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岸田政権に「副総理」がいない「本当の理由」

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年1月6日 17時45分

岸田政権に「副総理」がいない「本当の理由」

国家安全保障戦略など新たな「安保3文書」の閣議決定を受け、記者会見する岸田文雄首相 =16日午後7時5分、首相官邸 

元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が1月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田政権に副総理がいない理由について解説した。

国家安全保障戦略など新たな「安保3文書」の閣議決定を受け、記者会見する岸田文雄首相=2022年12月16日午後7時5分、首相官邸 写真提供:産経新聞社

岸田政権に副総理がいないのはなぜか

第2次安倍政権から菅政権までのおよそ9年間は、財務大臣と兼任する形で麻生太郎さんが副総理を務めていたが、いまの岸田政権には副総理はいない。なぜいないのか。

法令上、「副総理」という用語はない

飯田)そもそも総理大臣に「副」がいるのかということですが。

松井)実はないのです。法令上、「副総理」という用語はどこにもありません。

飯田)そうなのですか。

松井)アメリカ合衆国の副大統領のように、オフィシャルな規定があるわけではないのです。内閣法のなかで、総理に事故があったときなどに、どういう順番で総理の職務を務めるのかを決めることになっています。

通常は官房長官が「ナンバー2」になり、総理大臣の臨時代理の第1順位となる

松井)おそらく岸田さんの内閣では、官房長官がナンバー2になっているのが普通です。官房長官以外の人をナンバー2、要するに第1順位にしたとき、それを「通称・副総理にする」というのがいまの慣行です。だから副総理という発令は出ていません。

飯田)辞令があるわけではない。

松井)天皇陛下から「副総理を任命する」という辞令が出ているわけではありません。岸田さんからそういう辞令が出ているわけでもない。

飯田)なるほど。

副総理のいない岸田政権

松井)そういう実態上のものなのですが、明確に順位として第1順位……総理に何かあったとき、いちばんに総理の職務を代行する者を「副総理」と呼ぶことになっている。それがいないのです。

飯田)岸田政権には。

松井)毎週2回の閣議がありますが、日本の内閣は大統領制ではなく、集団指導体制です。行政の最高意思決定機関の閣議は、火曜日と金曜日にあります。そのとき、顔を合わせている映像を皆さんも見たことがあると思います。奥にある四角い部屋で、正面に総理がいて、隣に高市さんがいて。

飯田)みんなソファーに座っているような。

松井)あれは閣議前の懇談の部屋です。その奥に閣議室があり、丸テーブルがあって、約20人の方々が並ぶ。

飯田)閣僚が並ぶ。

松井)いまで言うと高市さんが隣に座っています。

飯田)高市早苗さんが総理の隣にいますね。

松井)でも、高市さんは第1順位ではなく、副総理でもない。高市さんが総理の隣に座っているというのが、ある種シンボリックな岸田内閣の特徴です。高市さんは特命大臣ですよね。

飯田)そうですね。経済安保担当です。

安倍政権では麻生氏が副総理として「大番頭」の役割を果たしていた

松井)安倍政権のときは、麻生さんが副総理でした。総理経験者で派閥のリーダーでもあるし、永田町や世の中のいろいろなことがわかっている。麻生さんについて揶揄する人は多いですが、やはりこなれた方です。

飯田)麻生さんは。

松井)そういう方が閣内にいて、予算でも法案でも、何かを意思決定するときに、閣議の案件以外の閣僚懇談会を閣議後に必ず行う。あるいは前後に総理のところへ早めに入ったり残ったりして、総理と話をする。そういう本当の意味での大番頭のような人が、岸田さんの場合は閣内にいないのです。では党にいるのかと言うと、党にもいません。麻生さんは副総裁ですが、それが大番頭として機能しているかというと、そういうわけではない。

2022年12月28日、会議のまとめを行う岸田総理~出典:首相官邸HP(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202212/28kaigi.html)

