紅白歌合戦とおせち料理
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年1月12日 17時20分
![紅白歌合戦とおせち料理](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_411104_0-small.jpg)
「報道部畑中デスクの独り言」(第314回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、紅白歌合戦とおせち料理について—
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※画像はイメージです
年が明けて、はや2週間。皆さまは年末年始、いかが過ごされましたか? さすがにお正月気分は抜けたのではないでしょうか。学生の皆さんはいよいよ受験シーズンです。
昨年(2022年)大みそかの紅白歌合戦はほぼすべて見ました。民放に務める者にとっては、紅白の名のもとになりふり構わず、あらゆる人気タレントを「かっさらっていく」ような姿勢には、いささかの反発を覚えるのですが、番組そのものはさすが、特に後半は音楽番組の最高峰と呼ぶにふさわしいものだったと思います。
何よりも出場する歌手の皆さん、現場スタッフの熱量……並々ならぬものが伝わってきました。これが「紅白のブランド力」かと、一視聴者として感じた次第です。私自身、印象的だったのは桑田佳祐さん率いる「時代遅れのRock’n’Roll Band」。特に佐野元春さんは依然、渋くてかっこよかったです。こう感じること自体、私も「高齢者」の部類に入っているのかも知れませんが……。
平均世帯視聴率は35.3%(第2部 関東地区)で、前回より1ポイントの微増。「40%に届かず」「歴代ワースト2位」という評価がありますが、ゴールデンタイムの平均世帯視聴率さえ、各局軒並み2ケタを切ってしまうような状況のなか、1ポイントのプラスというのはむしろ「堅調な数字」と言っていいと思います。
一方、紅白については、いろいろ課題も感じました。私が最も気になったのは、細かいことですが、紅白優勝発表が「蛍の光」のあとになったこと。ダイバーシティの時代、歌手を紅白=男女に分けること自体ナンセンスという指摘もあり、もはや「つけ足し」の感がありました。味のあった「優勝旗返還」もいつしか見られなくなり、特別企画が増えました。対戦相手の区別もあいまいななか、エンディングで「そういえば対戦だったんだ」と感じた人も少なくなかったのではないでしょうか。
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紅白歌合戦が行われたNHKホール(写真は改装前)
ただ、これがないと「紅白歌合戦」というタイトル、コンセプト自体が崩れてしまいます。番組としてはもはや「音楽フェス」であっても、このあたりは今後も悩みながら進んでいくことになるのでしょう。
これは、かつて年末音楽番組のもう1つの雄であった「日本レコード大賞」も同じ。番組の存在意義である大賞発表は、いまも一定の注目度はあるものの、番組最後の提供クレジットが終わったあと、10分足らずのエンディングに押し込まれてしまっています。番組そのものは生演奏の豪華さ、今回はマカロニえんぴつとスペシャルバンドとのコラボ、男闘呼組や三浦大知さんの熱唱など、見どころも多々ありましたが、演出は明らかに賞以外の部分に力点が置かれているようで、関係者の苦悩がみてとれます。
こじつけ覚悟で申し上げれば、これらは正月のおせち料理に似たものを感じます。おせち料理というものは本来、歳神様を迎え、ともに食事を行う正月の火を聖なるものとすることから、火を使う調理をできるだけ避けるべき……そんな風習に基づくものだそうです。昔は保存技術や冷凍技術が発達しておらず、三が日でも調理をしないで済むよう、味が濃い保存食が重箱に並んでいました。
現代はどうでしょうか。日本の食文化も多様になり、食品の保存技術も進みました。刺身などの生ものはもちろん、ローストビーフや寿司、中華、洋食を重箱に詰めることも珍しくありません。重箱は変わらずとも、その中身は変遷を遂げています。おせち料理とは歴史が違いますし、紅白を日本の文化と申し上げるにはいささか憚られますが、番組タイトルという“重箱”のみそのままに、出演者やコンセプトが時代に合わせて変わっていくのも1つのいき方かも知れません。
番組がどれだけ見られているかという指標にも、時代の変化があります。視聴率とは別に存在する数字が到達人数……番組を1分以上見た人数を示すものです。
日本レコード大賞は世帯視聴率が10.7%(午後7時~ 関東地区)と、前回より1.3ポイントのダウン。何とか2ケタにとどまった感じですが、到達人数は3496万4000人に上りました。日本の人口は約1億2570万人とされますから、約28%……全体の約3割が番組に“接していた”ことになります。レコ大はこちらの数字をアピールしているようです。
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※画像はイメージです
紅白歌合戦に至っては、5700万9000人(第2部)で、約45%に達します。よく洋画の世界で「全米が泣いた!」などというフレーズが使われますが、そうしたフレーズよりは説得力があるように感じます。
ただ、この到達人数は、1分以上見ればカウントされるわけですから、ある意味、番組が長時間になればなるほど、多くなるのは自然なことです。実際、昨今の音楽番組はいずれも長時間です。視聴者は好きなアーティストだけを見る傾向が強いのでしょう。
ひと昔前とは違い、テレビをリモコンでザッピングするのが当たり前の時代です。趣向が多様化し、1つの音楽番組をずっと見続ける人が少ないなか、到達人数は広告主に説明する有力な指標と言っていいでしょう。しかし、だからといって、だらだらと続ければ、いずれそれは視聴者不在の番組になってしまいます。番組づくりの難しさがあります。
「1年を象徴する曲が結集し」「勝利や栄冠に向けて必死で戦う歌手の姿があり」「その年最も輝いた楽曲、歌手、スタッフが称賛される」……原点に戻った番組が見たい、そんな思いもなきにしもあらずですが、それはもはやノスタルジーなのかも知れません。
(視聴率、到達人数ともビデオリサーチ調べ) (了)
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