賃上げよりも「物価対策を優先」するべき そのために消費税減税を
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年3月9日 17時35分
![賃上げよりも「物価対策を優先」するべき そのために消費税減税を](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_423315_0-small.jpg)
ジャーナリストの鈴木哲夫が3月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。政府が3月15日に開催する方向で調整に入った政労使会議について解説した。
![](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2023/03/20230224kaiken01RS.jpg)
2023年2月24日、冒頭に発言する岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202302/24kaiken.html)
政府、8年ぶりの「政労使会議」を15日開催で調整
政府は3月8日、2023年春闘などでの物価上昇を超える賃上げ実現に向け、政府・労働界・経済界の代表による「政労使会議」を15日に開く方向で調整に入った。
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飯田)政労使会議については、国民民主党がかなり言っていましたよね。
鈴木)どちらかと言うと、連合含めて国民民主が政府との対立路線にするというよりは、是々非々という表現もしていますが、話し合いをしようということです。
飯田)話し合いを。
鈴木)特に労の部分ですよね。一緒にやることで解決できるかと言うと、私は悲観的です。対決構図をつくれとは言いませんが、労働側がもう少し実態を主張していかなければならないのかなと思います。話し合いというよりは、まず現状を訴えることからしっかり進めて欲しいと思います。
大企業は内部保留があるので賃上げできるが、中小は苦しい
飯田)賃上げの話でいま報道されているところだと、大企業に関しては全体として上がる雰囲気のようですね。
鈴木)私は大企業トップの人たちにも取材する機会があり、中小企業の会合などにも呼ばれるのですが、大企業が賃上げできるのは内部留保があるからです。大企業が賃上げすることで平均も上がっていきます。しかし、中小企業の実態を考えると、中小企業も5割~6割が今回は賃上げするのだと無理して頑張っていますが、内部留保から持ってくる状況とは違うので、相当無理をしているのです。
飯田)中小企業の場合は。
鈴木)賃上げ率についても、かなり高いのかと言うとそうでもない。中小の実態としては、相変わらず苦しいところがあります。
物価の上昇で実質賃金は下がっている ~さらに継続的に賃金を上げることは現実的ではない
鈴木)もう1つ、厚労省のデータとして出たのが、実質賃金についてです。実質賃金は、給料が上がっても物価などが高ければ、そちらにお金を使ってしまうのだから、実質的には上がらない。この実質賃金が、1月の数字だとマイナス4.1%でした。「これから給料が上がる」と言っていますが、実質賃金は下がってきているのです。
飯田)額面は増えているけれども、それ以上にものの値段が上がっているから、「おかしいな、手元に残らないぞ」とあとから感じる。
鈴木)松野官房長官はそれに対して、賃金を上げても物価が高くて結局追いついていかないから、「さらに賃金を継続的に上げる」と言うのです。果たして可能なのでしょうか? 「賃金を何倍にも上げるような流れをつくりたい」というのは目標であり、夢物語ならいいのですが、現実はそうではありません。
物価対策として消費税減税や生活関連品には軽減税率を実施する ~賃上げよりも物価対策をするべき
鈴木)やはり、カンフル剤的に1年~2年の限定でもいいので、賃上げをお願いするよりも、物価高対策として思い切って消費税を減税する。あるいは軽減税率分、つまり生活に関連するものだけはゼロにするなどの対策を行い、この1~2年を乗り切っていく方が、生活者にとっては実のある話ではないかと思うのです。
飯田)そうですね。
鈴木)トップ同士で「政労使」と言っても、物価上昇などについてはいろいろ手を打つから、賃金も上げてくださいとなると、「物価が上がってまた賃金も上がる」ということの繰り返しになってしまいます。帝国データバンクによると、2023年3月には、3442品目の食品が値上げされるということです。また、6月くらいまでに値上げを発表している食品もありますよね。
飯田)年度替わりなどで、いいタイミングになってしまうのですよね。
鈴木)業界の方などと話すと、原材料などが上がれば3ヵ月後くらいに影響が出てくるから、いまが苦しければ、3ヵ月後にはまた値上げになっていく。それらを見通すと、まだしばらく続きそうですよね。賃金を上げていっても追いつかない。それなら賃金を上げるのではなく、物価高対策を行うべきではないでしょうか。
子育てや少子化対策の財源をどうするか ~岸田総理「社会保険全体で財源を考える」
飯田)電気・ガス・水道の値段は、各企業に補助金を入れる形にしていますが、それなら減税などをしてもらった方が可処分所得は残るよな、とも思います。
鈴木)そうなのです。しかし、なかなか財務省はやりたくないわけです。財務省の手のひらに乗っていると実行できないのかも知れませんが、岸田さんは思い切ってやるべきだと思います。賃上げではなく、物価高対策を優先するべきです。
飯田)給与明細を見ると、社会保障費もかなり取られているなと感じます。
鈴木)気付かないうちに。国会では、いま他のことに話題が移ってしまい、議論が止まっている感じですが、子育てや少子化対策の財源もどうするのか。これについて、岸田さんは「社会保険全体で財源を考える」という微妙な言い回しをしています。社会保険は福祉関連や医療、介護や年金など、すべてが入っています。
年金から持ってくる可能性も ~そのために介護のサービスが低下してしまっては本末転倒
鈴木)少子化対策でこれからお金を増やすとなると、その分どこかからお金を持ってこなければいけない。増税するのかしないのか、これもなかなか言いません。増税はしないかも知れないけれど、「社会保険全体で考える」と言うのなら、そこに使うお金を他から回す可能性もあります。
飯田)ありますね。
鈴木)そうすると、年金額がまた減っていくとか、さらに年金を払わなければいけないとか。介護などはサービスが低下してしまいます。捻り出したお金を少子化対策に持っていかれても、本末転倒ですよね。
地方に付け回しをする可能性も
鈴木)そこが議論されていませんし、岸田さんの言葉には微妙にそのニュアンスが隠れているのです。他にも「地方との関係」というようなことも言っています。何かと言うと、地方に付け回しをするということです。
飯田)地方に付け回しをする。
鈴木)それらを今後、議論しなければなりません。賃上げを一生懸命お願いするよりも、まずは目の前の物価高対策を行うべきだと思います。最もわかりやすいのは消費税減税です。
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