10年前とは異なる「中国が持つ日本への複雑な感情」 日中国交正常化から50年
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年9月29日 17時30分
毎日新聞・中国総局長の米村耕一氏が9月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。国交正常化から50年となる現在の日中関係について、現地・北京の状況を交えて語った。
日中国交正常化から50年
日本と中国の国交正常化から9月29日で50年となる。岸田総理と習近平国家主席は経団連などが都内のホテルで共催する記念行事に祝電を送る。
飯田)日中国交正常化から50年という節目の日ですが、北京市内の様子などはいかがでしょうか?
米村)中国では10月1日から国慶節の連休ですので、日中国交正常化というよりも、国慶節のお祭りの雰囲気が少しずつ出ています。
国慶節にも関わらず、党大会を控え、北京市内を出ることができない市民
米村)ただ、10月16日から中国共産党の第20回党大会が控えていて、そちらの方が中国にとっては重要なイベントです。そのため、北京への人の出入りを新型コロナ対策でかなり制限しているのです。
飯田)党大会を控えて。
米村)私たちもいま、北京市の外へ出ると自宅に戻れなくなる可能性があります。本来は旅行の書き入れどきのシーズンですが、旅行もできないということで、市民のストレスは高まっている状況です。
中国にとっての日本は「周辺にある大事にしなければならない国の1つ」
飯田)中国の方々が日本を見る目が、ここ10年~12年で変わった部分はありますか?
米村)私は2010年~2013年に中国にいて、2020年にまた中国に戻ってきました。その間、中国にとって日本は小さくはなったのですが、小さくなった分、中国から見て日本が怖いという気持ちは、以前のように(日本の)軍国主義復活への怖さというようなものは減ったと思います。「周辺にある大事にしなければならない国の1つ」という扱いに変わった部分もあると感じます。
10年前は中国の対立感情のターゲットは日本だけ ~いまは欧州、オーストラリア、カナダも嫌われ、日本への感情は変わっている
日本経済新聞コメンテーター・秋田浩之)私が東京から見て関心があるのは、いま米中関係が緊張していますよね。そのなかで、中国はどのように日本に接しようとしているのでしょうか? あまりにも日本に厳しく出ると、日米同盟の関係が強まってしまう。しかし、逆に日米同盟への警戒心も強いので、その分、日本に対しても警戒するという両面があると思うのですが。
米村)「日米同盟は仕方ない」と中国は思っているはずです。他方、いまの中国の立場は、米国との対立も強くなっていますが、中国に対する欧州の考え方も悪化しています。これは10年前に私が北京で感じていた状況とはまったく違います。10年前の2012年は反日ムードが起きた時期でしたので、中国の対立感情のターゲットになっていたのは日本だけでした。
飯田)ターゲットになっていたのは日本だけだった。
米村)しかし、次に中国へ来てみると、BBCが嫌われている、オーストラリアが嫌われている、カナダが嫌われているのです。中国とヨーロッパやカナダ、オーストラリアとの関係が悪くなっている。多分中国からすると、いろいろなところで対立が悪化しているので、日本との対立はもう少し管理しなければいけないという感覚があるのではないでしょうか。
日中関係に加えて日韓関係も悪化すると「大国としての中国の面子が立たない」
秋田)そういう意味では、いまは日中関係をもう1回安定させるチャンスでもあるのでしょうね。
米村)中国の専門家の話を聞いていても、それを実感します。2013年に中国は「周辺外交工作座談会」を習近平さんが開いて、周りの文化的、歴史的に親近感の存在する国々に対しては管理しなければいけないとしています。例えば、日本と韓国は近くにある国ですが、(日中関係に加え)日本と韓国との関係が両方同時に悪化すると、中国の「大国としての面子が立たない」という言い方をするのです。そういう部分もあるのだと思います。
北朝鮮が新たにミサイルを撃った背景にある「経済5ヵ年計画」と「国防5ヵ年計画」
飯田)米村さんは長らく北朝鮮も取材していらっしゃいます。9月28日、新たにミサイル2発が日本のEEZ外に落下しましたが、この意図をどう見たらいいでしょうか?
米村)北朝鮮は2021年に「国防発展5ヵ年計画」を発表していて、それに沿って5年以内に超大型の核弾頭をつくらなければいけません。また、1万5000キロを射程圏内に報復打撃能力を高度化するというような目標を立てています。その目標に向けて兵器開発を進めているので、その一端だと思います。
飯田)計画の一端であると。
米村)重要なのは、2021年には「経済5ヵ年計画」と「国防5ヵ年計画」の2つの計画をつくっています。経済5ヵ年計画の中身は、はっきりとはわからないのですが、こちらにいる日本企業の人たちと話していると、国際社会による経済制裁の打撃を受けずに回していけるような、「持続的な経済システム」をつくりたいのだろうと言います。
飯田)経済制裁の打撃を受けずに回せる持続的な経済システム。
米村)外と貿易していろいろ動くのではなく、自分たちだけでやっていく。そのなかで武器開発を行うということです。しばらくは家に鍵をかけて他の人たちを相手にせず、兵器を積極的につくるような状況が、あと数年続くのではないでしょうか。
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