ヨーロッパ企画、結成25周年でミステリーに挑戦! 上田誠、諏訪雅、永野宗典が「ワクワクし続けた四半世紀」を振り返る
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年8月22日 12時10分
2023年に結成25周年を迎えた劇団・ヨーロッパ企画。
2023年9月9日(土)より第42回公演『切り裂かないけど攫いはするジャック』が、栗東芸術文化会館さきら 中ホールにて幕を開ける。
ヨーロッパ企画は、京都を拠点に活動している劇団。1998年に同志社大学の演劇サークル内で結成され、SFやファンタジー、非日常的な設定における群像コメディを得意とし、珍しい構造や仕掛けに富んだ「企画性コメディ」を標榜している。
近年は劇団として1万人以上を動員するだけではなく、活動も非常に多彩。映画やラジオ、スマホゲームの制作にも積極的にチャレンジし、個々の俳優業・作家業にも取り組むいわば“クリエイター集団”だ。
彼らはどのように25年を過ごしてきたのか――。
そんな疑問を、ヨーロッパ企画の創設メンバーである上田誠、諏訪雅、永野宗典にぶつけてみた。25年間の思い出や今後の展望、そして『切り裂かないけど攫いはするジャック』の構想などについて語ってもらった。
「続けよう」と意気込んで続けてきたわけではなかった
―まず、結成25周年おめでとうございます。旗揚げから今までをお話を教えてください。
上田:諏訪さんに誘われて学園祭で二人芝居をすることになったのがきっかけです。
本当、当時のことが昨日のことのように鮮明に思い出せますね(笑)。25年前の出来事とは思えません。
諏訪:上田くんに「劇を作ってほしい」と電話したんだよね。当時は携帯電話がないから、上田くんの実家に電話してお母さんが出たから「上田くんと代わってください」って(笑)。
上田:昨日起こった出来事のようですが、思い返してみるとちゃんと25年前なんですよね(笑)。子機でしゃべっていたし。
諏訪:「続けよう」と意気込んで続けてきたわけではないんです。なんとな~く、形を変えて、また戻ったりして、ゆっくりマイペースに歩いていたら25年経っていた感じです。
上田:そうですね。ずっと一緒に活動を続けてきて、当時の純度を保ったままやれているのは喜ばしいことだと思います。「やっとここまでたどり着いた」みたいな感じは全くありません。
諏訪:最近はコロナ禍で劇団の体制が変わったこともあり、またこれから新しい25年が始まっていく予感がしています。
永野:そういえば、学園祭で旗揚げした時から上田くんの台本(を書き上げる速度)は遅かった(笑)。「台本を待ち続けた25年」と言って良いかもしれません。ですが、「どんな作品を作るんだろう」という楽しみも同時にくれるので、「ワクワクし続けた25年間」でもありました。
チームで作ったら、誰かに届くようになった
―25年続けられた一番の要因、原動力は何だと思いますか?
永野:やはり、上田くんの脚本の面白さだと思います。25年間、変わらず面白い作品を作り続けてくれました。彼のアイデアに惹かれて、ここまでやってこられたと思います。
諏訪:僕もそう思います。上田さんが台本を書くまでは、大学で演劇をやってもあまりウケなかったんですよ。手ごたえがないから辞めようと思っていたところ「最後に上田さんに書いてもらえたら……」とお願いしてみました。
すると、めちゃめちゃウケたんですよね。そこから辞められなくなりました。「上田さんの書いたセリフが読みたい」「コメディがやりたい」という気持ちだけで25年間続けてきました。
上田:それを言うと、僕もヨーロッパ企画で台本を書くまではパッとしなくて。中学、高校とゲームを作っていたのですが、まったく評価されませんでした。
しかし、まさにお2人と出会ってポップなもの、面白いものを作れている気分になったんです。今のベースとなるメンバーが集まって、ヨーロッパ企画ができ上がりました。
それまでは自分ひとりで作っていましたが、「チームみんなで一緒に作ったものは誰かに届くんだ」と感じたことを覚えています。
―25年間で特に印象に残っている作品は?
