存在意義を問われるダボス会議 「分断と協力」の答えはあるのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年1月18日 19時15分
ウクライナ侵攻 破壊されたロシアの戦車が並ぶ中央通り。夜になっても多くの人が写真を撮るなど訪れていた=24日午後8時47分、ウクライナ・キーウ
ジャーナリストの佐々木俊尚が1月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ダボス会議について解説した。
ダボス会議が始まる
飯田)1月16日からスイス東部のダボスで始まった「世界経済フォーラム(WEF)」の年次総会、通称ダボス会議についてです。企業経営者など、およそ2700人が参加しています。今年(2023年)のテーマは「分断された世界における協力の姿」だということです。
佐々木)「分断と協力」という、相矛盾するような言葉をどうやってつなげるのかという、難しい問題ですよね。
米ソ冷戦が終わり、「戦いの歴史は終わった」と言われたのだが
佐々木)振り返ってみると、冷戦が終わったのが1990年くらいで、いまから30年少し前です。そのころは東側と言われた社会主義圏がほぼ消滅して、これからは民主主義的な西側諸国中心の世界がやってくると。それは歴史の終わりだと言われていました。つまり「戦いの歴史が終了するのだ」ということを、アメリカの政治学者が言ったのです。
飯田)未来は明るいと。
佐々木)その10年後くらいに9.11アメリカ同時多発テロが起きて、「これからはテロの時代だ」と言われました。ただ、相手はイスラム過激派など非対称(の戦争)でした。国と国が激しく対立する時代ではなく、少数のテロリストが出てきて世界を混乱させるのは大変だ、という話で終わっていたのです。
ロシアのウクライナ侵略によって、再び起こった戦争 ~中露にどう向き合うか
佐々木)まさかこのように国対国、対称の戦争が起きるなど、当時はまったく予想していなかった。
飯田)ロシアとウクライナという。
佐々木)昨年(2022年)来のウクライナ侵攻で、とうとう終わりになったかと。その前から中国の台頭で「新しい冷戦だ」と言っていたのですが、ロシアがウクライナを侵攻し、中国との関係もあり、いわゆる強権国家、2つの超大国であるロシアと中国に対して、どう向き合うのかということになった。
機能しない国連
佐々木)現状、未だに国連中心のような幻想を抱いている日本人は多く、安全保障の議論でも集団的自衛権が必要だと言うと、「国連の集団安全保障体制で十分だ」と言う人がいるのだけれど、結果的に今回、ウクライナ侵攻では何も機能していないわけです。
飯田)そうですね。
佐々木)国連軍が出てくるわけでも何でもない。
それでも中露抜きでは世界をまとめることはできない ~しかし仲間に入れられるのか
佐々木)しかし、ロシアと中国を抜いた、他のいわゆる先進7ヵ国(G7)諸国などが中心となって安全保障体制をつくれるのかと言うと、「中露抜きで話し合ってどうするのか」ということになります。
飯田)中露抜きでは。
佐々木)現状、西側諸国は日本も含めて、アメリカや北大西洋条約機構(NATO)諸国でウクライナを支援しています。それはそれで進めるのですが、やはり全体的な国際社会の枠組みをみんなで考えることになったとき、中露抜きでは語れないから仲間に入れないといけない。しかし、仲間に入れるにしても、あまりにも人道に反することをやっています。
飯田)ロシアも中国も。
佐々木)先日も空対艦ミサイルを集合住宅に撃ち込むなど、ロシアは人道に反する行為をしています。そしてウイグル問題やチベット問題を抱えている中国と、どうやって共通認識、同じ立場で話し合えるのかは見通しが立っていません。ダボス会議で話し合うのはいいのですが、「答えはあるのか」という問題になるのです。
存在意義を問われるダボス会議
飯田)そうですよね。もともとこの会議は「グローバリゼーションをどう進めるのか」という観点でやってきたわけで、ある意味、存在意義を問われているのですか?
佐々木)そうですね。
中露との経済と政治の分断をどうするか
佐々木)ある時期までは中国などに関しても、グローバリゼーションで世界と経済が密接につながっていると。中国が民主化されれば、仲間に引き込んで、西側の一員になるだろうという期待があったのです。
飯田)経済が進めば。
佐々木)ロシアもそうです。プーチン大統領が出てきた2000年代初頭は、リベラルな若い指導者が出てきて、これから西側諸国やNATOと仲よくできるのではないかという雰囲気があったのです。
飯田)当時は。
佐々木)その夢がすべて崩れ去ったのが、2020年代での現実なのです。経済のグローバリゼーションは今後も進み、おそらく終わることはない。実際に中国と対立しても、iPhoneは中国で組み立てられているのです。ただ、経済と政治の分断をどうするのか。
飯田)どちらかと言うと、経済の部分でも経済安全保障などという言葉がメジャーになってきたように、どんどん政治に引っ張られる形になってきました。
現在の状況は第一次大戦、第二次大戦前のブロック経済と同じ
佐々木)だから日本も食料や素材、原材料なども含めて、グローバリゼーションなどではとにかく「引っ張れるところから引っ張ればいい」というような発想でした。
飯田)安いところから。
佐々木)しかし、シーレーンは守らなくてはいけないし、中国から入ってこない可能性がある。それならば自分たちと「協力関係にある国から輸入する」という方向に舵を切らなくてはいけなくなった。これはまさに第一次世界大戦、第二次世界大戦前のブロック経済と同じ状況になってきているわけです。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
再び問われる「同盟の真価」 NATO首脳会議 中露の覇権行動を抑止せよ ロンドン支局長 黒瀬悦成
産経ニュース / 2024年7月12日 21時39分
-
NATO首脳、関心はトランプ2・0の欧州・ウクライナ プーチン氏に妥協の懸念も
産経ニュース / 2024年7月11日 6時38分
-
インドのモディ首相が訪露 3期目政権発足後2国間初外遊、対中戦略見据え連携強化図る
産経ニュース / 2024年7月8日 11時56分
-
中ロ首脳、ユーラシア安保構想を表明 SCO 西側への対抗鮮明
ロイター / 2024年7月5日 0時0分
-
「アメリカの同盟国だから、中国は日本を攻撃しない」は甘い…ロシア・ウクライナ戦争でわかった「核抑止」の現実
プレジデントオンライン / 2024年7月4日 9時15分
ランキング
-
1トランプ氏銃撃、民主主義脅かす不安「感じる」76%…読売世論調査
読売新聞 / 2024年7月21日 22時0分
-
2「発見」通報の女逮捕=殺人容疑、マンション男性遺体―京都府警
時事通信 / 2024年7月21日 22時54分
-
3【ヤクザサミット2024in横浜に密着】関東暴力団トップ、マル暴40名が駆けつけた「炎天下の極秘会合」が開かれたワケ
NEWSポストセブン / 2024年7月22日 7時15分
-
4エレキギターを持ったロック歌手がズブ濡れのファンとハグし感電死
東スポWEB / 2024年7月21日 14時57分
-
5東海道新幹線、運転見合わせ=浜松―名古屋、夕方まで復旧作業―保守車両脱線、2人けが
時事通信 / 2024年7月22日 11時31分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください