なぜ酷暑でも「避難勧告」を出さないのか 年間1000人以上が熱中症で亡くなっている「猛暑」は「豪雨災害」と同じ
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年7月27日 17時45分
原宿を歩く人々。東京都心は今年初の猛暑日となり、 熱中症警戒アラートが発表された=10日午後、東京都渋谷区
ジャーナリストの鈴木哲夫が7月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。対応が遅れている政府による「猛暑対策」について解説した。
岸田総理が秋田県知事らと意見交換 ~「大雨被害」必要な対策推進へ
岸田総理大臣は7月26日、秋田市や五城目町などに甚大な被害をもたらした記録的大雨について、秋田県の佐竹知事や穂積秋田市長らとオンラインで意見交換を行った。総理は「被災地の方々が1日も早く元の暮らしを取り戻せるよう、被災者の生活再建支援、被災地の復旧支援にしっかりと取り組む」と述べた。
飯田)ここ最近の東京は酷暑・猛暑です。本当に異常気象ですね。
鈴木)防災は私のライフワークでもあり、ずっと取材してきたのですが、もう1回総点検する必要があると思っています。先日は九州北部などでも大雨被害がありました。
水害被害に多くなってきている都市型災害の「内水氾濫」 ~対策できていない
鈴木)でも、すべて事後処理なのです。起きたあとに動いてもダメです。こういう被害は前から予測されています。雨で言うと、例えばバックウォーター現象に関しては、ある有識者の研究だと全国に4000ヵ所あると言われている。いまは内水氾濫の方が多いわけです。
飯田)今回の秋田もそうだったと言われますね。
鈴木)私たちは川の堤防が決壊して床上浸水になると考えがちだけれど、そうではなく、実は内水、下水道などの排水が追い付かずに溢れてくる都市型災害の方が多いのです。内水氾濫に対し、街のなかを掘り返して対策しているかと言うと、なかなかできていません。
自然災害は有事 ~気象庁を内閣総理直轄にして、総理が避難などの決断を早くできるようにするべき
鈴木)やらなければいけない水害対策はたくさんあるのです。気象庁の位置付けも危機管理上、国交省から早く内閣総理直轄に置いて欲しい。自然災害は戦争と同じではないですか。人の命を奪いにくる有事ですよ。
飯田)有事です。
鈴木)それに対して、予測したらすぐに総理が避難などを決断できるよう、気象庁の位置付けを変えるなどの対応をしなければいけない。でも結局、できていないし遅れています。「また被害が出た。では復旧しよう」という状況を、何回繰り返すのでしょうか。
猛暑は豪雨災害と同じ ~水害や地震並みに高齢者や一人暮らしの人などに避難勧告を出すべき
鈴木)自然災害でも豪雨や地震が起きると、皆さん避難所に行くではないですか。豪雨や地震などの場合は大々的に「避難しましょう」と発信するけれど、暑さ対策だけは、常に「個人で気を付けましょう」という状態ではありませんか? 「夜は冷房を点けましょう」「こまめに水分補給しましょう」などと発信するだけですよね。
飯田)確かにそうですね。
鈴木)猛暑が当たり前のように何日も続き、夜も熱帯夜が続いています。いまは予測技術が発達しているから、「これから3日間は必ずそうなる」ということもわかります。それなのに、なぜ水害や豪雨や地震並みに、高齢者や一人暮らしの方々などを避難所に避難させないのですか?
飯田)そういう発信はありませんね。
鈴木)先日、貧困問題に取り組むNPO団体を取材したところ、お母さんと子どもだけで暮らしている家庭で年収が300万円ぐらいしかないと、クーラーを買えないと言っていました。そういう方々に対し、なぜ地震や豪雨並みに大々的に避難所へ避難してもらわないのでしょうか? 既に猛暑はそういう段階にきていると思います。それなのに、相変わらず「個人で気を付けましょう」としか言わない。猛暑対策は遅れていると思います。
年間1000人以上が熱中症で死亡 ~避難所を含めた大々的な猛暑対策が必要
鈴木)あまり報じられていませんが、政府は2023年4月に熱中症対策に関する法改正を行っています。知らないでしょう?
飯田)知りませんでした。
鈴木)熱中症警戒アラートを警報として法律に定める。また、暑いときは図書館や公共施設に避難できるよう解放することを、地方自治体に求めています。他にもいろいろなことを行っていますが、図書館の解放は昼間だけなのですよ。
飯田)そうですよね。どんなに遅くても午後8時くらいには閉まってしまいます。
鈴木)高齢者の人も追い返されるわけです。避難所を含めた大々的な猛暑対策が必要だと思います。早く取り組まないといけません。熱中症で年間、どのくらいの方が亡くなっているかご存知ですか? 調べたら2021年を除き、2018年~2022年は年間1000人以上が亡くなっているのですよ。
飯田)そうなのですね。
鈴木)とんでもない大災害でしょう。それでも未だに「個人で気を付けましょう」と言っている。豪雨災害と同じで、早く手をつけないと、また犠牲が出ると思います。
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