「安いコスト」が焦点の民間ロケットにどう対抗していくのか 日本の宇宙開発のあり方
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年10月27日 17時45分
![「安いコスト」が焦点の民間ロケットにどう対抗していくのか 日本の宇宙開発のあり方](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_395321_0-small.jpg)
【H3ロケット初号機公開】報道陣に公開されたH3ロケット初号機の中心部分(1段目)前で報道陣の取材に応じる(左から)三菱重工業の奈良登喜雄プロジェクトマネージャー、JAXAの岡田匡史H3プロジェクトマネージャー=23日午後、愛知県飛島村の三菱重工業飛島工場
東京大学公共政策大学院教授・政治学者の鈴木一人が10月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。打ち上げが失敗した「イプシロンロケット6号機」をはじめとする日本の宇宙開発について解説した。
![](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2022/10/10000000000000088176_20221027163504010841_P210124000065RS.jpg)
大型ロケット「H3」初号機公開 取材に応じる、三菱重工業・奈良登喜雄プロジェクトマネージャーら=2021年1月23日午後、愛知県飛島村の三菱重工業飛島工場 写真提供:産経新聞社
イプシロンロケット6号機
10月12日に打ち上げが失敗した「イプシロンロケット6号機」について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、機体の姿勢を制御するガスジェット装置が機能しなかったことが原因だったと、事故原因などを調べる文部科学省の有識者委員会に報告した。JAXAは今後、原因の特定を急ぐ考えを示した。
飯田)一方で新型基幹ロケット「H3」1号機のエンジン最終燃焼試験は、計画通り11月に実施する予定だそうです。日本の宇宙開発について、鈴木さんはご専門でもいらっしゃいます。どうご覧になりますか?
鈴木)一応、宇宙政策委員会にも携わっていますので、どちらかと言うと政策に関わるような……。
飯田)ある意味、なかの人。
原因が究明されても、すべてがうまくいくわけではないロケットの難しさ
鈴木)ロケットというのは、難しい技術であることは間違いないのですが、イプシロンロケットに関しては、これまで成功してきたのです。しかし、ロケットが成功するのは偶然の要素もあります。
飯田)そうなのですか。
鈴木)どこかに問題があっても、何らかの理由でうまくいってしまうことがあるのです。逆にシステムとしては動くのだけれど、パーツとしておかしくなることもある。スペースシャトル・チャレンジャー号が失敗したときも、あれは最初の失敗ではないのです。(機体自体は)何度も飛んでいて、うまくいっていたのだけれど、Oリングという1つの部品のせいで失敗したと言われています。
飯田)Oリング。
鈴木)いままではうまくいっていたのだけれど、たまたま部品が悪さをすることもあるので、「原因が究明されたからといって、すべてがうまくいくわけではない」という難しさがロケットにはあります。不思議な特性だとは思います。
飯田)ロケットの特性が。
鈴木)残念なのは「H3」です。新しい基幹ロケットなのですが、予定では既に打ち上がっているはずなのです。
飯田)そうなのですか。
鈴木)これもエンジントラブルがあったので、初の打ち上げが延期になっています。
1段目を繰り返し使えるスペースXのロケット
鈴木)宇宙開発分野で大きな変化が起きているのは民間企業です。イーロン・マスクさんのスペースXという会社があります。スターリンクも有名になりましたが、彼はロケットも手掛けていて、いままでの「H3」やイプシロンの価格と比べると、はるかに安いのです。
飯田)はるかに安い。
鈴木)はるかに安い値段で打ち上がる。しかも、ロケットは複数段あって、燃料を使い終わったら切り離していくのですが、これまでは1段目のロケットを使い捨てにして海に捨てていました。ところが、スペースXはロケットの1段目を回収できるようにしたのです。
再利用できるのでコストがその分安くなる
鈴木)すると、1段目を繰り返し使えるので、再利用できるため1段目のコストが安くなっていくのです。新しいエンジンや新しい機体をつくらなくてもいいので、その分を安くできる。しかも、再利用できるのは1回だけではなく、既に10回くらい使っている機体もあります。要するに10機分を1機でまかなっているわけです。
飯田)やればやるほど、コストダウンができる。
鈴木)「規模の経済」効果が出るので、打ち上げれば打ち上げるほど安くなっていくという、恐ろしいロケットなのです。
国が事故究明すると完璧を期するまでやるのでコストがさらに上がってしまう ~民間との競争が辛くなる
鈴木)イプシロンも「H3」もそうなのですが、いずれも1段目を使い捨ててしまうので、どうしてもコスト的に追いつけなくなってしまうのです。そういう意味では、事故究明もそうですが、国が事故の究明をすると完璧を期すまで行われるため、さらにコストが上がっていくのです。
飯田)いつまでたっても打ち上げられない時期ができてしまう。
鈴木)時期も長くかかりますし、お金もかかることになると、民間で「失敗してもいいから行くのだ」という感じで進めていくロケットとの競争がしんどくなってくるのです。
安くなることをメインフォーカスに置いた民間ロケットにどう対抗していくのか
鈴木)我々もロケットのあり方として、安くなることをメインフォーカスに置いた民間ロケットに、どう対抗していくのかを考えなければいけない。
飯田)民間のロケットと。
鈴木)それがこれからのロケット開発の大きな課題です。技術的に難しいので、「完璧を期して失敗しないように、大きなお金をかけて開発する」という方法が許されなくなる時代が、これから来るのではないかと思います。
堀江貴文氏が携わるインターステラ
飯田)堀江貴文さんなど、さまざまな方々が参入していますが、いかがですか?
鈴木)堀江さんが携わっているのはインターステラという会社なのですが、つくられているのは小型衛星を打ち上げるためのもので、「H3」やイプシロンとはサイズが違うのです。
飯田)サイズが違う。
鈴木)マーケットが違うので、お客さんも違います。それはそれで1つのマーケットなのですが、世界的に見ても小型ロケットはアメリカでもヨーロッパでも開発されていて、ここはここで競争が厳しいところだと思います。
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