アメリカ本土からミサイル攻撃を仕掛けるドローン・パイロットの「心の闇」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年5月16日 17時35分
地政学・戦略学者の奥山真司が5月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナの情勢からテクノロジーの進歩の弊害について解説した。
ウクライナのゼレンスキー大統領がイギリスのスナク首相と会談
ウクライナのゼレンスキー大統領は5月15日、スナク首相と会談した。イギリス政府は声明を出し、スナク首相が数百発の防空ミサイルや飛行距離が200キロを超える攻撃用の無人機、数百機を含むウクライナへの新たな兵器の供与を発表した。またゼレンスキー大統領はイタリア、ドイツ、フランスを訪問し、首脳と相次いで会談。G7広島サミットを前に、改めて協力を確認する狙いもあるとみられる。
飯田)一方で、ウクライナはまた大攻勢を始めているという話もあります。
米軍の「MQ1」「MQ9」と呼ばれる大型ドローン ~アメリカ本土からモニターを見ながら攻撃
奥山)武器の供給が大事になると思うのですが、私が気になるのはドローンです。
飯田)ドローン。
奥山)今回の戦いでも、簡易的なドローンを使って、塹壕にひそんでいるロシア兵に上から手榴弾を落とすシーンなども出ています。
飯田)ありますね。
奥山)私が気になるのは、米軍が使っているドローンです。ドローンと言っても、24時間飛べるようなプロペラ機です。「MQ1」と呼ばれるプレデターと、「MQ9」と呼ばれるリーパーという超大型のものがあります。
飯田)ジャンボジェットのミニチュア版のような感じのものですね。
奥山)そこからヘルファイアミサイルという、地上攻撃用のミサイルを撃つ。これはリモートで操作しているので、無人機というわけではありません。
テロリスト攻撃で行われた「標的殺害」作戦 ~アメリカで日常生活を送りながら攻撃に参加するドローンのパイロット
奥山)アメリカ本土から、アフガニスタンやイラクで攻撃する。タリバン掃討やISISなどのテロリストに対する攻撃、「標的殺害」作戦で使われているものです。
飯田)標的殺害。
奥山)既に『ドローン・オブ・ウォー』や『アイ・イン・ザ・スカイ』という映画にもなって、一部の専門家からは高い評価を受けています。
飯田)そうなのですね。
奥山)映画のなかでも描かれていますが、ドローンのパイロットはアメリカで日常生活を送っていて、朝は幼稚園に娘を送り届け、そのあとに攻撃するのです。アメリカからモニターで行っているので、実際に戦場へ行って爆弾を落としているわけではありません。
心の闇を抱えやすいアメリカ本土からミサイル攻撃を仕掛けるドローンのパイロット ~その扱いは「ほぼ事務員」
奥山)それでも彼らは心に闇を抱えやすく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になる人も少なくない。現地で戦闘機に乗って飛んでいる人と、ストレスのレベルは変わらないという研究成果もあるそうです。
飯田)現地で闘う人と変わらない。
奥山)モニターで見て、1万キロ向こうにいるようなテロリストをミサイルで撃つのですが、自分も戦場にいるのと同じくらいの精神的な抑圧が掛かるのです。
飯田)アメリカ本土からの攻撃でも。
奥山)ただ、残念なことに米軍内での扱いは、現地でF15などを飛ばしているパイロットのような扱いではなく、「ほぼ事務員」という扱いなのだそうです。
飯田)事務員。
奥山)モニターで見ながらですけれど、タリバンなどのテロリストを殺しているので、「自分が戦っている」という意識はあるのです。しかし兵士として認められていないので、精神的にケアされず、勲章も貰えていないという複雑な事情があることがわかりました。
飯田)なるほど。「安全なところにいるからストレスがないだろう」と思われるけれど、そうではない。
戦場で敵を殺すよりも、アメリカ本土からリモコンで殺害する方が罪の意識が高くなる
奥山)有人機のパイロットや現地で戦っている人の方が、アメリカ本土でモニターを見て攻撃している人より、ストレスがあると思うではないですか。しかし、「いつか自分が殺されるかも知れない」と思っている人の方が、相手を殺してもトラウマになりにくいらしいのです。
飯田)なりにくいのですか。
奥山)戦場で敵を殺す作業は、「自分も大変だったのだから、相手を殺しても大丈夫だよね」と、心のなかで納得できるそうです。
飯田)そういう精神状態なのですか。
奥山)ところが、「リモコンで殺している」という意識があると、自分の罪の意識がより重くなってしまう。
飯田)なるほど。
奥山)テクノロジーが進んでいくと便利な面もありますが、「戦う人のメンタリティのケアがなくなってしまうのではないか」という問題が見えてきます。テクノロジーが進むことで、また別の問題が起きているというところに驚きました。
飯田)アメリカでは、そういう研究が行われているのでしょうか?
奥山)10年前くらい前から実施しているようです。
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