国益につながる「秘密」を守れない日本のメディアの問題 岸田総理のウクライナ訪問は可能なのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年2月26日 11時45分
![国益につながる「秘密」を守れない日本のメディアの問題 岸田総理のウクライナ訪問は可能なのか](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_420481_0-small.jpg)
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が2月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理のウクライナ訪問について解説した。
![](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2023/01/20230114kaiken1RS.jpg)
2023年1月14日、内外記者会見~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/14usa.html)
岸田総理のウクライナ訪問
岸田総理大臣は2月21日、公明党の山口那津男代表との会談のなかで、ウクライナ訪問について「いろいろな観点から考えたい」と伝えた。安全の確保や情報管理が課題だが、ロシアによるウクライナ侵略後、主要7ヵ国(G7)首脳でウクライナ入りしていないのは岸田総理だけとなっている。
日本の首相が秘密裏に外国を訪問できるような普通の国にならなければいけない ~報道関係の役割が重要
飯田)5月のサミットを前に、ということも言われていますが。
宮家)日本の外交報道を見ていて思うのは、政治部の人が書くので、すぐに政局や政争の話になってしまうことです。
飯田)日本の外交報道は。
宮家)しかし、日本の首相が外国へ出る際は、場合によっては秘密でなければいけないこともある。そういう重要な国益が掛かっているときに、どうして政局や政争で議論するのか。今でも掟破りがあるではないですか。先日も「オフレコ破り」の議論がありましたが。
飯田)オフレコ懇談で話したことを書いてしまったという。
宮家)日本の首相が必要なときに、秘密裏で外国を訪問することを含めて、日本はそれができるような普通の国にならなければいけません。そのためには当然のことながら、報道関係者の役割が極めて重要なのです。
米バイデン大統領のウクライナ訪問時にはメディアも同行 ~秘密を守るアメリカのメディア
宮家)今回、バイデンさんがウクライナへ行きました。米軍は駐留していません。米軍関係者も事前に入っていると思いますが、ほとんど全部をウクライナ軍に頼って訪問したのです。その際はメディア関係者も2人連れていっています。
飯田)代表で2人。
宮家)その人たちは完全なオフレコで同行したわけです。
飯田)アメリカを発つとき、既に携帯電話を預け、オフにしていた。
宮家)そうです。そこで彼らが「ウクライナに行くなどとんでもない、これはオフレコにならないだろう」とは言えないでしょう。
飯田)「これは重要で報じるべきものだから報じるのです」などとなってしまったら。
宮家)それをやったら、大統領はどこへも行けません。普通の国ではあり得ませんが、それが日本では今でも起こり得るわけです。そして(この時期にウクライナに行くことは)危険ではないかという議論もある。それは危険に決まっていますが、アメリカはロシアに事前通告しているのですよ。
飯田)そうですね。
宮家)ロシアもそれはわかっているのです。だから攻撃しなかった。いまのウクライナのような国に行こうと思ったら、それが常識だと思います。ひと昔前のイラクやアフガニスタンに行くのと同じですよ。
メディアは国益の足を引っ張るようなことはやめるべき
宮家)報道合戦は大事かも知れませんが、国益の問題があります。国益のなかで報道機関が果たす役割も当然、あるのです。「すべて政府に協力しろ」と言っているわけではありません。しかし、「国益の足を引っ張るようなことはやめましょう」というようなコンセンサスができないものですかね。
飯田)岸田総理がウクライナを訪問するのならば。
宮家)今回はいいチャンスですから、日本は報道機関を含めて普通の国になりましょうよ。それができれば、日本もそれなりの仕事ができるようになる。いまのままでは難しいです。
「国益を考えながら報道機関の責任を果たす」というバランスが必要
飯田)「戦争を回避するためには外交なのだ」と言うのであれば。
宮家)そう言うのであれば、ですよ。それで秘密を守ることができず、「行けなかったのか。何をやっているのだ」と批判するのはおかしい。それも掟破りではないですか。普通の国では起こり得ないことが、残念ながら起こり得てしまう。
飯田)日本では。
宮家)オフレコ破りは私自身も40年前に経験したことがあります。40年前ですよ。40年前から変わっていないのです。
飯田)40年前ですか。
宮家)普通の国の普通のジャーナリストなら、こんなことは絶対にしません。「国益を考えながら報道機関の責任を果たす」というバランスが取れてもいいのではないでしょうか。主要国のジャーナリストはできているはずです。途上国は知りませんが。
秘密裏の情報がメディアに漏れてしまうことも
飯田)メディアに関する問題や、総理の海外出張に関しても国会への通告が必要だという、国会との兼ね合いの部分があります。その時点で、国会を秘密会で行えるかと言うと、秘密会を開いたところで情報が漏れるかも知れないし、しかもそれが報じられる国である。
宮家)もちろん、オフレコが掛かっていないところから漏れたら、それは報じますよね。
飯田)そうですね。
宮家)ですから(海外に行くような場合に)国会へ説明するときも、秘密裏に通告して、その秘密を守れるようなシステムができているのかどうか。おそらくできていないですよね。
飯田)そちらの部分もないし。
宮家)成熟した民主主義国家であれば、そういうシステムがあって然るべきではないでしょうか。
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