専門家に聞く 国軍クーデターから2年経つ「ミャンマーの現状」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年2月1日 17時35分
![専門家に聞く 国軍クーデターから2年経つ「ミャンマーの現状」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_415785_0-small.jpg)
13日、ミャンマー・ヤンゴンで、衝突の犠牲者を悼む人々(ゲッティ=共同)
ジャーナリストの北角裕樹氏が2月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ミャンマー国軍によるクーデターから2年が経過する現在のミャンマー情勢について解説した。
![](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2021/06/2021031300509RS.jpg)
13日、ミャンマー・ヤンゴンで、衝突の犠牲者を悼む人々(ゲッティ=共同)=2021年3月13日 写真提供:共同通信社
ミャンマー国軍によるクーデターから2年
ミャンマーで2021年に国軍がクーデターによって全権を掌握してから、2月1日で2年となった。国軍の弾圧で民間人の死者は約2900人、拘束中の政治犯は1万3000人を超え、現在も各地で民主派との武力衝突が頻発している。
飯田)ミャンマー国軍によるクーデターから2月1日で丸2年となります。北角さんはクーデター以前から現地で取材を続けており、2021年には国軍に拘束され、解放された経験をお持ちです。いま、どんなお気持ちでいらっしゃいますか?
北角)あっという間の2年でした。この間、私の友人たちは苦しい思いをして、捕まったり逃げたりと、本当に辛い状況です。そのなかでも友人たちが人助けをしながら生き、また勇気を持って抵抗している場面も数多く見てきました。そこに勇気付けられる思いです。
民主化が進み、「これからの自分たちの未来は明るい」というときに起きたクーデター ~先が見えない状態
飯田)段階を踏んで民主的になっていき、「ミャンマーはこれから明るくなる」というイメージがあったところで起きたクーデターでした。経緯をご覧になっていて、「やりきれない気持ち」はありますか?
北角)民主化が進んで、「これからの自分たちの未来は明るい」と、いろいろな夢を持った人たちが多くいました。「ビジネスをしたい、留学したい」という目標を持っていたけれど、クーデターですべて奪われてしまった。それがいまも立て直せず、先が見えない状態につながっているのだと思います。
飯田)無力感に陥った気持ちの行き場がなく、薬物に手を出してしまう若者がいるということも報じられていますが、気持ちとしてわかる部分もありますか?
北角)私はミャンマー国境を取材していたのですが、そこでもいろいろな思いで酒をたくさん飲むようになった人もいました。その一方で、「自分にできることは何か」を考え、稼いだお金を送ったり、仕事を失っても記事を送りつけるジャーナリストの友人もいました。「自分にできることをしている」というところも大きかったように思います。
飯田)そういうときだからこそ、一隅を照らそうとする方々がたくさんいらっしゃるわけですね。
北角)仲間のために隠れ家を用意したり、食料を支援する姿をよく目にしました。
クーデター後の混乱で貧困層が大きなダメージを受ける ~物乞いをする人も
ジャーナリスト・佐々木俊尚)いまの経済状況はいかがでしょうか? かなり低空飛行だという話もあるようですが、クーデター以前と比べて、暮らしぶりにも大きな変化はあったのでしょうか?
北角)クーデター後の混乱で大きなダメージを受けています。日常が戻ってきているところもあると聞いていますが、特に貧困層の人たちが大きなダメージを受けているようです。街で物乞い活動をしなければいけないような人も増えたと聞いています。
軍批判は地下活動でしか行えない ~隠れながらインターネットで配信
佐々木)報道の自由や表現の自由など、いわゆる言論活動については未だにまったくできない状況なのか、それともある程度、国軍を批判することも可能なのか。その辺りの状況はいかがですか?
北角)国軍を批判するような報道活動は、地下活動でしかできないと思います。例えば、ジャーナリストが他の仕事を持ちながらヤンゴンに潜伏し、隠れながら記事をインターネットに配信する。もしくは市民の方から情報を得て、タイや欧州などにある編集部に記事を送り、海外からインターネットを使って報道するということが行われていると思います。
佐々木)インターネットは自由に使えるのですね。
北角)制限がありますので、VPN方式でつなぐ必要があると思います。
いつ誰に密告されるかわからない状況 ~圧政の時代に輪をかけて厳しい
飯田)言論環境等を考えると、2011年に民政移管されましたが、その前の1990年代、圧政の時代に近い感じになっているのでしょうか?
北角)ミャンマー人に言わせると、それに輪をかけて厳しいと言います。特にいまは内戦状態で、敵味方に分かれて戦っており、お互いにピリピリしている。誰に密告されるかわからないので、喫茶店などでは政治的な話ができない状態にあります。
飯田)隠語を使うような状況ですか?
北角)かなり仲のいい人同士でないと話せないと思います。
ロシアとのつながりが強化
佐々木)中国・ロシアがミャンマー国軍を支援しているという話もあるようですが、国軍の政治的安定が強権国家の連合で支えられているという構図になりつつあるのでしょうか?
北角)特にロシアに関しては、お互いに国際社会から敵視されている、批判されているところもあり、経済面でのつながりを強化しています。ロシア製の戦闘機や爆弾で国軍が市民を弾圧したり、空爆が行われているため批判を浴びています。
日本ができることは何か
飯田)日本ができることはありますか?
北角)今年(2023年)、国軍が選挙を行おうとしているのですが、アウンサンスーチーさんも拘束されており、主要政党の方々も拘束中のなかで行われる選挙が、公正なものであるはずがありません。その選挙を日本が認めず、批判していくことも大事だと思います。
飯田)その選挙を認めない。
北角)また、在日ミャンマー人の方々がいまも毎週末、街頭募金で避難民の方たちにお金を送っているのですが、そういう活動に参加していただく、ご寄付いただくというのも日本人にできることではないかなと思います。
飯田)今後について、北角さんはどんなことを危惧していらっしゃいますか?
北角)やはり、内戦が泥沼化しています。いまは誰も解決策が見出せていないところがあるので、このまま内戦が深刻化して教育や経済、農村部の被害などが広がることを危惧しています。
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