「ほたる」が野川に復活! 「野川ほたる村」が実践した「再生への分析」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年5月17日 17時20分
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
東京都内を流れる多摩川の支流の1つに、「野川」があります。国分寺にある日立の研究所の敷地内が水源とされ、武蔵野台地の西の端にある、「ハケ」と呼ばれる崖から湧き出す水を集めつつ、南東へと流れ下っていきます。途中、小金井市、三鷹市、調布市、狛江市を経て、世田谷区の東急線・二子玉川駅近く、いわゆる“ニコタマ”で多摩川に合流する一級河川です。
「野川」が流れる小金井市内には、1986年から35年以上にわたって地道な活動を行っている団体……「野川ほたる村」があります。
ほたる村は、当時の都立野川公園事務所の所長の方が、地元の皆さんに「ほたるを復活させませんか?」と提案したことをきっかけに、住民参加型の公園づくりを目指すグループとして生まれました。
当初は多摩動物公園や井の頭自然文化園から、ゲンジボタルや餌のカワニナを提供してもらい、メンバーが自宅で幼虫を育てる「ほたるの里親制度」に取り組んでいました。孵化した幼虫は、野川公園の自然観察園に整備された「ほたるの里」に放たれます。観察会が開かれた際には、多くの皆さんが参加して賑わいました。
しかし、「ほたるの里」に放たれたほたるは、そう簡単に定着してくれません。「ほたる」はとてもデリケートな生き物。そして、餌となる「カワニナ」はもっとデリケートな生き物なのです。しかも、ほたる1匹が育つのに、約30匹ものカワニナが必要だと言われています。
現在、ほたる村の村長を務める江頭輝さんは、1946年生まれ。佐賀県出身の76歳で、50歳のときに小金井へ引っ越してきました。自然豊かな佐賀平野で生まれ育った江頭さんは、東京の行き過ぎた都市開発に疑問を抱いていました。
「本来、自然と住民は共存すべきもの。これ以上、人が身勝手なことをしていたら、やがてブーメランになって私たちに還ってきてしまう」
江頭さんは居ても立ってもいられず、「野川ほたる村」の活動に参加することにしました。
江頭さんが参加したころ、「野川ほたる村」はちょうど活動の転機を迎えていました。そこで、江頭さんは「ほたる村」の活動に一石を投じます。
「ただ『いまある自然を大事にしよう』と言っても説得力がありません。データを取って、私たちがいかに自然に恵まれているのか、明らかにしませんか?」
江頭さんは専門家の力も借りて、野川やそれに隣接する野川公園、武蔵野公園で実際に見られた動物や植物を細かく調査・分析していきました。その結果、植物は約400種類、昆虫は約250種類、鳥は約40種類が生息していることがわかりました。
なかには絶滅の恐れがある「レッドリスト」に載っている種類が、96種もあったそうです。一方、江戸時代以前から生き続けている在来植物は約7割~8割以上もあって、新宿から30分とかからない場所に、希少な自然が残されていることが判明。江頭さんは仕事をしながら、寝る間も惜しんで調査結果をまとめ上げていきました。
そんな地道な作業を20年以上続けて、ようやく報われるときがきました。5年前の2018年6月、野川公園を流れる野川の本流にほたるが現れ、優しい光を放ってふんわり舞うようになりました。次の年は最大35匹、さらに次の年は50匹ものほたるが現れてくれました。
「ほたるの里に放ったほたるは、長い間どれだけ苦心しても増えなかったのに、野川の本流にこれほどのほたるが定着してくれるなんて……これは令和の奇跡だ!」
ほたる村のメンバーが喜び合うなか、江頭さんには何となく心当たりがありました。川にほたるが現れた前年、台風で「ほたるの里」の一帯には水が溢れました。そのとき、ほたるの幼虫とカワニナが広い野川に流出して、一気に育ったのではないか。ほたる自身も30世代以上にわたって命をつないできたことで、偶然、野川の自然環境に適応した遺伝子を持つものが発生したのではなかろうか……。
「その時々のメンバーが長い間、努力を続けてきたことへのご褒美かも知れない」
江頭さんは、物事を継続することの大切さをひしひしと感じています。
今年(2023年)も、野川にほたるの季節がやってきます。江頭さんは「1日たりとも気を抜けない」と気を引き締めます。なかには、悪気はなくても結果的に自然を傷つけている家族連れもいるそうです。昭和のころからくすぶる道路の建設工事計画にも目を光らせなくてはいけません。
「ほたるは豊かな自然環境の再生、清流の再生のシンボルにすぎません。そして、私たち人間も自然の一員にすぎないんです」
丁寧に丁寧に再生してきた野川の自然を次の世代につなぐため、江頭さんの静かな「闘い」は、まだまだ続きます。
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