「自分が世界の中心である」と考えるインドの「独特な存在理由」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年8月18日 18時30分
日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が8月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後5年での飛躍的な経済発展を宣言したモディ首相およびインドについて解説した。
インドは中国、日本を抜くのか ~モディ首相が今後5年での飛躍的な経済発展を宣言
インドのモディ首相は8月15日、独立76周年記念日の演説で「今後5年でインドの経済力は世界3位以内に入ると保証する」と述べ、目標として掲げる「2047年(独立100周年)までの先進国入り」に自信を示した。世界銀行によると、インドの国内総生産(GDP)は世界第5位。日本は3位である。
グローバルサウスの盟主は中国ではなく「我々だ」という意識を強く持つインド
飯田)インドは景気がいいのでしょうか?
秋田)7月下旬にニューデリーのある会議に参加したのですが、インドの当局者や専門家に取材する機会がありました。
飯田)ニューデリーで。
秋田)グローバルサウスという言葉がありますよね。新興国と途上国、要するに西側諸国以外のほとんどの国ですが、インドは「そのリーダーは自分だ」という意識を強く持っているのです。
飯田)グローバルサウスのリーダー。
秋田)それを束ねる盟主は中国ではなく、「自分たちだ」という自信を持っている印象でした。
G20サミットで食料やエネルギー問題の解決策を示すことで「グローバルサウスのリーダーであると同時に世界の中心である」という姿をアピールするシナリオ
秋田)町中にモディ首相とG20のロゴをあしらった看板が立っており、9月に彼らが主催するG20サミットを宣伝していました。G20サミットにはG7も来ますし、中国も参加します。さらに、プーチン大統領は来ない可能性が高いと思いますが、ロシアも来る。モディ首相はそれらの国々を集めて食料やエネルギー問題を話し合い、解決策を示すことで、「グローバルサウスのリーダーであると同時に世界の中心である」という姿をアピールする。そういうシナリオを描いているのだと思います。
すべての数字は掛ければゼロになり、数字の中心はゼロ ~「自分が世界の中心である」と思っているインド
飯田)日本から見ると、インドは世界最大の民主主義国家であり、価値観を同じくしている。クアッドというつながりもあり、西側の方に来てくれるのではないかという思いを持つのですが、インド自身はどう思っているのでしょうか?
秋田)ゼロという数字を発明したのはインドですが、ゼロの特徴は「1億だろうと1兆だろうと、すべての数字は掛けるとゼロになってしまう」ということです。ゼロというのは、ある意味で数字の中心、「センター」です。
飯田)ゼロは中心。
秋田)インドもそういう発想から、「自分が世界の中心である」と思っているのかも知れません。
日米豪印「クアッド」の他、もう1つの「クアッド」を持つインド ~イスラエル、UAE、アメリカ、インドの枠組みの「I2U2」と呼ばれるクアッド
秋田)我々から見たクアッドは、日本、アメリカ、オーストラリア、インドによる枠組みしかないのですが、インドにはもう1つのクアッドがあるのです。イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)、アメリカ、インドのそれぞれの頭文字を取って、「I2U2」と言っています。
飯田)I2U2。
秋田)誰に聞いても「インドは2個のクアッドを持っている」と言います。インドの立場から見れば、インド太平洋のクアッドと、さらには中東から大西洋を越えてアメリカまでを包含する「第2クアッド」がある。
飯田)インドを中心として見ると、東のクアッドと西のクアッドがあるわけですか。
西のクアッドである「I2U2の方が重要だ」と言うインド幹部も
秋田)「西のクアッドの方が重要だ」と言うインドの幹部もいます。地理的に広いですからね。
飯田)大西洋まで含めて射程が広い。しかも、産油国である中東も入っています。
秋田)イスラエルというハイテク国家も入っているわけです。「両方持っている」というのがインドの視点なのですね。
誰にも頼らず国を守ることができ、「あらゆるオプションを持つことが大事」だというDNAが染み付いている国家
飯田)バランスを取るようなことを重視するのですか?
秋田)インドは過去、ムガル帝国が崩壊してイギリスの植民地になりました。ですので、大国と組むことはリスクが高いと、身に染みてわかっているのです。
飯田)大国と組むことはリスクが高い。
秋田)あくまでも自分が強くなり、誰にも頼らず国を守ることができる。さらには、「ありとあらゆるオプションを持つことが大事だ」というのがDNAに染み付いている国家だと強く感じます。
飯田)どちらか一方にベットするようなことはあり得ないわけですね。
秋田)あり得ないと思います。だから、いまでもロシアと友好関係を保ちながら、日本やアメリカ、オーストラリアとも仲よくする。さらには中東を包含した第2クアッドも持っているのです。
中国と国境紛争する一方でBRICsと上海協力機構(SCO)に参加し、中国と連携する枠組みも持つインドの複雑さ
飯田)G7にアウトリーチとして来てくれたからと言って、「こちら側だ」と考えない方がいいのですか?
秋田)インドは中国と国境紛争していますが、その中国が加盟するBRICsと、上海協力機構(SCO)にもインドは正式メンバーとして入っています。中国とも連携する枠組みに入っているのです。
飯田)複雑ですね。
秋田)本当に複雑です。
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