哀悼 あき竹城さん 屈託ない笑顔と山形弁が印象的な名脇役
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年12月21日 20時15分
![哀悼 あき竹城さん 屈託ない笑顔と山形弁が印象的な名脇役](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_407253_0-small.jpg)
【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1092回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
12月20日、女優・あき竹城さんが12月15日に死去していたことが発表されました。享年75歳。
あき竹城さんは、山形県米沢市の出身。日劇ミュージックホールのダンサーを経て、女優に。映画『楢山節考』、連続テレビ小説「青春家族」「どんど晴れ」、大河ドラマ「徳川家康」「八代将軍吉宗」「天地人」など、数々の人気作に出演。名脇役として知られていました。
また山形弁で話す明るいキャラクターが受けて、バラエティ番組にも出演。ニッポン放送でも、オードリーがメインパーソナリティを務めた「第43回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」にゲスト出演するなど、ラジオを通じて、あきさんの明るい声に癒された方も多いことと思います。
そこで今回は、あき竹城さんの出演作とともに、そのお人柄を振り返ります。
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※写真は、「第30回東京国際映画祭』より (C)2017 TIFF
セクシー系女優から実力派女優へ……
『トラック野郎・度胸一番星』や『男はつらいよ』シリーズなどに出演後、今村昌平監督に見出されて『楢山節考』に出演。演技派女優としての地位を確立した、あき竹城さん。
本作は、姥捨ての習慣がある山深い寒村を舞台に、山に捨てられる老婆とその息子の心の葛藤を描いた人間ドラマ。人間にとって永遠のテーマである“生”と“死”、そして親子関係の本質がダイナミックに映し出されており、1983年のカンヌ国際映画祭では、最高賞にあたるパルムドールを受賞しています。
2022年、丸の内TOEIで開催された特集上映企画「東映クラシックス」で期間限定上映されたので、改めてスクリーンでご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
![カンヌ国際映画祭でパルムドール(グランプリ)を受賞した「楢山節考」の受賞披露パーティー。左端から東映社長の岡田茂、緒形拳、坂本スミ子、原作者の深沢七郎、今村昌平監督、(1人おいて)あき竹城=1983(昭和58)年5月21日、東京会館 写真提供:共同通信社](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2022/12/2020111006277RS.jpg)
カンヌ国際映画祭でパルムドール(グランプリ)を受賞した「楢山節考」の受賞披露パーティー。左端から東映社長の岡田茂、緒形拳、坂本スミ子、原作者の深沢七郎、今村昌平監督、(1人おいて)あき竹城=1983(昭和58)年5月21日、東京会館 写真提供:共同通信社
そんな本作であき竹城さんが演じたのは、緒形拳さん扮する主人公・辰平の後妻・玉やん。生活力に満ち溢れた力強い演技が、強く印象に残っています。
そして語り草となっているのが、緒形拳さんとの初夜のシーン。体を張ったまさに体当たりの演技は、いまでも映画ファンが語りたくなる名シーンのひとつとなっています。『トラック野郎・度胸一番星』でトップレス姿を披露するなど、最初はいわゆるセクシー系の女優として注目を集めたあき竹城さんですが、『楢山節考』は彼女が演技派女優へと脱皮した作品と言っても過言ではないでしょう。
今村昌平監督に限らず、山田洋次監督や伊丹十三監督といった名匠に愛されたあき竹城さん。ユーモラスで親しみやすいキャラクターからシリアスな役柄まで幅広く演じ、作品に花を添えました。
そしてあき竹城さんと言って思い出されるのが、山形弁。明るく飾らない人柄で、バラエティ番組でも引っ張りだこ。あきさんがそこにいらっしゃるだけで場の空気がパッと明るくなる。その快活な存在感は、ユニークで貴重なものでした。
![※写真は、『パラノーマル・アクティビティ3』公開記念イベントより](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2022/12/02RS-7.jpg)
