第2次岸田再改造内閣はまるで「総裁選突破内閣」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年9月15日 17時40分
戦略科学者の中川コージが9月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。第2次岸田再改造内閣について解説した。
第2次岸田再改造内閣が始動
第2次岸田再改造内閣が9月14日、本格始動した。岸田総理大臣は「経済、社会、外交・安全保障の3つの柱で政策を進めていきたい」と強調し、物価高対策や構造的な賃上げ実現、人口減少による少子化対策に向け、経済対策の策定を月内に閣僚に指示する方針。
各派閥に配慮し、「総選挙」ではなく、まるで「総裁選突破内閣」
飯田)9月15日に閣議決定する副大臣、政務官人事に向けて調整を進める方針です。14日からは各閣僚の方々が省庁に入って会見を行ったり、引き継ぎが行われていました。再改造内閣の顔ぶれはいかがですか?
中川)宏池会も清和会も茂木派もという形で相当、派閥に配慮していますよね。なおかつ総裁選でチャレンジしてきそうな方はとりあえず閣内に入れ、幹事長には茂木さんを置いており、「次の選挙に向けて大きなアピールを」というよりも、「総裁選突破内閣」という感じがありますね。
飯田)確かに。
中川)総選挙よりも総裁選に目が向いていると感じます。
飯田)広い意味で、選挙に目が向いていると言えばそうですね。
中川)「いい、悪い」を国民目線で言えば、よく「国民不在」という批判がありますが、政権維持という観点からすると「総裁選突破内閣」と言うのがわかりやすいのかなと思います。
飯田)その目的に向けては、確かに最短距離を取った。
自民党総裁選へ向けた「人事の鬼」と言われた岸田総理ならではの動き
中川)極めて合理的ですし、「人事の鬼」と言われるような岸田総理の動きだと思います。
飯田)確かにライバルたちは全部、矢面に立ちそうな場所に配置して。
中川)全部ですね。「選挙突破内閣(総裁選)」という感じで、「素晴らしいな」というところはあると思います。支持率も動いていないようですし。
飯田)読売新聞の調査によると、内閣支持率は変わらず35%です。
中川)当然、わかった上でやっているのでしょう。わからずに(支持率が)上がると考えてやってはいないと思います。そういう意味では、総理・総裁としての判断自体が「総選挙突破」ではないのでしょう。
飯田)「11月解散」というような話も出ていますが。
中川)でも、それも考えて進めているとは、さすがに思えないような布陣ですよね。あくまでも想像にすぎませんが。
外務大臣の交替は「自分が外交のイニシアチブを取るのだ」という岸田総理の気持ちの表れ
飯田)松戸市の“へら吉三平”さん(71歳)から、内閣改造についてメールをいただきました。「このたびの内閣改造において、総理は外務大臣を交代させましたよね。林前大臣はウクライナを訪問したばかりで、しかも世界情勢が日々変化するなかでの交代は解せません。過去もそうですが、他国の外務大臣は長い間職務に就くのに対し、我が国はコロコロ変わります。これで信頼関係が築けるのでしょうか」というご意見です。今回、外務・防衛という安全保障に関する2つの閣僚を両方とも代えました。
中川)外交をやっていた岸田総理からすれば、「自分が外交のイニシアチブを取るのだ」という意識の表れだと思います。嫌だという意味ではなく、林前外務大臣よりも自身がイニシアチブを取る上で今回、外務大臣を新しくしたのではないでしょうか。それは言葉の節々からも感じるので、そういうイメージはあります。
飯田)人が代わっても、世間全体の外交姿勢の変化はないだろうと。
中川)特に他国からすれば、「日本はそんなものだよね」というところはあると思うのです。
飯田)ある意味、アメリカの外交に引っ張られていきますし。
中川)そういうところもあると思います。外務大臣が代わったからといって、「なぜ突然?」というようなサプライズはないでしょうし、そこまでネガティブに取られるとは思いません。ただ、「外務大臣のイニシアチブが強く表に出るか」と言うと、そうではなさそうですね。
中国にとって台湾問題はあくまでも「ワン・オブ・ゼム」
飯田)他方で、木原稔さんが防衛大臣になりました。台湾との議員外交において日華議員懇談会の事務局長を務めるなど、台湾に近いと言われますが、この人事についても中国が強硬になることはないのですか?
中川)ないと思います。中国側にとって、日本と台湾の関係は注視していくファクターではあります。ただ、日本にいると、中国は台湾のことばかり考えていると思いがちですが、中国からすれば、あくまでも「ワン・オブ・ゼム」なのです。
飯田)台湾は。
中川)もちろん台湾は大きな課題であり、それに対する布石を着実に打っていますが、彼らからすると対露、北朝鮮、中東、中央アジアなどがあり、さらには中印紛争やアフリカ外交、南米もあるのです。あくまでも台湾問題は、そのなかのワン・オブ・ゼムです。
飯田)ワン・オブ・ゼムである。
中川)もちろん木原新防衛大臣に代わったことは注視していますが、それによって彼らが台湾に対するリソース分配を変えることはないと思います。
不調の中国経済だが、大衆の不満は国の方針を変えるほど高まってはいない
飯田)中国国内で経済が大きく下がったりすると、すぐに「台湾に攻め入る」というようなことが言われますが、そんな短絡的には動かないですか?
中川)中国経済に関する不満が政権にどれだけ向いて、それがどれだけ対外的に発信されるのか。ただ、国の方針を変えるほどに大衆の不満が高まっているかと言うと、そこまでではないと思います。失業率が上がっており、中国経済は非常に悪い状況ですが、対外政策を変えさせるだけのマグニチュードがあるかと言うと、そこまでではないと思います。
飯田)そこまでではない。
中川)日本で「給料が減った」、「いつもより毎月使えるお金が足りない」となっても、すぐ政権打倒に向かうかと言うと、距離がありますよね。
飯田)すぐに向かうかと言われれば。
中川)我々はその辺りを考えなければいけません。独裁国家だからといって、不満があるとすぐに上を突き上げ、「それを嫌がるから対外的に矛先を見つける」という理論はかなり端折った論なので、もう少し冷静に見なければいけないと思います。
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