「トップシークレット」の次期日銀総裁は「驚くべき人事」の可能性が高い 前日本銀行政策委員会審議委員が指摘
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年1月26日 17時40分
![「トップシークレット」の次期日銀総裁は「驚くべき人事」の可能性が高い 前日本銀行政策委員会審議委員が指摘](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_414627_0-small.jpg)
日本経済団体連合会の第11回審議会で講演する日本銀行の黒田東彦総裁=26日午後、東京都千代田区
前日本銀行政策委員会審議委員の片岡剛士が1月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。次期日銀総裁人事について解説した。
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日本経済団体連合会の第11回審議会で講演する日本銀行の黒田東彦総裁=2022年12月26日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社
次期日銀総裁人事
4月に任期満了を迎える日本銀行の黒田東彦総裁。その後任人事について、政府は2月半ばにも国会に提示する見込み。
飯田)片岡さんは『中央公論』2月号に『アベノミクス後をいかに乗り切るか―—日本経済10年の軌跡を踏まえて考える』という論考を寄稿していらっしゃいます。人事もさることながら、その先も含めてどうなるのか。2月半ばに提示されるようですが、意中の人は決まっているのでしょうか?
人事は既に決まっている ~2月半ばには発表か
片岡)1月の年頭所感で、岸田総理は日銀新総裁の方と共同声明等、政策のあり方について議論したいと言っています。そのタイミング辺りでは、既に決まっているのかなという印象を持っています。
飯田)既に決まっている。
片岡)2022年内には打診があり、意中の人が固まっている上で1月初頭にそういう話をされている。どのような人事かは、2月半ばくらいまでには出てくる流れだと思います。
飯田)2月半ばくらいまでには。
片岡)1月は決定会合がありましたので、決定会合前のタイミングでいきなり次期総裁の話をするのは難しい。いまは決定会合が終わりましたので、そこから2月半ばまでのタイミングではないでしょうか。3月になると、また黒田総裁最後の決定会合がありますから、3月までは引き延ばせないため、2月なのだと思います。いずれにしても人事は決まっていると思います。
着実に効果があったアベノミクス ~いきすぎた円高は是正され、失業率は2%台半ばに
飯田)1月25日の国会の代表質問では、立憲民主党の泉さんからも黒田さんの人事について質問がありました。そのなかで「アベノミクスは失敗したのだ。この路線を転換する人を次の総裁に」と泉さんはおっしゃっていました。
片岡)アベノミクスは着実に効果がありました。アベノミクス前の状況は株安で、日経平均1万円割れでした。為替レートに関しても、100円をゆうに割り込むようなレートで、失業率も4%台という状況でした。
飯田)アベノミクスの前は。
片岡)しかし、これらは知らないうちにすべて改善しています。当然、この10年やってきた政策の結果としてそうなっているわけです。為替レートも円安の方向へ行き、いきすぎた円高は是正され、失業率は2%台半ばになった。10年前の状況だと、失業率が2%台半ばになって人手不足が起こるなど、予想だにしなかった話だと思います。雇用改善は着実に起こっているということです。
アベノミクスを経て「何も起こっていないわけではない」ことが重要
飯田)私も氷河期世代ですので、内定をいくつも取ってそこから選ぶなどということは考えられませんでした。それがいま現実に起こっているのですよね。
片岡)人手不足が具体的に広がっています。所得拡大を通じた消費拡大の流れのなかで、価格がうまく経済に対して選択肢として機能する状況になるには、まだ遠いのかも知れません。しかし、何も起こっていないわけではないということが重要な点だと思います。
