「理想」だけでは実現しない核軍縮 重要な「現実」とのバランス
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年1月2日 11時40分
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が12月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「核なき世界」への「理想」と「現実」について解説した。
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画像提供:共同通信社
岸田総理大臣は2023年1月上旬から中旬にかけてG7主要7ヵ国のメンバーのフランス、イギリス、アメリカなどを歴訪し、それぞれ首脳会談を行う方向で調整を進めているとのことだ。
飯田)2023年は日本がG7の議長国です。
宮家)そうですね。広島でG7をやるわけですから、どなたが総理でも当然年の頭からG7を回るというのは定番ですよね。特に今回は広島でやるということで、これはすごく大きな意味があると私は思います。やはりアメリカの大統領が広島、長崎に「行く」「行かない」というのは大きな違いです。ひと昔前は考えられなかったことですが。2016年にオバマさんが来たでしょう。あれがやはり日本とアメリカの和解というものをさらに押し上げたと思います。そういう意味で2023年、総理は張り切っておられると思います。
しかし、いずれにせよ2023年のサミットというのは、おそらくウクライナで戦争は続くので、ロシアの問題を議論するでしょう。今度は日本で開くのですから、当然インド太平洋地域の問題がクローズアップされる、やはり中国の問題が出てくると思います。そして、G7では時々G7以外のお客様をお呼びするではないですか。私が総理だったらどこを呼ぶか……中国は来ないだろう。インドとかオーストラリアとか。そうしていろいろな仕掛けができる年に2023年はなるのではないかという気がいたします。その意味で日本にとっては非常にいい場ができあがりつつあるわけですから、最大限これをうまく利用してほしいと思います。
飯田)この広島というところは総理ご自身もテーマとされていますけれども、やはり「核なき世界」というものも当然考えられる。
宮家)広島が出身地ですからね。
飯田)一方でいまのウクライナの情勢を考えるとロシアはその核によっての恫喝というものをやろうとしているという。ここのメッセージの出し方というのはどうしたらいいのですか。
宮家)「現実」と「理想」の両方をうまくバランスをとらなくてはいけないわけですよ。「理想」だけで戦争が終わる、もしくはやめさせることはできないわけですから。実際にある程度、想像以上にプロパガンダ的な情報戦としてやっている部分がある。絶対にないとは言いません。しかし、いまの状況でロシアが核を使うことがどれどけロシアにとって不利になるかということはプーチンさんが合理的に考えれば、わかってくれるはずなのですが。
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宮家)それはさておき「現実」の世界、NPT(核兵器不拡散条約)の世界というのも、残念なことなのですがとにかく欠陥がないわけではないですよね。核保有国は事実上認めたわけだから。一方保有していない国は「持ってはいけない」という。では核保有国は核を減らすのかというと、そういう義務はないですよね。その意味では「やっていられない」といって、インドやパキスタンが核開発をする。イランもこれからやる。そして北朝鮮はもう持っている。イスラエルもいつでもつくれるようになっている。これが「現実」の世界ですから。
むしろそういうかたちで本当に核抑止、すなわち「お前が撃ったらこっちも撃ち返すぞ」という議論ですが、これはあまりきれいな図ではないけれども、「結局共倒れになるのだったらやめましょう」ということになる。いわゆる「相互確証破壊、Mutual Assured Destruction=MAD」というのだけれども、本当にMADですよね。それはそうなのだけれども、やはり抑止というのは必要なのです。この「現実」と「理想」のバランスですよ。これしか言いようがないと思います。
飯田)どちらが正しい正しくないとか、どちらを選ぶという問題でもなく。
宮家)どちらも正しいのです。理念の世界では当然なのです。特に日本は唯一の被爆国なのですから、それはもう絶対に我々の大義名分は言い続けなければいけないとは思います。しかしそれと同時に我々の周りのよろしくない国が核を持っているわけですよ。少なくとも2.5ヵ国あるわけです。
飯田)2.5ヵ国。
宮家)ヨーロッパの人によく言うのだけれども、「おたくはロシアだけだろう。こっちは2.5あるのだ」と言うと、「何だ、それ」というから、「中国とロシアがいて、それから北朝鮮がいる」という。北朝鮮が0.5というのもおかしいけれども、「3ヵ国あるのだ」という。最近やっとヨーロッパの人たちがそれをわかってくれるようになったのだけれども、日本の周りは困った状況ですよね。
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