日本のマスコミが「バーナンキ氏のノーベル経済学賞受賞」をまともに報道できない理由 高橋洋一が解説
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年10月12日 21時1分
![日本のマスコミが「バーナンキ氏のノーベル経済学賞受賞」をまともに報道できない理由 高橋洋一が解説](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_392163_0-small.jpg)
総理表敬に訪れ、官邸を出るバーナンキ前FRB議長=12日午後、首相官邸
数量政策学者の高橋洋一が10月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ノーベル経済学賞の受賞が決まったベン・バーナンキ氏について解説した。
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総理表敬に訪れ、官邸を出るバーナンキ前FRB議長=2016年7月12日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社
ベン・バーナンキ氏がノーベル経済学賞を受賞
飯田)ベン・バーナンキ氏ら3人について、2022年のノーベル経済学賞の共同受賞が決まったということです。
高橋)この20年、バーナンキさんの話を私は日本でよくしていたのですが、その度に批判されました。
飯田)いわゆる主流派経済学と呼ばれるものに対して、みんな批判的だった。
高橋)いまはひっそりとしています。ノーベル賞を受賞したのですからね。
「金融緩和は禁じ手」と言われていた
飯田)「金融緩和は禁じ手であって、お金をばら撒くことなどやってはいけない」と言われていました。
高橋)みんな言っていたでしょう。その人たちは、いまどうしているのでしょうか。マスコミもまともに報じていません。
飯田)「異例だ、異例だ」という話が多いです。
高橋洋一氏とベン・バーナンキ氏との出会い
高橋)私がバーナンキさんと知り合ったのは、プリンストン大学に行ってからです。
飯田)プリンストン大学の教授として、バーナンキさんがいたということですか?
高橋)私がプリンストン大学に行ったとき、バーナンキさんは学部長でした。
飯田)学部長。
高橋)学部長にはいろいろ書類を出さなければならないから、接触が多かったのです。
飯田)事務手続き的なものですね。
高橋)事務手続きに行くと、経済学の話をするのです。日本の金解禁の話を最初にしました。金解禁とは、金本位制の復帰ということです。城山三郎さんの『男子の本懐』という本があるでしょう。あれは「金解禁が素晴らしい。いい政策を命懸けでやった」という本なのです。財務省(当時は大蔵省)にいたとき、感想文を書かされました。
飯田)財務省にいたときに。
高橋)当時、「金解禁はいい話かどうかわからないのに、命を懸けるのは利口ではない」と書きました。そんなことを書いたのは、財務省のなかで私1人だけだったのです。
飯田)高橋さんだけ。
高橋)私はそれが気になっていたので、バーナンキさんに聞いたのです。そうしたら自分の論文を渡してくれて、「洋一、お前が正しいよ」と言われました。それからの付き合いです。
飯田)昭和恐慌に対するところで、当時の蔵相だった井上準之助が。
高橋)そういうマニアックな話でしたが、彼はよく知っていました。
飯田)それによって、引き締めを行ったのと同じになってしまったという話ですか?
高橋)金解禁をしたのに引き締めになって、「これは間違いだ」という話を最初にしてくれたのです。そして、自身の「金本位制になっている国ほどダメだった」という論文を読ませてくれました。
飯田)1920年代の世界恐慌のとき、管理通貨に移行した国の方がうまくいったと。
高橋)そのことを言ってくれたのです。最初はアカデミックな話でした。
リーマンショックに活きたバーナンキ氏の理論
飯田)バーナンキさんが研究していたテーマが「恐慌に対する銀行システム」の話であり、金本位制へ復帰せずにきちんとお金を積んで、流動性を確保した国の方がよかったという。それが、まさにリーマンショックに活きたわけですね。
高橋)まったく一緒ですね。だから私はその話を日本でやりたかったのだけれど、リーマンショックのときには日銀に白川方明さんという、まったく真逆の人がいたのです。
飯田)米連邦準備制度理事会(FRB)がベン・バーナンキさんで、日本が白川さん。
高橋)すごい差ですね。ここが国力だと思いました。要するにアメリカはあのような事態でも、バーナンキさんのような専門家がいて、きちんと対応できる。日本はまったく真逆でした。
アメリカは大胆に金融緩和したが、日本はしなかった ~日本は円高になり、雇用率も低下
飯田)「ヘリコプター・ベン」などと言われたくらい、マネーを流し込んだ。一方で白川日銀は緩和しませんでした。
高橋)大きな差ができてしまったのです。
飯田)ものすごい円高になり、雇用もダメになって、日本の製造業が次々と外に出ていってしまった。苦しみましたね。
高橋)あれは悪夢のような話でした。
コロナ禍での日本の対応はベン・バーナンキ氏がルーツ
高橋)そのあと、もう一度チャンスがあったのです。東日本大震災のときです。しかし、民主党政権だったのでできなかった。
飯田)当時の政権が。
高橋)そのときに安倍晋三さんと話をして、「こういうやり方があるのですよ」と言ったら、興味を持たれたのです。
飯田)安倍元総理に。
高橋)そして安倍政権になったとき、リーマンショックでベン・バーナンキさんが言ったような話ができたのです。「これでやりましょう」と言って。だからコロナショックのときの日本の対応は世界でもベストで、失業率がほとんど上がりませんでした。
飯田)アベノミクスからのコロナ対応などのルーツには、ベン・バーナンキ氏がいるのですね。
高橋)私の理論基礎はほとんどそうです。
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