次は大一番、W杯イングランド戦 ラグビー日本代表はいかに戦うべきか
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年9月15日 17時20分
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、ラグビーW杯フランス大会に挑む日本代表の注目点について、代表戦を実況するアナウンサーの目線から、期待したいプレーや注目選手にまつわるエピソードを紹介する。
W杯初戦のチリ戦に快勝し、好スタートを切ったラグビー日本代表。次は決勝トーナメント進出を目指す上で重要な試合となるイングランド戦だ。前回大会準優勝の世界的強豪相手に、日本の勝機はどこにあるのか? この試合を実況中継するニッポン放送の洗川雄司アナ、同じく勝負の第4戦アルゼンチン戦を実況する山内宏明アナウンサーに、今大会の日本代表の注目点とともに話を聞いた。
―― 改めて今大会の日本代表の強み、コンセプトはどんな点でしょうか?
【洗川】まずは、1対1でのタックルの強化。従来はとにかく低く、相手の足を刈るようなタックルが日本の特徴でした。そこからいまは、相手の胴体に直接行く、本当にボールを奪いに行くタックル。これはフィジカルを強化しないとなかなかできない部分でもあります。
前回のW杯、大会前の世界ランクが1位だった強豪アイルランドを撃破した試合での日本のタックル成功率は90%を超えていました。だから、前回大会でも十分、日本のタックルは証明できていたわけです。そこから「さらに強化したタックル」を見せることができれば、イングランド相手でも勝機はあるのではないかと思っています。
―― 大会前のテストマッチではタックル時のレッドカードが相次いだことが不安視されていましたが、チリ戦で一安心したファンも多そうです。
【洗川】そしてもうひとつ。これは前回大会も同様ですが「速いパス回し」。メンバー発表会見でジェイミー・ジョセフHCも「素早いラグビーでボールを動かしていくんだ」と語っていました。この点は大会を重ねても変わらない、日本ラグビーのひとつの特徴なのだと思います。
今回、キックの名手・山中亮平選手が選ばれませんでした。ということは、蹴ってどうにかエリアを獲得するのではなく、自陣からでも継続してボールを動かし、ギャップをつくってそこを抜いていく。そんなラグビーを目指していくという狙いが透けて見えるメンバー選考です。
また、今大会で選ばれたメンバー33人は、W杯初出場が20人、経験者が13人。前回、前々回と結果を残した2大会を経験した選手が数多くいます。リビングレジェンドの堀江翔太選手、リーチ マイケル選手に至っては今回で4大会目。勢いのある新しい若手もいて、経験豊富な頼りになるベテランもいる。層の厚い、バランスの取れたメンバー構成なのではないかなと思います。
【山内】ラグビー日本代表と言うと前回大会の「ワンチーム」がお馴染みですが、今大会に向けては、去年(2022年)までキャプテンを務めていた坂手淳史選手が「絆」という言葉を挙げていました。
坂手選手が言うには、今回の日本代表は日本を含め計9ヵ国にルーツを持つ選手で構成されていると。当然、言葉も違うし文化も違う。そのなかでコミュニケーションを取っていくためにも、このチームは「絆」がないとゲームに勝てない。これまで以上に選手個々を結びつける「絆」が強敵と立ち向かう上では重要になってくる、という決意を感じました。
―― その強敵と立ち向かう戦いこそ、9月18日(月・祝)早朝4時(※日本時間)キックオフのイングランド戦。過去、10戦全敗と一度も勝てたことがない相手です。
【洗川】ひとつ大きな要素は、イングランドのキャプテンで世界的スタンドオフのオーウェン・ファレル選手が出場停止処分中で、日本戦には出られません。それでも、イングランドの場合はおそらくキックを使って日本の裏に蹴り出し、ゴリゴリのパワープレーでエリアを取りに来ることが予想されます。
となるとポイントのひとつは、まずキックされたときの処理をどうするか。初戦でも日本のバックスリー(11、14番のウィング。15番のフルバック)を務めたジョネ・ナイカブラ、セミシ・マシレワ、松島幸太朗……彼らがキックをどう処理して、自分たちでキープしながら進めていくかがポイントになるのではないかと思います。
とくに松島は、今回のW杯開催地であるフランスで2シーズン戦った経験があり、ホームのような環境です。最後に決め切る力を持っていますので注目しています。
―― FW陣で注目している選手はいますか?
【洗川】途中出場かも知れませんが、フランカーの福井翔大。先ほど、タックルを強化してきた、という話をしましたが、この夏のテストマッチ、とくに7月のオールブラックスXV戦で果敢に何度もタックルに挑む福井の姿が目を引きました。
W杯前最後のテストマッチとなったイタリア戦でも、敗れはしたものの福井がジャッカルを見せるシーンもありましたし、ボール奪取という側面では彼がインパクトプレーヤーになる可能性も大いにあると思います。
―― 山内アナの注目は?
【山内】私は選手個人よりも、帝京大ラグビー部出身選手たちですね。とくに9連覇時代のキャプテンたち。センターの中村亮土選手(V5達成時のキャプテン)、スクラムハーフの流大(V6達成時のキャプテン)、フッカー坂手淳史(V7時のキャプテン)の時代に取材をする機会があったので、彼らが日本の中心になってきたのだと感慨深いです。
先ほども話題に出した坂手選手は、当時帝京ラグビー部を指揮していた岩出雅之監督が「彼は将来、日本代表のキャプテンになる」と言って、本当になったわけです。今大会はキャプテン経験者として、同じ帝京大の後輩・姫野和樹キャプテンを支える立場でもあります。そういう選手たちの活躍が楽しみですね。
―― 改めてイングランド戦ではどんなプレー、どんな試合展開に期待しますか?
【洗川】前回大会でアイルランドから金星を上げた試合も、日本が蹴るかと思ったら蹴らず、ボールを自陣からつないだことで、相手も混乱したところがあったのではないかなと。強い相手に挑むときの日本というのは、戦術をいくつも持っているはずです。
相手ももちろん日本を分析してくるけれど、その裏をかいてくる戦術も用意してくれそう。ですので、ひょっとしたら山中もいないのにキックを多用するかも知れないし、何をやってくれるんだろう……という楽しみがあります。
その辺りは、トニー・ブラウン アタックコーチがいろいろ考えているはず。先日のイタリア戦でも、ラインアウトからモールで押すかと思いきや、そのままサインプレーで堀江選手が密集の右サイドをついてトライにつなげたシーンがありました。ああいうサインプレーをいろいろ駆使してくるのではないか。こちらの予想を上回る戦術を用意してきたら、素直に驚きたいですね。
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