ウクライナ情勢で、中東依存に戻ってしまった日本のエネルギーリスク
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年12月21日 17時30分
![ウクライナ情勢で、中東依存に戻ってしまった日本のエネルギーリスク](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_407138_0-small.jpg)
ロシア・サハリン州の液化天然ガス基地(上)から運搬船に延びるパイプ=2009年(共同)
ジャーナリストの佐々木俊尚と筑波大学教授の東野篤子が12月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日本の経済安全保障について解説した。
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ロシア・サハリン州の液化天然ガス基地(上)から運搬船に延びるパイプ=2009年(共同) 写真提供:共同通信社
ウクライナ情勢により、エネルギー調達が再び中東依存に戻ってしまった日本 ~この状況をどう打破するのか
飯田)経済安全保障について、自立を維持するためにはどうすればいいのかというところですが。
佐々木)ロシアへの制裁もあって、エネルギーをどこから調達するのかが難しくなっています。70年代に石油ショックが起き、あまりにも中東にエネルギーを頼り過ぎるのも問題だということになった。そのあと原発を増やし、さらに天然ガスや原油の調達先として、ロシアを含めて増やしてきました。
飯田)調達先を分散化させようと。
佐々木)しかし、今回のウクライナ侵攻でロシアから調達するのはよくないということになり、結局また中東依存に戻ってしまっています。
飯田)9割以上(を依存している)という話です。
佐々木)原発もあまり動かず、70年代の状況に逆戻りしてしまっている。この状況をどう打破するのかは、なかなか難しいですよね。
この冬を越えるだけのエネルギーは備蓄しているヨーロッパ
東野)中東の不安定化も考えられるので、中東に頼りすぎることは、問題が解決されたことにはなりません。ですので、調達先の多様化が大きなテーマなのですが、ヨーロッパでもできていません。
飯田)ドイツなどはロシアからのガスパイプラインにかなり頼っていたところがあります。いまはどうしているのですか?
東野)ヨーロッパはこの冬を越えるために、8月~9月ごろ、既に天然ガスや石油の確保はしているのです。この冬を越すためだけの備蓄はあるようです。
飯田)この冬を越すための備蓄はある。
東野)問題はその先です。だからと言って、エネルギーの高騰が収まっているわけではないですよね。少し下がってはきていますが、市民生活を圧迫しています。
ヨーロッパがスポット販売で途上国が買うはずのガスを買い占めてしまっている
東野)もう1つの大きな問題は、ヨーロッパが自分たちの天然ガスを確保するために、高額のスポット販売で買ってしまっているのです。
飯田)スポット販売で。
東野)そのため、インドやバングラデシュなどの途上国、新興諸国がなかなか買えない状態です。インドやバングラデシュからすれば、ウクライナ支援はもちろん大事だけれど、自分たちが冬を越すために本来なら買えるはずだったガスを、ヨーロッパが買い占めてしまっている。それによって足りなくなってしまうのではないかという問題があります。
そのために途上国がロシアの天然ガスや石油を買う方向に行ってしまいかねない
佐々木)途上国がロシアの天然ガスや石油を買う方向に行ってしまいかねないわけですよね?
東野)そういうことだと思います。その分断にプーチン大統領がつけ込むことも、大いに考えられると思います。そうなると、またロシアに対し、エネルギー的に過剰に依存する地域が増えてしまうような悪循環ももたらしかねません。
性能のいい日本の石炭プラントを途上国に輸出して広めることで、中国の影響を少なくする
佐々木)地球温暖化対策で、化石燃料を使うなという方針になってきています。そのため、日本が石炭火力を維持していることに対し、気候変動対策の国連会議で「化石賞」を与えられるという不愉快な話がありました。
飯田)ありました。
佐々木)中国やロシアのような強権国家をどうするかと考えると、中国は石炭プラントを途上国に輸出しています。しかし熱効率が悪く、CO2排出量も多いものです。それに対して日本の石炭火力はプラントの性能が高いので、昔の石炭と違ってCO2排出量が少ない。
飯田)日本の石炭火力の技術では。
佐々木)ベストではないけれどベターな選択として、東南アジアをはじめとする途上国、新興国に対し、日本の石炭プラントを輸出して広めた方がいいと思います。結果的にCO2排出量も減るし、中国の影響力も抑えることができるのです。
途上国を含めた「集団的な経済安全保障」という観点も必要
佐々木)日本だけの安全保障ではなく、途上国、新興国を含めた集団的な経済安全保障という観点も必要ですよね。
東野)来年(2023年)、日本は先進7ヵ国(G7)の議長国になるわけです。世界的なエネルギー不足に対し、G7議長国として日本がどのように目配りしていくのかは大事なことだと思います。
安く売ることで仲間を増やし、素材や資源の輸入に役立てる
飯田)経産省の官僚などからは、「そうは言っても日本のプラントは高いから買ってくれないのですよ」という話を聞きます。「CO2を減らせるのだから」ということで、いろいろなところからお金を募ることができればいいのですが。
佐々木)中国向けの政府開発援助(ODA)もようやく終わったことですし。
飯田)そちらの転換ですとかね。
佐々木)お金をうまく使って、安く売ることで味方を増やし、東南アジアや中東などの仲間ができれば、「素材や資源の輸入にも役立つ」という発想が大切なのではないかと思います。
飯田)国連の職員を務め、いま衆議院議員の方に聞いたのですが、日本はそういう国々に対して、「アメリカほど強硬なイメージがないからアプローチしやすい」と言っていました。そこは日本の財産かも知れません。
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