EU内でフランスが孤立する可能性も 仏マクロン大統領「ヨーロッパは米中に追従すべきでない」と主張
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年4月11日 11時35分
再選を決めパリの勝利演説の会場に登場したフランスのマクロン大統領=24日(ロイター=共同)
地政学・戦略学者の奥山真司が4月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国訪問中に仏マクロン大統領が語った台湾有事に関する発言について解説した。
仏マクロン大統領が台湾問題について「ヨーロッパは米中に追従すべきでない」と述べる ~ビジネス優先の訪中だった
フランスの経済紙「レゼコー」は4月9日、マクロン大統領が中国を訪問中に行ったインタビューを掲載した。マクロン大統領は、台湾情勢の急変はヨーロッパの利益にならないと明言。「最悪なことは、ヨーロッパがアメリカのリズムや中国の過剰反応に追随しなければならないと考えることだ」と強調した。マクロン大統領は5日~8日に中国を訪問しており、習近平国家主席と異例の連日会談に臨んだ他、フランス大手企業のトップら50人あまりを同行させた。
飯田)大歓待を受けたことが、フランスの公式ツイッターの映像などでも見え見えでした。
奥山)フランスにエアバスの主力会社があるのですが、160機も飛行機の契約を取ってきたそうです。明らかにビジネス優先で、「人権やチベット、ウイグルなどの問題はどうしたのだ」と思います。
飯田)本当ですよね。自由・人権・博愛ではなかったのかと。
中国に警戒心が強まっているなかでのマクロン大統領の今回の発言 ~EU内でフランスが孤立する懸念も
奥山)EU内で「台湾有事などがあった場合には中国に厳しく当たる」というコンセンサスがあったはずなのですが、空気が読めていない発言をしてしまったというか、EU内でフランスが孤立するのではないかという懸念が少しあります。
飯田)あのような映像を見ていると、イギリスのキャメロン政権時代に、思い切りパンダをハグしたというような感じの……。
奥山)当時のイギリスは「黄金時代」と言っていました。そのあと、2016年前後から中国が浸透工作を仕掛けていることが、メディアの方にも徐々に発覚していきました。警戒感が強まったなかで、逆にマクロンさんが中国へ寄っていったのは、我々自由主義陣営としては「余計なことをしてくれたな」という印象です。
王毅氏による「地ならし」が功を奏している ~ドゴール政権時代にもアメリカと違う独自のスタンスを取ったフランス
飯田)伏線のようなものはあったのですか?
奥山)前に外交部長を務めていた王毅さんがヨーロッパを訪問し、地ならしを行っていたところがありました。それが成功したということでしょうか。
飯田)王毅さんが。
奥山)今回、フランスが「台湾有事は我々とは関係ない」というようなスタンスを取ったおかげで、アメリカ側、特に保守派が激怒しています。アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙は保守的な意見を書くことで有名ですが、「最悪のタイミングで、ドゴール主義的な閃き」と書いています。
飯田)ドゴール主義的な閃き。
奥山)ドゴールさんは、かつてNATOに入らなかったことがありました。50年代~60年代、ソ連に対抗しなければならないときに、「我々はアメリカとは別のスタンスで独自に行きます」と足並みを揃えなかった過去があります。
飯田)ドゴール大統領時代に。
奥山)そのときと同じで、「フランスはアメリカとは別のスタンスでいきます」と示し、それに対してアメリカのメディアが怒っているという状況です。また、「マクロン氏が対ロシア戦争でアメリカ国民の支持を減らしたいと思っているなら、これ以上の上手い発言はなかっただろう」と皮肉っぽい記事も出ていました。
台湾有事においては日本とオーストラリアだけが頼り ~「ヨーロッパは無責任」とするアメリカの識者
奥山)トランプ政権で官僚を務めたエルブリッジ・コルビーさんがツイッターで書いていたのですが、「欧州は台湾有事があっても支えないということがわかった。欧州は頼りにならない。台湾有事においては日本とオーストラリアだけが頼りだ」としっかり言っています。
飯田)ヨーロッパは頼りにならないと。
奥山)我々としてはヨーロッパが一緒に動いてくれることによって、中国の体制に対抗していこうという思いがあるのですが、アメリカの識者のなかには、「ヨーロッパは無責任だ」という態度を取る人もいます。
飯田)失望だと。
疑問が残るマクロン大統領の発言 ~インド太平洋に関してどう考えるのか
奥山)我々としては、「台湾有事に関して国際的な協力が得られない」ことがわかったという意味では、ショックな出来事ではありますが、フランスの伝統からすれば「アメリカとは別の対立軸をつくって我々がリードしたい」という気持ちがあるのだろうと思います。
飯田)彼らも太平洋に海外領土を持っていますし、当事者であるはずなのですが。
奥山)インド太平洋に関して、必ず彼らは出てくるのですが、それが来ない。一体どうするつもりなのか、国際会議の場でフランスは詰められていくのではないでしょうか。
飯田)そうですよね。G7で岸田さんが何を言うか気になります。
奥山)ぜひ詰めていただきたいですね。
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