防災知識を「カードゲーム」で学ぶ 開発には「避難所生活の経験者」も参加
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年9月7日 17時20分
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
宮城県仙台市にある「くらしの学びサポートオフィス HumanBeing」は、地域や学校で防災講座を開いたり、災害ボランティアのサポートに当たる団体です。代表の菅原清香さんは、宮城県内を中心に全国を巡りながら、防災知識の普及に当たっています。
宮城県では、1978年の宮城県沖地震以来、熱心な防災教育が行われてきました。菅原さんも小さいころから学校の授業などを通じて、「いつか宮城県沖地震がくる」と云われ続けながら育ってきた1人。地元の福祉大学に進学した際も、友達に誘われて「防災サークル」に入部しました。
学生時代には、最大震度6強、23人の死者・行方不明者を出した「岩手・宮城内陸地震」が起こりました。菅原さんも、被害が大きかった栗駒山の麓でボランティア活動に参加。「足湯」を開設し、癒しを求めていた地元の皆さんに大変喜ばれました。
しかし、菅原さんのなかに1つの疑問が湧きあがります。
「宮城県沖地震は、およそ30年に1回のペースで起こると言われている。防災をボランティアだけではなく『仕事』にできないだろうか?」
そんな菅原さんに対し、阪神・淡路大震災など、これまで被災地で支援活動に取り組んできた「先輩」の皆さんがヒントをくれました。
「防災や災害支援を生業にしている方は各地にいます。防災は立派な仕事ですよ!」
その言葉に背中を押された菅原さんは、大学卒業後、宮城を離れて地域防災活動に取り組むNPO法人に就職。東日本大震災には、その法人の一員として支援活動に従事しました。荒れ果てたふるさとで被災した皆さんに話を聞くと、意外な声が上がりました。
「地震の直後、地元の中学生や高校生に助けてもらったのが本当にありがたかったよ」
被災したとき、全国からの応援が入る前のサポートがどれだけ大切か痛感した菅原さんは、こう心に決めました。
「若い世代の防災や助け合いの心を育む場を、ふるさと・宮城からつくっていこう!」
菅原さんは、いまから10年前に仙台へ戻り、腰を据えて東日本大震災で被災した皆さんのサポートに携わるようになりました。2016年には「くらしの学びサポートオフィス HumanBeing」を立ち上げ、いざというときのために防災活動へ軸足を移していきます。
やがて震災からの時間が経過するにつれ、宮城県内でも「震災の記憶が薄れてしまった」と話す人が増えてきたことに気付きます。震災当時のことを思い出して話す人も減ってきてしまいました。菅原さんは、震災の記憶を何か「モノ」にして残したいと考え、ふと思い立ちました。
「ゲームで防災を考えてみたら面白いかも……」
菅原さんは防災教室で学校を巡るうちに、ただ話して伝えるのではなく、体験型の授業を行った方が子どもたちの心に響くのではないかと感じていました。ゲームの開発プロジェクトには、これまでともに支援活動に取り組んできた人たちや、震災のときに避難所生活を体験した人にも加わってもらいました。
こだわりは、防災知識が学べて面白いゲーム。菅原さんは仙台市内のボードゲームのお店にも通って、ありとあらゆるゲームを体験しながら開発していきます。およそ2年半の歳月をかけて、ついに2つのカードゲームが出来上がりました。
1つ目の「防災すごろく」は、震災直後の「助け合いの心」を学ぶゲーム。サイコロを振り、自宅や避難所、災害ボランティアセンターを巡ってゴールを目指します。
例えば避難所では、とても親切だけれど「いびきがうるさい」おじいさんと出会う設定が盛り込まれていて、避難所のリアルな風景も感じられます。
2つ目の「持ち出し品ゲーム」は、「持ち出し品袋」の中身を考えていくゲームです。トランプのようにカードをめくりながら、必要なものをそろえていきます。高齢者や外国人などの設定もあって、子どもたちが自分とは立場の違う人にも関心を持てるような工夫が施されています。
ゲームの開発から約1年。菅原さんも地域や学校の防災教室などで、この防災ゲームを活用しています。子どもたちが楽しんでいる姿に「ゲームをつくってよかった」と感じる菅原さん。
「まだまだ多くの人たちに、ゲームを通じて防災について考えて欲しいです」
宮城から全国へ、菅原さんの防災への思いはますます膨らみます。
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