天気予報を外しても「謝らない」と決めていた森田正光が、「謝る」ようになった転機
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年2月22日 11時15分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(2月8日放送)に気象予報士の森田正光が出演。気象予報士の仕事について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。2月6日(月)~2月10日(金)のゲストは気象予報士の森田正光。3日目は、気象予報士の2つの仕事について—
黒木)森田さんは1992年、日本初のフリーのお天気キャスターになられたのですが、1994年から始まった気象予報士の資格試験の第1回目に落ちてしまったそうですね?
森田)新聞にも「森田さん落ちる」と書かれてしまいました。人生のなかでいちばんの失敗ですね。
黒木)しかし、そのことによって、気象予報士の試験があるということが広まったのですよね。
森田)そうかも知れません。
黒木)落ちられたときはどのような感じでしたか?
森田)当時は柏というところに住んでいたのですが、千代田線に乗っているときに悔しくて涙が出てくるのです。それまでの人生のなかで悔し涙を流したり、試験に落ちるということがあまりなかったので、「なんて自分は馬鹿なのだろう」と本当に悔しかったですね。
黒木)私は1980年のはじめのころ、宝塚にいました。劇団在籍中に朝の情報番組に出ていて、そのときにお天気も読んでいたのです。それがあまりにも下手でボロボロになって言っていたのですよ。そのような人が出てきたから「国家資格にしよう」となったのでしょうか?
森田)そんなことはないと思いますが、そのころからコンピューターの精度が上がってきていて、一定程度の基礎知識があれば、「誰が気象予報をしてもいいのではないか」となってきていました。それまでは、気象庁しか天気予報をしてはいけないことになっていましたが、気象を自由化することによって、日本列島全体の産業を広げようということになったのだと思います。
黒木)コンピューターで天気を予想するわけですよね。それにプラスして全国の皆さんに伝えるという、2つのお仕事があると聞きました。
森田)気象予報士の仕事は大きく分けると、「予報する」ということと、「それを伝える」ということがあります。予報する方はコンピューターがやってくれてしまいますので、「数値予報モデル」という計算紙をつくる人たちの仕事は複雑になり過ぎて、普通の人では着いていけなくなってしまっているのです。
黒木)数値予報モデルが。
森田)解説者というのは、その仕組みがどうなっているのか、これから天気がどうなっていくのかということを皆さんにお伝えする仕事だと思います。一流の解説者がたくさん増えると、天気の解説も面白くなるし、防災の効果もあると思います。
黒木)森田さんはわかりやすく、面白くお伝えになりますよね。
森田)しかし、最初のころは「お前そんな言い方はないだろう」と怒られていました。素でやっていますからね。
黒木)天気予報というのは自然界の話ですから、コンピューターでさえも外れてしまうときがありますよね?
森田)ありますね。
黒木)そのことについて、謝らないとおっしゃっていますが。
森田)よくご存知ですね。意固地になって、「これは自分のせいではないのだから謝らない」と決めていた時代がありました。ただ、最近は歳をとるとともに、素直な方がいいなと思っています。あまりひどい外し方をすると謝ります。
黒木)謝るならば、なぜ違う予想になったのかということをご説明なさるのですよね?
森田)説明することが大事だと思っています。昔、NHKのラジオの番組で「どうして外れたのか」ということを淡々と述べたことがありました。それが新聞で「すごくよかった」と褒められたのです。
黒木)新聞で。
森田)それ以来、くどくならない程度に、「どうしてそうなったのか」ということがいい解説につながると思ってやっています。
黒木)予報ですからね。
森田)外れれば、外れるほど、天気予報の精度はよくなっていくのです。天気予報をご覧の皆さんも、天気予報が外れたら、「また天気予報の精度が上がったな」と思っていただけると嬉しいです。
黒木)森田さんが出された『気象予報士という生き方』という本にも、「天気予報も人生も失敗を繰り返すから精度が上がる」と書かれていますよね。
森田)黒木さんは失敗をしたことがありますか?
黒木)たくさん失敗しています。ただ、行動を起こしたから失敗をするのであって、何もしなかったら失敗もしませんよね。何かをやろうと思ってやったので、失敗もたくさんしてきています。
森田)失敗の裏側には必ず行動があったということですよね。
黒木)何もしないで家にいたら何も失敗しませんよね。
森田正光(もりた・まさみつ)/ 気象予報士
■1950 年・名古屋市生まれ。72歳。
■財団法人日本気象協会を経て、1992 年に初のフリーのお天気キャスターとなる。
■1992年、民間の気象会社 株式会社ウェザーマップを設立。
■親しみやすいキャラクターと個性的な気象解説で人気を集め、テレビやラジオ出演のほか全国で講演活動も行っている。
■2005年、財団法人「日本生態系協会」理事に就任。
■2010年から環境省が結成した生物多様性に関する広報組織「地球いきもの応援団」のメンバーとして活動。 環境問題や異常気象についての分析にも定評がある。
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