“日本の名優”から“世界の名優”へ さらに大きく羽ばたく役所広司の魅力 ~カンヌ国際映画祭 最優秀男優賞受賞
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年6月2日 11時55分
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1121回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画・ドラマを発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
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※写真は「第76回カンヌ国際映画祭」にて。(c)Kazuko Wakayama
5月16日から27日まで開催された「第76回カンヌ国際映画祭」。今年(2023年)も世界各国から多くの魅力的な作品が集まり、上映されました。
そんななか、ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』(原題)に主演した役所広司が、最優秀男優賞を受賞。『誰も知らない』の柳楽優弥(2004年)以来、19年ぶり2人目の快挙となりました。
そこで今回は、受賞作『PERFECT DAYS』の製作秘話を交えながら、俳優・役所広司の魅力に迫ります。
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※写真は「第76回カンヌ国際映画祭」にて、ヴィム・ヴェンダース監督と。(c)Kazuko Wakayama
巨匠ヴィム・ヴェンダース監督も「最高の俳優」と賞賛!
名実ともに日本を代表する俳優である、役所広司。国内外の多くの映画に出演し、その活躍ぶりはもはや説明するまでもないでしょう。
そんな第一線で活躍し続けている俳優・役所広司を語るうえで外せないのが、『Shall we ダンス?』。社交ダンスを通して人生を見つめ直す中年男性をコミカルかつハートフルに演じ、その年の日本国内の映画賞で主演男優賞を総なめに。
そしてカンヌ国際映画祭と言えば、「第50回カンヌ国際映画祭」で作品賞に相当するパルム・ドールを受賞した『うなぎ』も代表作のひとつ。
このとき、ひと足早く帰国してしまった今村昌平監督に代わり、授賞式でスピーチしたのが役所さんでした。今回のカンヌの受賞式での様子を見て、26年前の出来事を思い出した映画ファンも少なからずいることでしょう。
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『PERFECT DAYS』(原題)
映画『PERFECT DAYS』(原題)は、東京・渋谷の公共トイレを舞台とした物語。
本作で役所広司が演じたのは、公共トイレの清掃員として働く平山。毎日、昔から聴き続けている音楽に耳を傾け、お手製の掃除道具を駆使してトイレをピカピカに磨き上げ、休日がやってくると、古本の文庫を購入して読み耽る。
同じことを繰り返す日々のようで、そこには常に、新鮮でささやかな喜びがある。素朴な日常生活のなかに楽しみを見出す主人公を、繊細に体現しました。
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※写真は「THE TOKYO TOILET Art Project with Wim Wenders」記者発表会にて。
実はこの映画は、「THE TOKYO TOILET(ザ トウキョウ トイレット)」というプロジェクトの一環として製作されたもの。
そもそもこのプロジェクトは、多様性を受け入れる社会の実現を目的に、プロジェクトオーナーで本作のプロデューサーを務める柳井康治氏が、2020年よりスタート。渋谷区にある17の公共トイレを改築し、ジェンダーを問わず、誰もが快適に使用できる公共トイレを目指して、日々、専属の清掃スタッフによるメンテナンスが行われています。
建築家の安藤忠雄氏をはじめとする16人のクリエイターが作り上げたトイレは、どれも実に個性的。近くを通りかかった際、公衆トイレだと気づいて驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなプロジェクトを、より多くの人に知ってもらおうという意図で製作されたのが、映画『PERFECT DAYS』。「アートの力で世の中を変えていく」というクリエイティブかつチャレンジングな企画から派生した映画をカンヌが受け入れたということは、世界的にも非常に意義深いことと言えるでしょう。
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※写真は「第76回カンヌ国際映画祭」にて。(c)Kazuko Wakayama
振り返ってみれば、2022年5月に私が司会を務めた製作発表時には、まだ脚本も完成しておらず、謎に包まれていた本作。
日本の公共トイレと、それを気持ちよく利用できるようにと清掃に勤しむスタッフの姿に「small sanctuaries of peace and dignity(平和と高貴さを持ち合わせたささやかな領域)」を見出したというヴィム・ヴェンダース監督。その言葉を象徴する、静謐ななかに美しさが垣間見える珠玉の作品となりました。
カンヌでの公式上映後、主人公・平山を演じた役所広司への評価は、まさに“うなぎ”のぼりとなり、男優賞最有力との評判が広まったとのこと。また海外メディアからは早くも、アカデミー賞など国際的な映画賞に本作が絡んでくる可能性を示唆する声も上がっているとか。
“日本の名優”から“世界の名優”へ。さらに大きく羽ばたく役所広司。
受賞後のインタビューで「日本の、世界の映画がもっと素晴らしいものになるように、これからも努力をしていきたい」と語った役所さん。今後も観客の心に響く名演に期待が高まります。
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『PERFECT DAYS』(原題)
■PERFECT DAYS (原題)
2023年公開予定
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬
製作:柳井康治
エグゼクティブ・プロデューサー:役所広司
プロデュース:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬、國枝礼子、矢花宏太、ケイコ・オリビア・トミナガ、大桑仁、小林祐介
撮影:フランツ・ラスティグ
インスタレーション:ドナータ・ヴェンダース
編集:トニ・フロシュハマー
美術:桑島十和子
キャスティング・ディレクター:元川益暢
ロケーション:高橋亨
スタイリング:伊賀大介
ヘアメイク:勇見勝彦
制作プロダクション:Wenders Images Wenders Foundation Spoon
(C)2023 MASTER MIND Ltd.
第76回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門 正式出品
■Shall we ダンス?(1996年公開)
DVDリリース デジタル配信中
出演:役所広司、草刈民代、原日出子、竹中直人、田口浩正、徳井優、渡辺えり子、草村礼子、柄本明
監督・脚本:周防正行
音楽:周防義和
■うなぎ(1997年公開)
DVDリリース
出演:役所広司、清水美沙、柄本明、倍賞美津子、田口トモロヲ
監督:今村昌平
脚本:今村昌平、天願大介、冨川元文
原作:吉村昭
英題:The Eel
連載情報
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Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/
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