電波法が妨げる日本のドローン運用
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年3月30日 17時45分
![電波法が妨げる日本のドローン運用](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_427370_0-small.jpg)
安全保障アナリストで慶應義塾大学SFC研究所上席所員の部谷直亮が3月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ドローン運用と電波法について解説した。
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※画像はイメージです
ドローンをめぐるさまざまな規制 ~充電回数を記録するなど自衛隊内でのよくわからない規制も
世界各地でドローンの重要度が増しているなか、防衛省は今後5年間で約1兆円のドローン投資を見込んでいる。しかしながら、1950年に制定された総務省所管の「電波法」がドローン運用に立ちふさがっていると言われる。
飯田)電波法がドローンの活動を狭めているところがあるのですか?
部谷)結果的に電波法のもたらす秩序が障害になっている面はあると思います。ドローンをめぐる規制は山ほどあるのです。
飯田)航空法で高度が制限されたり。
部谷)自衛隊は航空法の適用外なのですが、航空法に準じた規則があります。自衛隊は物品管理がとても厳しいので、陸自の小型ドローンのバッテリーの充電回数もメモ帳に書かなければならないのです。
飯田)そうなのですか!
部谷)インテリジェントバッテリーだから、「何%しか充電できない」などとわかるではないですか。「なぜ充電回数を書いているのですか?」と聞いたら、「充電回数を書かないと新しいものを買えないから記録しろと言われた」と話していました。
飯田)予算がつかない。
部谷)変に厳しくなってしまっているのです。ドローンが落ちたら、10万円のものであっても何百人もの隊員で探すとか。予算がつかないというより、内部のよくわからない規則ですよね。
飯田)確かに演習が終わったら、薬莢を全部拾って帰るというような話も聞きました。
部谷)そういう感じです。
アマチュア無線免許が必要な5GHz帯の周波数 ~自衛隊が市販されているドローンを使うと2.4GHz帯しか使えず、動画を送ると不安定に
飯田)電波法に関して、ネックになるのは周波数帯の部分ですか?
部谷)周波数帯と出力です。周波数帯はラジオのチャンネルのようなもので、出力は威力です。自衛隊は電波法の適用外ですが、では自衛隊がフルで自由に電波を使えるかと言うと、総務大臣の許可がないと使えない周波数があるのです。
飯田)総務大臣の許可が必要な周波数。
部谷)民間は電波法の秩序に基づきます。5GHz帯はETCとバッティングするので、アマチュア無線の免許がないと使えません。
飯田)5GHz帯は。
部谷)自衛隊が市販されているドローンを買うと、2.4GHz帯しか使えないのです。2.4GHz帯で機体を動かし、5GHz帯で動画を送るドローンがよくありますが、同じ2.4GHz帯で使うとバッティングしてしまうのです。通信が詰まってしまい、不安定になってしまう。
飯田)バッティングしてしまうために。
出力も制限され、自衛隊でもフルに使えない
部谷)もう1つ、出力が弱いと威力がないので遠くまで届きません。カウンタードローンの業者などは、電波法だと1Wまでしか使えない。1Wとなると、場合によっては100Wに対応できるカウンタードローンの射程が、100m~数100mになってしまう。射程が短くなるのです。
飯田)出力が小さければ遠くまで飛ばせない。
部谷)自衛隊が有事にフルで使いたければ、バッティングしないように(出力や周波数帯等の)許可が必要になります。
怪しいドローンが飛んできてもカウンタードローンをフルで使えない自衛隊 ~海外にはそのような規制はない
部谷)では、グレーゾーン事態のときにどうするのか。怪しいドローンが飛んできたので、カウンタードローンのスイッチを入れてフルで使いたいと思っても、他に影響するかも知れないのでダメだという話になります。
飯田)ダメだと。
部谷)つまり、自衛隊がフルで使える周波数帯と、フルで使えない周波数帯があるのです。でも海外はそんなことを気にせず飛ばしています。海外からの観光客の方は、日本で海外仕様のドローンをそのまま飛ばすこともあります。
飯田)5GHz帯のものも飛んでいたりする。
部谷)そうなのですよ。本当は法律違反ですが、それで事故が起きた例は聞いたことがありません。
ドローンを飛ばしているとスマートフォンに乱される場合もある
飯田)5GHz帯で飛ばすと、ETCに干渉することがあるのですか?
部谷)そう言われていますが、私は(干渉した例を)聞いたことがありません。2.4GHz帯のなかでも、民生ドローンはスマートフォンなどを使用するような狭い部分に押し込められています。
飯田)2.4GHz帯は、基本的にスマホなどが使われるのですか?
部谷)Wi-Fiなども使われます。「電波のごみ箱」とよく言われますけれど。
飯田)電波のごみ箱。
部谷)工場用などにも使われるので、逆にドローンが不安定になるのです。
飯田)いろいろな人が電波を取り合うから。
部谷)混信してしまう。よくドローンの方がスマホより強いと言われますが、実際に使ってみると、スマホによくドローン側が乱されてしまうのです。
飯田)ドローンの方が。
部谷)軍用スペックの2.4GHz帯ドローンを飛ばしているとき、スマートフォンを持った人が集まってくると、同じ2.4GHz帯なので軍用ドローンの画面が乱れてしまうのです。でもスマホは使えます。
ドローンを使ったイベントではお客さんにスマートフォンを機内モードにしてもらわなければならない ~そんなことをするのは日本だけ
飯田)スマホは使えるのですか。ドローンを編隊飛行させて形をつくるようなイベントなどは大変ですね。
部谷)先日、ウルトラマンのドローンショーのイベントがありました。民生品で2.4GHz帯に圧縮したものですが、スマホとバッティングして飛ばせなかったのです。そのため会場で「皆さん、スマートフォンを機内モードにしてください」とお願いしていました。そんな恥ずかしいことをしなければならないのは日本くらいです。海外のドローンショーでそんな話は聞いたことがありません。
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