバートEVクラブ」です。
通称「SCCC(エス・トリプルシー)」。会員は15名で、会長の村井伸行さんは、電化製品などから発生する電磁波を計測する外郭団体の技術者です。
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ネットオークションで購入したばかりのビートル(写真提供:SCCC)
村井さんは49歳で、いわゆるスーパーカー世代。小学生のころ夢中になったのが、ランボルギーニ・カウンタックでした。近未来的なデザイン、跳ね上がるドア……少年の心がワクワクさせられました。
大学生になると、アルバイトで貯めたお金で国産車を購入。就職すると、憧れのイタリア車「アルファロメオ」を手に入れます。
「イタリア車はよく故障するため、給料のほとんどを車につぎ込みました。部品がないので廃車2台分から“部品取り”をしましたよ」
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電気自動車に整備中のビートル(写真提供:SCCC)
その後、結婚して子どもも生まれ、同じアルファロメオですがワゴンタイプの車に買い替え、ドライブを楽しんでいました。ところが、お子さんが4歳のとき、病気で亡くなってしまいます。
「息子との思い出はたくさんあるんですが、振り返ってばかりではなく、これからは自分の人生を考えていこうと思いましてね。人生設計の分岐点でもあり、生命保険を見直して、死亡保障を解約したんです。そのおかげで、ある程度まとまったお金が入りました。『このお金でやりたかったことをやってもいい?』と家内に相談したら、『いいよ』と言ってくれたんです」
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電気自動車用の充電スタンドも増えている(写真提供:SCCC)
車好きの村井さんがやりたかったことが、「コンバートEV」でした。コンバートEVとは、エンジンやマフラー、燃料タンクなどを取り除き、モーターやバッテリーを取り付けた電気自動車のことです。
「1人でやってもつまらない」と、村井さんが仲間を募ったところ、旧車を愛するおじさんたちが14人集まりました。本部は村井さんの自宅のガレージです。2021年2月にクラブが発足し、「どんな車をEV化しようか?」と車選びが始まりました。
「愛着がわく車がいい」「可愛い車がいい」「いま走っている車は対象外」……いろいろな意見が出た結果、ネットオークションで探して落札したのが、1974年式のフォルクスワーゲン・ビートルでした。
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SCCC本部のガレージ(写真提供:SCCC)
「落札価格は50万円でしたね。車検は切れていて、エンジンをかけると白い煙がもくもく上がり、ブレーキは壊れ、床は錆びて穴がいくつも空いていましたよ」
スクラップ同然の車を、まずはエンジン車として走れるよう、週末にメンバーがガレージへ集まって少しずつ修理していきました。
「エンジン車としてのビートルがどんな車だったかを知ってから、EVにしようと思ったんです。48年前の車ですが、しっかり造られていて、さすがドイツ車だと感心しましたね。修理を終えたビートルにみんなで乗って楽しみました。世界で愛された理由がよくわかりましたね!」
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運輸支局で電気自動車の構造変更を受ける「GENNAi」(写真提供:SCCC)
今年(2022年)1月、EV化に向けての作業が始まりました。
「バッテリーは、スマホと同じリチウムイオンバッテリーを使うんです。重さは80キロほどあるので、発火や火災の危険がないように、いろいろと規制があります。運輸局の許可が下りるまで山あり谷ありでしたね。でも日本人は、規制があると強いんです。型枠にはめられると、その枠のなかで頑張ってしまう。僕たちもそうでしたね」
ようやく車検に通り、今年6月にテスト走行が行われました。標高差450メートルでも十分耐えることがわかり、次の目標は四国一周です。
電気自動車として生まれ変わったビートルには、名前が付けられています。香川県出身でエレキテルをつくった平賀源内の名にちなみ、「エレクトリック ビートル ゲンナイ(GENNAi)」と命名されました。おじさんたちの夢を乗せて走ります。
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