永野:2004年に上演した「ムーミン」ですね。就職でメンバーが減って、残った7人でやった公演だったので。森の中で遊んで暮らす物語なのですが、「今日何して遊ぶ?」というセリフが、あの時の僕らを表現するそのもののセリフだったように思います。
諏訪:僕は「ロベルトの操縦」(2011年)ですね。
SFシチュエーションコメディをずっとやり続ける中で、上田さんが「次に何を書けば良いかわからない」とすり減っていく時期がありました。苦しんで執筆しているのはわかるけれど、待っている僕らも苦しい……という時に出来上がったのが「ロベルトの操縦」です。
そこで“企画的コメディ”というのを思いつき、「これだったらいくらでも公演できる!」と上田さんが急に生まれ変わったのが印象的でした。そこから何作でもへこたれずに作っているので、あの公演が僕らにとっての転機だったと思います。
上田:20代の時、まさに「ムーミン」が代表的なのですが、自分たちを写し取ったような作品を作ることが多かったです。
その頃、自分たちと作品の距離の取り方を悩んでいたのですが「切り離して作ればいいんだ」と悩みが晴れ、企画性を重視しようと思ったのが「ロベルトの操縦」でしたね。
そんな僕の印象に残っているのは、最近やった「九十九龍城」(2022年)。魔窟を覗き見ているという構図を持ちながら、香港世界をお芝居で再現することで、世界観と企画性の共存を目指しました。
なぜヨーロッパ企画がミステリーを?
―では、今回の『切り裂かないけど攫いはするジャック』についても教えてください。
上田:『切り裂かないけど攫いはするジャック』もミステリーとして斬新な作りを目指しています。
まず第一に、「メンバーがワクワクするような台本を作らなければならない」という使命感。これまでミステリーは書いたことがなかったので、みんなを驚かせるために隠し玉として持っておこうと温めていました。
ミステリーは作家ひとりで構想を練るイメージがありますが、僕らは演劇なので。「団員みんなで作るミステリーにしよう」と考えたときに思いついたのが、『切り裂かないけど攫いはするジャック』です。集団で作るミステリーでありながら、ミステリーの王道に踏み込み、なおかつ演劇でも成り立つものにしたいと思っています。
―たくさんのミステリータイトルがある中で、なぜ題材を「切り裂きジャック」に?
上田:最初は密室などストイックなミステリーを題材にしようとしたのですが、舞台上で演出する上で、密室での謎解きやダイイングメッセージだとスケールが小さいんですよ。
それよりは、人が攫われたとなるとアクションが大きくなりますよね。推理を披露するときも、言葉で説明するよりは「この人はこう消えた」とビジュアルで訴求できるので、舞台映えすると思って選びました。
―諏訪さんや永野さんに相談は?
諏訪:相談はありませんでした。ミステリーをやることすら聞いていなかったので、最初は驚きましたね。
永野:上田くんは「SFの人」だと思っていたので、まさかミステリーの引き出しも持っていたとは……! 学生時代からよく家にに遊びに行っていましたが、本棚には星新一(SF作家)とかしかなかったけどなぁ(笑)。ミステリーもいける人だったとは。
上田:たくさん読んでいるわけではないですが、好きでしたよ(笑)。
諏訪:演劇において、ミステリーは手を出しづらいジャンルでもあるんですよね。だからこそ、「今になってミステリーをやるんだ!?」という驚きの方が大きかったです。ミステリーは、お客さんも一緒になって(トリックや犯人を)考えちゃうんですよ。一発でわかるようにしておかないと、劇として見てもらえないので……。
ヨーロッパ企画の「企画性コメディ」が海を越える日
―永野さん、諏訪さんは演じる上で、ミステリーならではの難しさを感じることはありますか?
