物価高のいまこそ“バブル期”のような「消費者マインド」を刺激する政策が必要
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年11月2日 17時30分
![物価高のいまこそ“バブル期”のような「消費者マインド」を刺激する政策が必要](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_396656_0-small.jpg)
ジャーナリストの佐々木俊尚が11月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。物価高でさらに冷える消費者マインドの問題について解説した。
![](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2022/11/20221027_reiwaRS.jpg)
2022年10月27日、挨拶する岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202210/27rrinchou.html)
物価が上がっているのはエネルギー関連と食料関連 ~サービス部分が値上がりしていないことが問題
飯田)政府からの節電要請が決まりましたが、 “アバワク”さんからツイッターで、「節電と言われても、すでに節約のための節電をしているのですけれどね」といただきました。電気料金をはじめ、エネルギーに関する料金が上がっていて、家計的には厳しいという話があります。
佐々木)「物価が上がっている」と言われているのですが、実際に上がっているのはエネルギー関連と食料関係です。いわゆるウクライナ危機の影響を受けているものだけです。指摘されている最大の問題は、サービス部分が値上がりしていないということです。
食材のコストが上がり、人件費は上がらず ~物価は上がっても人件費は上がらない
佐々木)お店で1000円の食事を提供していたところ、食材が100円値上がりしたので、1000円から1100円にしたとします。その場合、値上がりしたのは原材料の部分だけであって、従業員に払う人件費のコスト部分は一切上がっていないのです。
飯田)確かにそうですね。
佐々木)そうすると、物価が上がっても賃金の上昇にはつながらないという問題が起きてしまいます。アベノミクスから始まって、日銀のリフレ政策は「物価を上げることによって、最終的に賃金も上がる」というロジックでやってきたわけです。そのロジックで物価が上がったにも関わらず、(賃金上昇には)至っていないというのが現状の問題です。
飯田)物価は上がったが賃金は上がらず。
大きいのは「消費者マインド」の問題
佐々木)なぜ上がらないのか。議論され尽くしていて、共有されている認識があまりないというのが問題だと思うのですけれど、1つの見方としては、「消費者マインド」の問題が大きいのではないかと思います。
飯田)消費者マインドの問題が。
佐々木)いま物価は上がっているのだけれど、テレビをつけると、「いまだからこそ屑野菜を使って美味しい料理をつくりましょう」というような……。
「人件費を削って対応する」 ~社会に染みついたデフレマインド
佐々木)そのようなことをバラエティやワイドショーでやっている。あとは「企業努力で値上げを抑制しました」と言いますが、「企業努力」と言っても人件費を削っているだけだろうという。原材料は上がっているわけですから、値上げせざるを得ないのに、値上げしないで抑制するには、人件費以外、削るところがないわけです。結局、人件費を削ることで値上げを抑制するのです。
飯田)人件費を削って。
佐々木)まさにデフレマインドです。平成30年間のデフレマインドがすっかり我々の社会に染みついてしまっている。「人件費を削ってでも対応するしかない」というマインドになってしまっているのです。
飯田)デフレマインド。
佐々木)バブル期には、値上がりしても「それ以上に給料を上げて、もっと楽しい生活を送りましょう」という発想があったわけです。だから「いけいけドンドン」だったのですが、それがよかったかどうかは別にしても、バブル期くらいのマインドをもう1回我々は取り戻さないと、永久に賃金が上がらないのではないでしょうか。
飯田)縮小均衡にずっと陥り続けるわけですよね。
消費者マインドを刺激する対策が必要
佐々木)政策側にも問題があると思います。例えばガソリン代はいま、だいたいレギュラーで170円台くらいです。
飯田)1リットル当たり。
佐々木)昔に比べるとずいぶん高いイメージですが、あれは補助金を石油会社などに出していて、かなり抑えているのです。補助金をやめてしまうと200円を突破するくらいなのだろうと思いますが、ガソリンを日常的に使う側から見ると「高いな」という印象しかない。政府が予算を使って補助金を出し、170円台に抑えているというようには見えないのです。残念ながら。
飯田)使う側からすれば。
佐々木)消費マインドからすると、「ガソリンは高いから抑制しよう」という気持ちにしかならないわけです。「政府が20円~30円分抑えてくれているのだから、ガソリンをバンバン入れていいか」という気持ちにはなりません。
飯田)消費マインドとして。
佐々木)電力の再エネ賦課金もそうです。10月末の総合経済対策が出る前に、再エネ賦課金をやめるのではないかという話がありました。あれは民主党政権のときに菅(直人)元首相が始めたものですが、年間だと1家庭1万円くらいで、かなりの金額なわけです。それが重石になっている。「ついにやめるか」という話だったのですが、蓋を開けてみたらやめませんでした。
飯田)そうですね。
佐々木)やめない代わりに、再エネ賦課金相当の金額を補助するという形になってしまったわけです。あれも結局、やめると言うと、「やめるインパクト」がニュースとしてあるわけです。すると「年間1万円も浮くのだ」というイメージになるのだけれど、やめずにその部分を補填するだけだと、消費マインドに響かないですよね。安くなればいいというわけではなく、「安くなった」というインパクトをニュースとして与えるような、消費マインドの刺激策が必要なのではないでしょうか。
みんなが積極的に使う「全国旅行支援」のクーポン
飯田)全国旅行支援も、宿泊料金の補助もありますが、クーポンでもらうことのインパクトが大きくて、「滞在中に使わなければ」と喜んでみんな使っているという話があります。
佐々木)現金だと溜め込んでしまうけれど、クーポンだと「使わなくては」と思う。
飯田)しかも、滞在中の1~2日で使わなければいけない。
佐々木)滞在中でなければ無効になってしまうから、ああいう形は大事だなと思うのです。
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