※写真は、『パラノーマル・アクティビティ3』公開記念イベントより
『パラノーマル・アクティビティ3』公開記念イベントには、きゃりーぱみゅぱみゅさんがスタイリングしたハロウィンスタイルで登場。紫と黒を基調とした魔女スタイルを見事に着こなし、“オシャレさん”な一面を披露されました。私が「わぁ、素敵ですね」と、あまりにもよくお似合いの扮装について触れると、はにかみ笑顔を見せたあきさん。これがまた、とてもキュートだったことを思い出します。
また、「第30回東京国際映画祭」での『楢山節考』デジタルリマスター版トークショー時、撮影中に映画の完成を心待ちにしていたお母様が亡くなっていたことを明かしたあき竹城さん。いまごろは天国で、お母様と談笑し、ご自身の出世作となった『楢山節考』の感想を聞いたりしていらっしゃるのでしょうか。
あの天真爛漫なお姿を拝見することができなくなってしまったのは残念ですが、多くの出演作とともにその名演技は語り継がれることでしょう。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
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※写真は、「第30回東京国際映画祭』より (C)2017 TIFF
いま、観るべき! あき竹城さん出演映画・ドラマ
■『小さいおうち』
第143回直木賞を受賞した中島京子の小説を、名匠・山田洋次監督が映画化。とある一家に起きた恋愛事件の行方を、ハートウォーミングかつノスタルジックに綴ったラブストーリー。あき竹城さんの役どころは、女中タキの親戚・カネ。東北訛りの女性を生き生きと演じており、コメディ・リリーフな役割を果たす熱演は必見ですよ。
■『マルタイの女』
伊丹十三監督の第10作にして遺作。殺人事件を目撃した女優が、身辺保護の刑事に見守られながら、裁判で証言台に立つまでの日々を描いた異色のサスペンス・コメディ。個性的な登場人物が多く登場する本作において、お手伝いの三輪さん役を演じたあき竹城さん。市井の人々をしっかりとしたリアリティを持って演じながら、シリアスにもコミカルにも色付けすることができる。これぞ、あき竹城さんが名脇役と呼ばれる所以でしょう。
■楢山節考(1983年公開)
監督・脚本:今村昌平
原作:深沢七郎
撮影監督: 栃沢正夫
音楽:池辺晋一郎
美術:芳野尹孝
照明:岩木保夫
録音:紅谷愃一
編集:岡安肇
出演:緒形拳、坂本スミ子、左とん平、三木のり平、辰巳柳太郎、あき竹城
配給:東映
■パラノーマル・アクティビティ3(2011年日本公開)
監督:ヘンリー・ジュースト、アリエル・シュルマン
脚本:クリストファー・B・ランドン
プロデューサー:ジェイソン・ブラム、スティーヴン・シュナイダー、オーレン・ペリ
出演:ケイティ・フェザーストン、スプレイグ・グレイデン、クリストファー・ニコラス・スミス、ローレン・ビットナー、ダスティン・イングラム 、クロエ・チェンゲリ、ジェシカ・タイラー・ブラウン
原題:Paranormal Activity 3
配給:パラマウント映画
■小さいおうち(2014年公開)
原作:中島京子
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、平松恵美子
撮影:近森眞史
音楽:久石譲
出演:松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、橋爪功、吉行和子、室井滋、中嶋朋子、林家正蔵、ラサール石井、あき竹城、 笹野高史、松金よね子、米倉斉加年、螢雪次朗、小林稔侍、夏川結衣、木村文乃、妻夫木聡、倍賞千恵子
配給:松竹
■マルタイの女(1997年公開)
監督・脚本:伊丹十三
製作:玉置泰
企画協力:三谷幸喜、細越省吾
出演:宮本信子、西村雅彦、村田雄浩、名古屋章、六平直政、益岡徹、不破万作、伊集院光、近藤芳正、あき竹城、小日向文世、小島聖、三谷昇、早乙女朋子、小林克也、宝田明、高橋和也、山本太郎、木下ほうか、隆大介、江守徹、津川雅彦
配給:東宝
連載情報
![](https://news.1242.com/wp-content/themes/news1242_PC/img/prof_cinema.jpg)
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/
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