「大番頭」の存在をつくろうとしない岸田総理 ~そこが岸田内閣の弱さでもある

松井)岸田さんはそういう人をつくろうとしていないのだと思います。

飯田)なるほど。

松井)閣僚として行う兼務であれば、財務大臣や外務大臣のような主要閣僚で任命するのです。いまであれば、林芳正さん。彼はどう考えてもプリンスなのですね。少し年少で。

飯田)岸田派のなかではそうですね。

松井)自分より年少だし、場合によっては宏池会で自分の次にリーダーになるので、少し警戒感があるのです。

飯田)岸田さんに。

松井)本当であればご意見番のような人がいて、総理自身が動くより、その人が総理の意を体して、党内や閣内で根回しする。総理がいきなり指示するよりは、そういう人がいた方がいいのですが、岸田内閣にはそういう人がいないでしょう?

飯田)いませんね。

松井)だから結局、党内では幹事長が出てきて、例の旧統一教会問題では与野党調整をされました。

飯田)茂木さんが動いた。

松井)右腕になる人、あるいはご意見番として陰ながら総理を立てる人をつくっていないことが、岸田内閣がいろいろなビジョンを出したり、党内や閣内で調整したりするときに少し弱い要因のような気がします。

誰でもいいから副総理を置けばいいわけではない ~民主党時代の反省

飯田)一般的には「総理の女房役」というと官房長官です。中曽根政権では後藤田さんなど、いろいろな方をイメージしますが、いまの松野官房長官はどうなのでしょうか?

松井)松野さんは一般的には評判のいい方です。平時のリーダーとしては。ただ、こんな大変なときに、困難な情勢を松野さんが切り盛りできているかと言うと、党内でも「どうなのだ?」という声が出ている。要するに、そういう人をつくっていないということです。

飯田)なるほど。

松井)しかし、ただ副総理を置けばいいというものではありません。民主党政権の反省で言うと、鳩山総理の時代には菅直人さんが副総理になってしまった。

飯田)そうでしたね。

松井)当時は国家戦略局のようなものをつくるという話があって、菅(直人)さんは「官邸のなかに副総理室があるだろう」と言っていました。副総理室はないのですが、会議室が1つあるのですよ。5階フロアのなかに。

飯田)会議室が。

松井)総理(室)の角があり、官房長官(室)の角があって、官房長官(室)の対角線上に1つ会議室があるのです。実は設計したときに「これは副総理室にも使える」と。旧官邸にもあったのです。総理室の下ぐらいに。

飯田)旧官邸にも。

松井)総理室のトイレの水を流すと、副総理室に響くという。旧官邸は変な構造で、中二階のようなところにあったのです。「副総理を官邸内に置け」という総理の指示があったときには、置けるような部屋もあるのです。

飯田)そういう想定があったのですね。

松井)そういう意味で、総理と官房長官の館に副総理がいてもいいように設計されてはいるのですが、鳩山政権のときがそうでしたけれど、下手をしたら官房長官とバッティングしてしまうのです。

飯田)なるほど。

松井)当時は菅直人さんが「俺は副総理だから官邸で記者会見させろ」と言い出したのです。でも官邸の記者会見室などは、そういう構造になっていないのですよ。そのときは平野官房長官(当時)と揉めて、平野さんは「絶対に使わせない」と言っていました。

飯田)当時の官房長官が。

松井)仕方がないから内閣府の会見場を使っていましたが、そもそも官邸にいることが副総理の役割ではありません。履き違えてはいけないですね。

長期政権を考えるのならば、右腕やご意見番をつくるべき ~岸田総理の課題

松井)椅子でも机でも、いくつかの重心を持つと安定するではないですか。では、岸田さん以外のどこに重心があるのか。官房長官でもない。茂木幹事長が担っているかと言うと、茂木さんはポスト岸田の候補でもあり、警戒感があるような気がする。

飯田)茂木さんに対して。

松井)長期的な政権であれば、その先のことも考えて、自分の右腕やご意見番をつくらなければいけないのだけれど、それができていないことが岸田さんの課題のような気がします。

飯田)その重しが安倍さんだったのかも知れないですね。

松井)おっしゃる通りです。実際のところは。

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