永野:僕は警部役なのですが、刑事の知識がなさ過ぎて、エチュードで証言者の言葉にとっさに反応できないことに苦しんでいます。ちゃんと刑事の言葉でツッコみたいのに、自分の体に落とし込めていないので、今必死で調べているところです。
諏訪:セリフに関しては、僕ら(証言者)も悩んでますよ。僕は証言者のひとり(オルガン弾き)なのですが、設定がガチガチに決まっているわけではないので。「こんなことがあったよ」と言っても、自分自身もそれがウソか本当かわからないんですよね。それこそ、警部から「空論ですよね?」と言われたら黙るしかないし……。
上田:『切り裂かないけど攫いはするジャック』はそれが良い感じに作用していて、「本当に事件ってあったのかな?」とフワフワしている部分も見ている人に楽しんでもらえるのではないでしょうか。
―なぜ警部役に永野さん、オルガン弾き役に諏訪さんをキャスティングしたのですか?
上田:オルガン弾きに関しては、路上で大きいオルガンを持って弾かなきゃいけないので、体が大きい人に。「そんな理由?」と思われるかもしれないですが、すごく大切なことなんですよ。
自分から役に近づけていくことも大事ですが、視覚的や聴覚的に「っぽい」というイメージで配役をした方が、観客がわかりやすい。ですから、僕は、基本的にその人にあったものを見つけて当てはめています。
諏訪:わかるかもしれない。永野さんは警部っぽい。
上田:永野さんは滔々(とうとう)と語るのが上手なので警部役。諏訪さんは群像の塩梅が良い。
諏訪:あ、やっぱわかってた? 僕は群像役が好き。群像じゃない役は苦手なんです(笑)。
上田:やっぱりそうなんですか(笑)?
永野:集団の中では好き勝手言ってるのに、前に出てしゃべってくださいよって言うと「やめてくれ~」って言うんですよ(笑)。
諏訪:(笑)ずっと群像劇をやってきたからね。急に「ひとりで話せ」と言われると緊張しちゃうんです。
上田:ミステリーを書く作家の中には、犯人を途中で決める人もいるそうです。「そんなことできるのか?」と思っていたのですが、確かにその方が作りやすかったですね。
2018年に上演した「サマータイムマシン・ワンスモア」では伏線をたくさん入れたのですが、最初に伏線を決めてからストーリーを考えても先が思いつかないんですよ。出だしだけ考えて色々やっているうちにお尻が決まるという作り方をしたので、今回もそれっぽい状況と配役だけ決めて、「さあ、誰が犯人っぽいかな?」と作っていきました。
―すごく楽しみです。最後に、ヨーロッパ企画としての今後の目標と、それぞれ個人が思うこれから先の展望を聞かせてください。
上田:大学生から活動を始めて、この3人は40代半ばになりました。ずっとこの世代だけでやっていくと思っていたのですが、2021年に17年ぶりの新劇団員として藤谷理子さんが入ってくれて。
同時にスタッフでも若い人が手伝ってくれるようになったので、これからは下の子たちが中心に引っ張って行ってもらう方が面白そうだなと思い始めています。下の世代が輝くことによって、僕らも寿命も長くなりますしね。
諏訪:別の観点からのお話をすると、僕たちは映画も作っていて1作目の『ドロステのはてで僕ら』は、海外の映画祭でたくさんの賞をいただけました。そこで「僕らって海外で評価されるんだ!」と自信がついて、海外での演劇公演を考え始めています。
永野:僕も「海外はある」と思っていました。世界中がステイホームだったときに、公演の配信に字幕を付けたいと思っていて。宝塚が字幕を付けていて、世界中からアクセスされているんですって。僕らも『ドロステのはてで僕ら』で海外の評価を受けたことですし、世界進出も視野に入れてみたいです。
―近いうちに、ヨーロッパ企画の「企画性コメディ」が本格的に海外へ進出していくかもしれないわけですね。とてもワクワクするお話、ありがとうございました! 『切り裂かないけど攫いはするジャック』も楽しみにしています。
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