財政政策については引き続き、岸田政権と新たな日銀総裁のもとで、政府の財政と中央銀行の金融政策の連携の在り方を考えるべき
片岡)「金融政策」「財政政策」「成長戦略」の3つがあったわけですが、金融政策はやりきった。財政政策は途中のタイミングで消費税を増税してしまい、経済の腰を折る方向に残念ながら尽力してしまった部分があります。
飯田)消費増税によって。
片岡)この部分は岸田政権、新たな政権ないしは新しい日銀総裁のもとで、政府の財政と中央銀行の金融政策の連携のあり方をどう考えるのか、引き続き問われるべきだと思います。いま物価として見た場合でも、日本経済は非常に微妙な局面にあると思います。
飯田)全体だと4%で、「インフレが」という話になりますよね。だから利上げするべきであり、「欧米と一緒だ」というようなことを言いますが。
片岡)ただ、そのうちの6割くらいが食料品とエネルギー価格の上昇です。今年(2023年)1月の統計辺りから、前年比で見ると徐々にマイナスの方向感が強まってくる見通しが立てられると思います。
飯田)マイナスの方向感が強まる。
片岡)そうなると、4%くらいの物価がだんだん3%台、2%台という形で落ちてくることが予想されます。
飯田)物価が2%台へと。
片岡)コストプッシュインフレの流れのなかで、家計は一生懸命それに耐えようとしているわけですが、耐えきれなくなると当然、ものは買わなくなります。そのため逆に価格が下がっていくわけです。
飯田)そうなります。
片岡)いまは端境期の状況にあるということです。この状況をそのままにしておけば、物価は下がっていく方向がより強まるわけです。
緩和一辺倒でも難しいし、引き締め一辺倒でも難しいなかで適切な判断ができる人が日銀総裁に求められている
片岡)他方で賃金等々が上がっていくという話になると、2%近傍で安定化されるような道も開けてくる可能性があります。日銀の次期総裁は、微妙な局面のなかで微妙な決断をしなければいけない。そういう方が求められるのです。
飯田)一方では利上げすべきだという意見が出て、他方、利上げされたら資金繰りがきついという中小企業の経営者や、住宅ローンを抱えている人たちがいる。そのバランスをどう取るか。動かないことでバランスを取る場合もあります。
片岡)緩和一辺倒でも難しいし、引き締め一辺倒でも難しい。そういう意味では、そのときの状況をもとにしながら、適切に判断できる人が求められるのです。
飯田)適切な判断を下せる人。
片岡)私の見立てでは、当面は物価に対して、むしろ引き締めを急がないようなスタンスが求められると思います。ある局面で2%を安定的に超えるような状況になってくると、具体的に金利を上げるような道をどう考えたらいいのか。そこは市場とのコミュニケーションを通じて、大胆に行動できる方が求められるのではないでしょうか。
雨宮氏、中曽氏、山口氏以外にも副総裁経験者はいる
飯田)いろいろな人の名前が出ています。副総裁経験者など、現役なのか、あるいは財務省から来るのか。雨宮さんや中曽さんの名前がよく聞かれますけれども。
片岡)雨宮さん、中曽さん、山口さんなどの方々は、副総裁経験者です。副総裁経験者で日銀プロパーが総裁になるのではないかという見通しがありますが、皆さん1つ重要な点を忘れているのではないかと思います。副総裁経験者は他にもいらっしゃいますよね。
飯田)そうですね。
片岡)いま経験している方もいらっしゃいます。
飯田)学会の方から。
片岡)そうなのですよ。そういう方々も日銀の内部機構を経験し、政策についても経験しており、総裁としての資質は十分だと思うのです。岸田政権がその方々を選ぶかはわかりませんし、可能性は低そうな気もします。とは言え、そういう意味では、副総裁経験者で資格を持っている方は他にもいらっしゃる。
飯田)副総裁経験者で資格を持っている方は。
片岡)ここまで総裁人事、副総裁人事の情報があまり出てこないところを見ると、岸田政権下でトップシークレットになっている可能性が高いと思います。そうすると、驚くべき人事が出てくる可能性があります。
飯田)なるほど。
片岡)逆の意味で驚くべき人事かも知れません。そこは注意ですね。
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