防御率0.00 「虎の村神様」村上頌樹のストレートはなぜ打てないのか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年5月1日 17時20分
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は現在25イニング連続無失点中、防御率0.00と圧倒的な投球を見せる阪神タイガース、村上頌樹にまつわるエピソードを紹介する。
4月のプロ野球では、何人もの投手が「ゼロ行進」の活躍・快投劇を見せてくれた。
西武の今井達也は開幕から19イニング連続無失点。「北のサブマリン」日本ハムの鈴木健矢も19イニング連続無失点中。他にも、ロッテの佐々木朗希と広島の九里亜蓮は20イニング連続無失点。髙橋光成は21イニング無失点と好投を見せた。
そんななか、開幕から4試合に登板し、現在25イニング連続無失点を継続中なのが阪神タイガースの村上頌樹だ。
4月1日のDeNA戦で1イニングを投げ、無失点に抑えると、12日の巨人戦では交代劇で物議を醸した「7回パーフェクトピッチ」で無失点。22日の中日戦では被安打2でプロ初勝利を初完封で飾ると、29日のヤクルト戦では8回を投げてまたも被安打2での無失点。得点を許さないどころか、ここまで4試合25イニング、打者81人に投げてヒットを5本しか許していない。防御率はもちろん0.00。規定投球回にも達し、セ・リーグの防御率ランキング1位に躍り出た。
決して魔球のような変化球があるわけではない。球速は最速150キロで、ほとんどは140キロ台中盤。身長も174センチと小柄な方で、佐々木朗希のように長身から投げ下ろすスタイルではない。それでも打ち取れているのは、球団OBの藤川球児を彷彿とさせる「回転数にこだわったストレート」を武器とするからだ。
大学時代のインタビューでは、藤川球児のストレートが目標であること。そのために「回転数」を意識していると、こんな言葉を残していた。
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『子どものころから阪神の藤川球児さんが好きで、ああいう浮き上がるようなストレートを投げたいと思っています』
『低い位置のリリースから回転数が多い真っすぐを投げれば、打者は高い位置からの真っすぐよりも浮き上がってくるように感じる』
~『週刊ベースボールONLINE』2020年4月2日配信記事 より
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さらに振り返れば、センバツ優勝投手になった智弁学園時代から際立ったストレートを投げていたと、当時のチームメイトが明かしている。
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『低めのボールが垂れないので、よく親指を突きました。普通の投手の感覚でいくと指が危ない。大学の時に知りましたけど、あいつの直球は2600回転以上ある。プロの平均でも2400~2500くらいだと思うので、やっぱり、エグかったんだなと』
~『日刊スポーツ』2023年4月23日配信記事 より(智弁学園時代のチームメイトの言葉)
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高校時代から脚光を浴び、東洋大学でも1年春に東都大学リーグの新人賞受賞。3年春には投手3冠とベストナインを獲得するなど、村上への評価・注目度は学生時代から実は高かった。
それでも、ドラフト順位が5位と低かったのは、4年秋に負ったケガの影響。そして、コロナ禍でアピールチャンスが少なかったことに起因する。ただ、その試合機会のなかったコロナ禍も、ストレートを強化する重要な時期になったという。
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『上半身ではなくて下半身の力を使うことを重点的にやってきました。投球時の動画を撮ったり、地元が同じ後輩のキャッチャーに聞いたりして、試行錯誤していました。そのおかげか、グラウンドに戻って来たときにストレートが強くなったと言われました』
~『野球太郎 No.036 2020ドラフト直前大特集号』より
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今季がプロ3年目の村上。過去2年間の1軍成績は0勝1敗、防御率16.88と散々な内容だったが、実は2軍では圧倒的な力を見せていた。
プロ1年目の2021年は2軍で10勝、防御率2.23を記録し、最多勝、最優秀防御率、最高勝率の投手三冠。昨年(2022年)も2軍の最優秀防御率、最高勝率の二冠。74奪三振も最多記録だった。2軍のタイトルホルダーは1軍で成功しない、といった球界ジンクスを払拭しての、3年目での見事な飛躍と言える。
その飛躍のきっかけとなったのは、オフに青柳晃洋の自主トレに参加したこと。大学時代から意識してきた「下半身の重要性」を再確認できたのだ。キーワードは“足を着いて投げる”意識の徹底。投球時の左足の使い方を青柳から学び、これまでよりも力まずにキレのあるストレートを投げられるようになったという。
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『青柳さんは120球ぐらい投げても球速が落ちない。足の力をしっかり使って投げられれば、長いイニングを投げられる』
~『スポニチアネックス』2023年4月23日配信記事 より
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長いイニングを安定して投げられるようになった村上。その成果として注目したいのが四死球の少なさだ。プロ1年目の1軍登板では5イニング1/3で与えた四死球は「5」。ところが、今季はここまで25イニングを投げて四死球はわずか「1」と、見事な制球力を見せている。
この安定感ある投球をどこまで続けることができるのか。早くも「虎の村神様」の異名で呼ばれ始めた男の5月の投球から目が離せない。
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