コロナ明けで賑わう繁華街に「タクシーがいない」という新たな問題
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年5月31日 17時30分
東京都立大学・法学部教授の谷口功一が5月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。3ヵ月ぶりに改善した4月の完全失業率について解説した。
4月の完全失業率2.6%
4月の全国の完全失業率は2.6%で、前月比0.2ポイント低下し、3ヵ月ぶりに改善した。好調な企業業績を背景に、製造業などで就業者数が増えており、総務省は引き続き雇用情勢への影響を注視したいとしている。
飯田)有効求人倍率も1.32倍で横ばいでした。特に飲食やサービスなどが上がっています。
観光客が戻った地方に生まれる問題 ~賑わう夜の街でタクシーや運転代行の車がいない
谷口)インバウンドもかなり戻ってきて、出張などで地方に行くと、たくさんの観光客の方々を目にするようになりました。私の郷里は大分県別府市なのですが、ほぼ観光だけの街なので、コロナ禍では大変なことになっていました。
飯田)コロナ禍は。
谷口)いまは人がたくさん戻ってきています。「コロナが大体終わったな」という状況になったのは4月くらいなのですが、別府で夜のお店を経営するママさんに「最近どうですか?」と聞いたら、「先生、お客さんがたくさん戻ってきていますよ」と言っていました。ただ、大問題があって、タクシーが全然いないのだそうです。
飯田)タクシーがいない。
谷口)別府の夜の街が賑わっているのに、「その日の夜に別府の街を走っているタクシーは1台しかない」と言うのです。
飯田)1台だけですか。
コロナ禍で辞めた運転手が戻ってこない ~戻ってきたインバウンドへの影響も
谷口)この問題は、実はコロナ前からありました。コロナ前、地元の人に「最近スナックに行きますか?」と聞いたところ、「最近サッパリですわ」と言うのです。「もう飽きましたか?」と聞くと、「違うのです」と。金曜日には運転代行で帰るのだそうですが……。
飯田)自分の車の運転を代行してもらって。
谷口)運転代行が3時間待ちなので、それが嫌で飲みに出なくなったという話をされていました。また、コロナ以降、タクシーや代行の運転手さんは高齢の方が多いので、感染を恐れて辞めた方もかなりいたのです。コロナが明けても、それが補充されていない問題があります。いまは都心でも、週末などはタクシーがつかまりにくい状況ですが、地方はもっと大変で、人は来るけれど移動手段であるタクシーが少ない。
飯田)なるほど。
谷口)地方は公共交通機関が東京ほど発達していないので、タクシーがないのは大きな問題なのです。これからインバウンドで復興していくときに、政府としても何か考えてテコ入れしないと、せっかくのインバウンドを活かすことができないと思います。
飲食関係でもコロナ禍で辞めた人が戻ってこない ~人手不足が大きく響く
飯田)人手不足の問題では、夜の勤務なので若い人が就業しにくい問題もあります。そもそも若い人は地元に居付かず、出て行ってしまう傾向がある。
谷口)地方では若い人が少なく、これは出生率の問題とも関連してきます。
飯田)これだけ景気が悪くなったのにプラスして、例えば、子育てしながらフレキシブルに働ける人たちが飲食やサービス業で働いていたところ、コロナ禍で直撃を受けましたよね。
谷口)飲食や水商売では人手不足の問題が深刻です。1度、何かの形で切られてしまうと、また同じような形で切られるのではないかという気持ちがあり、他の業種に移ってしまうのです。そして、その人たちは戻ってこない。飲食は好調なのですが、人手不足が大きく響いていると思います。
コロナ禍で希薄になった人間関係 ~恋愛も難しく、合計特殊出生率にも影響
飯田)東大の仲田泰祐さんなどが研究されていましたが、コロナの影響で独身の方が結婚しないとか、「将来子どもを産まないだろう」といまから想定している若者が増えているそうです。コロナは社会に大きな影響を与えましたよね。
谷口)合計特殊出生率も下がっているという話ですが、実際に大学でも、今年(2023年)になって大教室で講義していると、学生が「大学に来た、という感じの講義だな」と話しているのです。
飯田)大学に来たという感じの講義。
谷口)彼らは大講義を対面で受けたことがなかったのです。講義中もマスクをしていないのは私だけで、学生はみんなマスクをしています。お互いの顔を知らない状態がまだ継続している。大学院生をゼミのあとで飲みに連れていくと、「大学の先生と飲んだのは初めてです」と言うのです。
飯田)コロナだったから。
谷口)彼らは2年生~4年生とコロナが続いたので、大学院に入り、初めて対面でゼミを受けて先生と飲みに行ったそうです。そう考えると、大学の講義や人間関係でもそうなのですから、ましてや恋愛などにはもっと影響があるのではないでしょうか。
飯田)そうかも知れません。
谷口)恋愛しなければ結婚もなく、結婚がなければ合計特殊出生率は絶対に上がりません。その意味でもコロナ禍の3年間は、あとになって大きく響いてくると思います。
飯田)今後も数字が伸びなかったり下がったりして、「なぜだ?」と考えたときに、「コロナか!」とみんなが思うかも知れませんね。
谷口)どんな形で影響が出てくるのか、少し怖いですね。
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