需要が高まり価格判断が上がっているいま、なぜ「増税」をアナウンスするのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年12月15日 17時30分
![需要が高まり価格判断が上がっているいま、なぜ「増税」をアナウンスするのか](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_405591_0-small.jpg)
前日本銀行政策委員会審議委員でPwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士が12月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。税制改正大綱について解説した。
![](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2022/12/20221214nourin_01RS.jpg)
2022年12月14日、挨拶する岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202212/14ns_soukai.html)
「エコカー減税」延長、「1億円の壁」是正 ~税制改正
飯田)税制改正大綱の中身の部分ですけれども、「エコカー減税」制度を延長するということです。どのくらい懐に影響するのですか?
片岡)これはエコカーを買ったときの減税ですから、買わない方には恩恵がないわけです。昨今の環境配慮という流れを受けて、延長しようということだと思いますが、購入する場合には恩恵があるという話です。
飯田)確かに元手が必要ですね。その意味では、NISAの非課税分も変えるのだと。1800万円に拡充するという話もありますが、これも元手がないとできませんよね。
片岡)そうですね。
デフレから完全に脱却してからでも遅くない「1億円の壁」の是正 ~「資産所得倍増」という話はどうなったのか
飯田)この辺りは「懐をあたためる政策の1つではある」ということですか?
片岡)そうですね。あとは「1億円の壁」の是正という話も、ある意味、超高額所得者への負担を増やそうという意向です。従来ですと負担率が減ってしまうという話もありましたから、ここを是正しようというのは、方向性としては理解できます。
飯田)方向としては。
片岡)ただ、いまやるべき話なのかという気はします。デフレから完全に脱却して、価格がしっかりと経済のなかに根付く。価格変化がものの品質などを通じて、経済を動かしていくような状況になってからでも遅くないと思います。
飯田)いまやるべき時期かと。
片岡)「資産所得倍増」の話はどうなってしまったのでしょうか。
飯田)そうですよね。
片岡)個人的にはいまのタイミングで言われると、「夢がないな」と思ってしまいます。
飯田)資産所得倍増と言っておきながら、金融所得課税をするのかというような話も出てきますからね。
片岡)そうですね。
日本の交易条件の悪化度合いが大きく縮小してきている
飯田)価格の部分で言うと、企業物価は伸びてきています。11月の企業物価指数は、前年同月比で9.3%上昇でした。これもやはり、海外からのコストが上がっているということですか?
片岡)そうなのですけれど、ただ、足元では伸びのなかで円安効果が是正されたことと、世界的に原材料価格の上昇が止まり、緩やかに低下しています。その状況を受けて、伸び率自体はややマイルドになってきているのです。
飯田)マイルドに。
片岡)日本全体が負担している交易条件も、前年比では悪化しているのですけれど、悪化度合いは大きく縮小してきています。このような状況は、交易条件の悪化に苦しむ輸入系の会社を中心に、朗報なのではないかという気はします。
需要が高まり、資源価格上昇等で価格判断が上がっている ~この流れを止めないこと
飯田)アメリカやヨーロッパでは、来年(2023年)に向けてインフレは一服するだろうと。一方で、経済の方も拡大ペースが緩むのではないかという話もありますが。
片岡)それもあります。例えば昨日(12月14日)出た日銀短観を見ても、やはり業況判断DIのようなところで言えば、製造業の業況は少し落ちてきています。他方でサービス業系、非製造業を中心に拡大して、「全体としては拡大」という流れなのだと思います。企業が見ている物価見通しは、5年後の中期で見て、いまちょうど全規模・全産業で2%なのですね。
飯田)2%。
片岡)この流れを続ける必要があると思います。なぜそうなったのかと言うと、要は原材料価格が上がるなかで、企業から見た価格判断が、販売価格・仕入れ価格ともに大きく上昇している。
飯田)販売価格と仕入れ価格が上昇している。
片岡)そのなかで「需要超過」の状態が近年類を見ないほど高まっているのです。従来ですと日銀短観で、ずっと需給判断DIが供給超過の方向だったのですが、いま少しだけ需要超過になって、足元ではゼロなのですが、プラスからゼロくらいの状態なのです。
飯田)プラスからゼロ。
片岡)需要の高まりと資源価格の上昇等々で価格判断が上がっている。そのなかで企業の目線が「物価2%」という方向感に向かってきている状況なので、この2つを止めないことが大事です。
内需が立ち上がりつつあるいま、なぜ増税をアナウンスするのか ~タイミングが悪すぎる
飯田)少しずつ日本国内の内需が立ち上がりつつあるということですか?
片岡)そうですね。来年以降はエネルギー価格や原材料価格が一服しますので、企業の価格判断自体も上り調子だったところが、少しピークアウトしていくと思います。そうなると結局、総需要の拡大、賃上げが日本経済にとっては非常に重要なのです。この重要な局面のなかで、なぜ増税をアナウンスするのかというところが、いま最も問われていると思います。タイミングが悪すぎる。
飯田)悪すぎる。
片岡)1年延ばしてもまったく遅くはないですね。
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